チャットボットを導入する際には抑えるべきポイントがいくつかあり、しっかりとポイントを抑えておくことで導入後の失敗を防ぐことができます。
この記事では、チャットボットの種類の説明とそれぞれのメリット・デメリット、良くある失敗事例や導入時の注意点について解説していきます。
チャットボットとは
チャットボットとは「チャット(会話)」と「ボット(ロボット)」を掛け合わせた言葉であり、人間相手ではなくロボットと会話できるサービスや技術のことをいいます。
企業の「LINE公式アカウント」などでこちらからメッセージを送信すると、登録されている返信内容が自動で返ってくる機能であったり、Webサイトの右下に出てきます「吹き出しマーク」と「チャット画面」がありますが、これらのシステムの裏側に「チャットボット」が入っています。
チャットボットとは?AIとの違い・種類・選び方など、総まとめ
チャットボットの歴史
チャットボットの歴史は古く、前身と言われている「ELIZA」と呼ばれるパターンマッチに基づくチャットボットが1960年代には存在していました。
1990年代に登場したのがイルカの「カイル」ですが、office97のエクセルに存在しており、主にエクセルの「ヘルプ機能」の役割を果たしていました。
2011年にはiPhone4sにて文字入力・音声入力にも対応したチャットボットである「Siri」が登場しました。
そんなチャットボットが普及し始めたのは2016年以降となっており、LINEやFacebookメッセンジャーというビッグプラットフォーマーがAPIを公開したことで普及が広まっていきました。
このAPIの公開によりチャットボット開発の技術的なハードルが下がっただけでなく、「LINE」と「メッセンジャー」という利用する人が多いアプリであったために、その中で動作をするチャットボットの利用シーンが大幅に拡大していきました。
また中国の「微信(WeChat)」というメッセージアプリは単なるメッセージアプリではなく、プラットフォーム化しており、「病院の予約」「タクシーの配車」「映画のチケット購入」などのサービスを利用できるようになりました。
今現在ではLINE Payなどでアプリ内で決済ができることが当たり前になりましたが、当時は非常に限られたものでありました。
当時から決済まで行うことができた WeChatはアジアを中心とした世界でのチャットボットの普及に大きく貢献してきたといっても過言ではないといえます。
チャットボットの種類
チャットボットの種類には大きく分けて「AI型(人工知能型)チャットボット」と「シナリオ型(人工無能型)チャットボット」の2種類があります。
AI型チャットボット
AI型チャットボットとはあらかじめ学習させたデータやユーザーが利用することで蓄積されたデータを元にAIが解析を行い、統計的に適切と判断された回答を表示することのできるチャットボットのことをいいます。
シナリオ型と違い、AI型は質問者の言葉遣いの揺らぎ(表現の違い)にも対応が可能ですが、回答の精度を上げていくための期間(学習期間)が必要である点とシナリオ型よりもコストが高いというデメリットがあります。
シナリオ型チャットボット
シナリオ型チャットボットは、作成したシナリオに沿って自動で回答していき会話を進めるチャットボットになります。
シナリオ型はFAQをフローチャート式で作成したり、エクセルデータをインポートするなどのシナリオ作成を「ユーザーからの質問」を予測して作成する必要があり、シナリオ以外の回答ができないのが特徴といえます。
設定がシンプルなため始めやすいだけでなく、コストも低く抑えられますがAI型と違ってユーザーからの表現の揺らぎには対応できません。
チャットボットの設置場所
チャットボットの設置場所はWebサイトをはじめ、LINE・LINE worksやSlackなどのアプリや社内ツールにも設置が可能です。
企業のWebサイトに導入する際にはチャットボット設置のタグをサイトのコードに埋め込むことが一般的といえます。
また、日本国内で多くの人が利用している「LINE」でもチャットボットを設置することができ、多くの企業が「公式アカウント」に導入しています。
Slackはビジネス用のチャットツールで活用されていますが、slackbotという専用のチャットボットを導入することができます。
社内のコミュニケーションツールとして使用している「LINE works」にもチャットボットを設置することが可能となり、チャットボットを導入することで仕事で必要な「専門知識」や「疑問」を担当者に確認する手間が省けます。
チャットボット導入のメリット
チャットボットのメリットを「企業側のメリット」と「利用者にとってのメリット」の2つに分けて解説していきます。
企業側のメリット
企業側のメリットは「問い合わせ対応の業務効率化」「人件費の削減」「CVR改善」「ユーザーの声をマーケティングに活かせる」などが挙げられます。
問い合わせ対応の業務効率化
