カスタマーサポートとは、企業の製品やサービスを利用する顧客から問い合わせが入った場合に顧客のサポートを行う窓口のことをいいます。
この記事では、カスタマーサポートの業務内容をはじめ、カスタマーサポートの役割・成功させる方法・チャットボットを導入した際のメリットなどについて詳しく解説していきます。
カスタマーサポートとは
カスタマーサポートとは、企業の製品・サービスを利用する顧客が困った時に「問題解決」を支援する業務を行っている窓口のことをいいます。
顧客とのやり取りは電話・メール・チャットなどが主に利用されています。
カスタマーサポートの目的は、顧客の持つトラブル・不満に対応し、商品やサービスから最大限の価値を顧客が得られるようにすることであり、商品説明からクレーム対応まで幅広く行い、最終的には顧客満足度の向上を目指します。
その他にも、業務の一環として顧客情報の管理やFAQ作成なども挙げられます。
カスタマーサポートの業務内容
カスタマーサポートの主な業務内容は3つに分けることができます。
以下で詳しく解説していきます。
①電話・メール・チャットなどのツールを使った問い合わせ対応業務
企業の「顔」として、顧客の疑問や質問・クレーム対応を行い、課題を解決することが業務内容の1つです。
既存顧客との接点も多く、迅速かつ適切な対応が求められます。
顧客の求める回答を提示したり、クレーム対応の際に適切な対応を行うことで、顧客満足度を向上させることができますが、対応次第では信頼を無くしてしまう恐れもあるため、注意が必要です。
②問い合わせ対応に連動した顧客管理
顧客情報を一元的に管理を行うことで、同一顧客からの問い合わせに対して、対応の重複を防ぐことができ、担当者の変更の際にスムーズに引継ぎが行えます。
③カスタマーサポート業務ナレッジの共有や一元化
FAQを作成し、顧客の疑問を自己解決できるように促したり、社内向けのマニュアル等を作成し、業務の属人化を防ぐことも業務の一部です。
カスタマーサポートの役割
カスタマーサポートには、「課題を解決し顧客満足度・エンゲージメントを高める」「カスタマーボイスを集めサービス改善につなげる」「リピート購入を促す」などの役割があります。
以下で詳しく解説していきます。
課題を解決し顧客満足度・エンゲージメントを高める
カスタマーサポートは既存顧客との接点が多い業務になりますし、顧客から見て企業の「顔」であり、その企業のサービス・商品を表していることと同じになるため、対応次第では顧客満足度に大きく影響が出ます。
顧客満足度やエンゲージメントの向上は売上やサービスの継続利用にも繋がるため、非常に重要といえます。
既存顧客に対して、適切なサポートが行い、顧客と密接な関係を築けるように心掛けましょう。
カスタマーボイスを集めサービス改善につなげる
カスタマーサポートには顧客から様々な声が集められます。
そういった貴重な意見を製品間発やサービスの改善に反映させることができれば、品質の向上に繋がっていきます。
開発チームが顧客アンケートの結果を踏まえて機能変更またはアップデートを検討してる場合には、カスタマーサポートに寄せられるリアルな声・意見に耳を傾けることで、アンケートでは気付かない問題点・解決点が見つかる可能性があります。
リピート購入を促す
カスタマーサポートの対応により、顧客の疑問や不満等を解決できれば、顧客満足度が向上し、再度商品の購入やサービスの再利用をして頂ける可能性が高くなります。
顧客の問題・課題を解決できれば、その企業の