「問い合わせ件数」を削減するためにマニュアルやFAQを作成しても、利用してもらえずに担当者への問い合わせの件数が減らないケースがあります。
そういった場合には、チャットボットを利用者がよく使用するページに設置することで利用される機会が多くなり、「よくある質問」に対して自動回答してくれるため、担当者への直接の問い合わせ件数が削減できます。
問い合わせ件数が減ることにより他の業務を進める時間が増えるため、結果として「業務の効率化」を図ることが可能となります。
人件費の削減
365日年中無休でサポートを行っている企業の場合には、夜間は人件費が「割増」で高くなるだけでなく、夜間に勤務してくれる「人材の確保」も大変になってくるでしょう。
チャットボットでは24時間年中無休で休まずに対応が可能となるため、サポート業務の一部をチャットボットが代わりに行うことで、時間当たりの「スタッフの数」を抑えて「人件費」を削減することができます。
またチャットボットであれば同時に複数名のユーザーに対して対応を行えるため、人材の確保が難しい場合でも大きな戦力として活躍してくれます。
具体的に削減できるタスクは以下の通りになります。
- ユーザーからの問い合わせ対応
- 社内ヘルプデスクへの問い合わせ対応
- 新人営業パーソンへの商材レクチャー
- 予約受付対応
- 会社やチーム内でのナレッジの共有等
CVR改善
企業のWebサイトの訪問者が多いのに対して「離脱」するユーザーが多い場合があり、「CVRの改善」をしないといけないケースもあります。
チャットボットをサイトに設置しておくことで、自動で訪問者に話しかけを行うことができるため、顧客との接点を増やすことができます。
疑問が生じた場合は画面を遷移しなくても気軽にチャット上で質問を行うことですぐに回答してもらえるため、訪問者の離脱を防ぐことができ、「CVR改善」を行うことができます。
ユーザーの声をマーケティングに活かせる
チャットボットは問い合わせ対応に限らず、ユーザーの声を収集するツールとしても活用することができます。
予約完了の完了画面に「予約の手順はわかりやすかったでしょうか。改善点はございますか」などの質問を表示すれば、ユーザビリティを探ることができ「改善」に繋げることができます。
質問の投げかけのタイミングを工夫すれば、ユーザーから得た情報を活かして「マーケティング戦略」に活かすことも可能となります。
利用者にとってのメリット
利用者のメリットは「年中無休で問い合わせができる」「知りたい情報を即座に知れる」「慣れているチャンネルで問い合わせができる」などが挙げられます。
年中無休で問い合わせできる
サポートの受付時間外で問い合わせができないため、不便だと感じたことのあるユーザーも多いと思います。
Webサイトで商品を購入する際にも利用時間が休日や夜間が多くなりますが、チャットボットを導入しているサイトであれば24時間365日いつでも回答が得られるため、ユーザーにとっては非常に使い勝手が良くなります。
知りたい情報を即座に知れる
「マニュアル」や「FAQ」のページを見ていても知りたい情報がすぐに見つからず、最終的に電話やメールで問い合わせを行ってしまうケースが多いです。
チャットボットであれば、ユーザーからオペレーターに問い合わせする感覚で質問できますし、目的の情報までナビゲーションしてもらえるので利用者はストレスを感じることなく利用していけます。
またFAQページなどに遷移する必要性もなく、情報への「到達スピード」が早くなります。
慣れているチャネルで問い合わせできる
近年ではLINEなどのメッセンジャー形式のコミュニケーションが普及しているため、電話やメールよりもLINEなどのチャネルの方が気軽に問い合わせがしやすいと考えているユーザーが多いです。
チャットボットを利用すれば、ユーザーが慣れ親しんだ「LINE」などのチャネルから「個人情報」を提示しなくても気軽に質問ができるため、ユーザーにとっては非常に使い勝手が良くなります。
チャットボットの良くある失敗
「業務の効率化」を図るために導入したチャットボットですが、運用方法が悪い場合や導入目的が明確でない場合には、上手く結果を出せないケースもあります。
導入したまま放置してしまった
チャットボットを導入した際に「設定」をきちんとやり遂げたものの、その後の運用はせずに放置してしまうケースがあります。
設定されている「よくある質問」に対してはきちんと回答できる状態であるとは思いますが、「想定外」の質問が来ることも考えられます。
通常であれば、レポート機能を使用して利用データを分析していくことでチャットボットの設定を変更していき、利用者にとって「有益」なものにしていく必要がありますが、調整を怠ってしまうと利用者が望む回答が貰えなくなるため、「チャットボットは今後利用しない」という人が多くなってしまいます。
一度利用してもらえなくなったチャットボットを再び利用してもらえる可能性は低くなるため、導入段階の初期は頻繁に細かく調整していくことが重要となります。
基本的にチューニング必須なため、専任担当を置く
先程も説明したようにチャットボットの回答精度を高く保つためには「チューニング」や「メンテナンス」が必要不可欠となるため、チューニングを行うための「専任担当者」を置く必要があります。
正答率や回答精度が低いチャットボットは利用率がドンドン下がってしまいますので、導入当初に想定外の質問が来た際には回答用のコンテンツを追加したり、回答の情報が古くないか・回答に不足がないかを確認していくようにしましょう。
とりあえず導入してみた
チャットボットの利用で一番ダメな失敗例が「とりあえず導入してみた」です。
「流行っているから」という曖昧な目的で導入したために、最終的に利用を止めてしまうケースも少なくありません。
チャットボットには多くのメリットがありますが、ユーザーの属性や設置場所を考慮しなかったり、目的もなく導入してしまうと効果が出ずに必要がなかったという結論に至ってしまうこともあります。
チャットボット導入の目的と、それに合わせた種類を検討する
チャットボットを導入する際には必ず導入目的を「明確」にしましょう。
導入目的には以下の理由が考えられます。
- コールセンターの業務効率化・人件費の削減
- バックオフィスの業務効率化
- 公式サイトのCVR向上
- 顧客満足度の向上
多くの場合は上記の内容に該当すると思われますが、チャットボットの導入を検討されている場合には「何を」改善したいのかを必ず明確にしてください。
導入目的が明確になりましたらそれぞれの目的に合ったチャットボットの「種類」を選ぶ必要があります。
チャットボットの種類によって「得意分野」や「できること」が違ってきますので、それぞれのチャットボットの比較が必要となります。
☆シナリオ型
【向いている形式】
FAQ回答など一問一答形式
【利用シーン:社内・顧客からの問い合わせ】
人事・総務・情シスなどの「問い合わせ対応工数の削減」、顧客からの製品・サービスに関する問い合わせ対応に向いています。
「公式サイトのCVRの向上」が目的の場合、自社のWebサイトにチャットボットを設置しておくと、顧客からの質問にすぐに回答できるようになるのでCVRをアップさせることに繋がります。
☆辞書型
【向いている形式】
フリーワード入力の質問形式で問い合わせ内容の想定しづらいカスタマーサポート部門などに向いています。
【利用シーン】
フリーワードで入力できるので問い合わせ内容が「多岐に渡る」FAQの自動回答には最適ですので、カスタマーサポート・社内の問い合わせ内容が想定しづらい企業に向いているといえます。
☆AI型
【向いている形式】
パターンが限定されない雑談のような会話形式
【利用シーン】
顧客との会話を続けるようなケースの場合に利用でき、「ロイヤリティ」や「ブランディング」の向上が目的の場合に活用しやすいです。
チャットボット自体利用してもらえない
チャットボット自体を利用してもらえない理由は、社内利用の場合にはチャットボットの周知徹底ができていなかったり、社外の顧客に向けたチャットボットの場合には導線設備や設置場所の選択が間違っているなどの原因が考えられます。
活用シーンに合わせた設置場所選び
チャットボットは活用のシーンに合わせた設置場所の選択が重要となってきます。
例えば、社内ヘルプデスクで活用する場合には社内の従業員のみが利用できる「社内ポータルサイト」の中に設置したり、顧客からの問い合わせ対応を目的とする場合には「LINEの公式アカウント」の中にチャットボットを設置すると効果的です。
チャットボット導入時に注意するポイント
チャットボットを導入する目的と種類を照らし合わせて検討を行いましたら、今度はチャットボットのサービスについて比較検討していきましょう。
導入時の注意点・比較のポイントは「導入時の手間」「コスト」「操作性」「サポート体制」の4つがありますので、以下で詳しく解説していきます。
導入時の手間
チャットボットサービスの種類によって導入の手間が変わってきますので注意が必要です。
すぐに導入して手軽に運用を行いながら改善していくという考えの場合では、「シナリオ型」が向いているといえます。
シナリオ型は「シナリオ」や「ルール」を設定するだけで手軽に運用できますが、「AI型」の場合には質の良いデータを収集するための「学習期間」や地道な「メンテナンス」が必要となるため、すぐに結果を出したい場合には不向きです。
導入の「目的」を明確にしつつ、チャットボットの導入の手間についても検討していく必要があります。
コスト
チャットボットは無料のサービスではないため、「導入費用」「運用費用」「カスタマイズ費用」などの費用が掛かってきますので、運用後のコストが膨大になってしまうと導入した意味がなくなってしまいます。
チャットボットの価格の幅は以下の通りです。
導入コスト |
無料~100万円 |
運用コスト |
月数万円~30万円程度 |
上記が大体の相場となっており、カスタマイズコストはカスタマイズの内容で費用が変わりますし、「AI型」や「シナリオ」型のどちらを選択するかによっても費用が大きく異なってきます。
操作性
折角チャットボットを導入したとしても使いにくければ意味がありません。
運用管理者にとっては登録する質問と回答の管理や精度改善がしやすいことが重要となり、ユーザーにとっては入力のしやすさや表記のゆれに対応できることなどが操作性が良いといえるでしょう。
チャットボットが自社の状況に合わせることができる柔軟さがあるかも非常に重要となってきます。
チャットボットサービスには多くの場合、「トライアル期間」を設けていることがありますので、必ず導入前に利用してチャットボットの比較を行う必要があります。
サポート体制
チャットボットの比較を行う際、それぞれの機能面の比較も大切になりますが「サポート」の有無の確認も行う必要があります。
サポートがない場合では「トラブル」が起きた際に対処できなくなってしまう可能性がありますが、サポートがしっかりしている企業であれば、万が一のトラブルの際にも素早く対応して頂けるようになります。
様々なチャットボット導入事例
実際にチャットボットを導入している事例をいくつかご紹介します。
わかさ生活
株式会社わかさ生活は健康食品の研究開発・商品企画・販売や健康に関する書籍の販売を行っている企業です。
わかさ生活はLINE公式アカウントを利用して「お客様とコミュニケーションを取り、お悩みを解決する」ことにより「お客様との縁を深める」ことができれば、売上の増加に繋げることができるのではないかと考えました。
チャットボットベンダーの中で「hachidori」を選ばれましたが、1番の決め手となったのが「コストの低さ」でした。
その他にも、わかさ生活の意見をしっかりと聞き入れて修正対応をして頂けただけでなく、「やりたいこと」の実現に向けて相談に乗ってくれたといいます。
シナリオを用いたリッチメニューをWEBコンテンツに見せる方法とお客様のお悩みの対応のためにチャットボットを用いた「よくある質問」の対応、有人オペレータによる「LINE相談」などを行い、「リッチメニューのタップ数は約1.3倍」・「リッチメニューからの売上は約2倍」になりました。
LOHACOのマナミさん
アスクル株式会社がヤフー株式会社の協力により運用している通販サイトである「LOHACO」も2014年に「マナミさん」というチャットボットを導入しています。
問い合わせ対応の効率化を目的とした「マナミさん」は、1カ月で6.5人程度の働きを見せてくれているため、スタッフは人間にしかできない常務に集中できるようになり「業務の効率化」を図ることに成功しています。
2016年にはLINEの法人サービスである「アスクル」にも「アオイくん」というチャットボットを導入しています。
メルカリ
株式会社メルカリは「24時間回答できる体制を作りたい」「購入や出品に関する問い合わせの対応を迅速にしたい」という課題を解決するためにチャットボットを導入しました。
結果として、問い合わせの対応をチャットボットが24時間受け付けることが可能となりましたし、利用者の声に合わせて先手のサポートを提供できるようになりました。
近畿大学
近畿大学はチャットボットの「hachidori」を導入しており、hachidoriを選んだ理由ですが「コストが低い点」と「BOT内の文語変更などを大学側でリアルタイムで行える点」であるとおっしゃっています。
チャットボットを用いて受験生のエンゲージメントを高めるための「謎解きコンテンツ」や「FAQ対応」を行うだけでなく、FAQの回答で満足のいく回答が得られなかった受験生に対しては「有人チャット」にエスカレーションする対応を行っています。
新型コロナのせいでオフラインでの接点が持てなくなる中、オンライン上での対応数がどうしても少なくなっていましたが、チャットボットを導入して対応可能数を増やすことができました。
チャットボットならhachidori
hachidoriは、以下のような多岐に渡る用途で利用できるチャットボットです。
- マーケティング成果アップ
- 業務の効率向上
- LINE上でのチャットボット運用
このように、hachidoriの最大の特徴は多様なプラットフォーム(LINE、ホームページ、Facebookなど)上で、様々な活用方法での利用が可能な点になります。
導入例もソフトバンク株式会社や東京都を中心に、多くの著名な企業などで利用されています。
アンケートや予約機能、プッシュ配信など多様な機能を備えており、LINEの認定パートナーでもある非常に評価の高いチャットボットです。
チャットボットは便利なものではありますが、決して魔法の杖ではありません。チャットボットの成果をしっかり出すためにはプランニング・設計・PDCAに基づいたチューニングも非常に重要です。
hachidoriでは、経験豊富なコンサルタント・カスタマーサクセスが貴社のビジネスに伴走する形で支援します。 この記事を読んでチャットボットに興味を持たれた方は、ぜひhachidoriサービスサイトよりお問い合わせください。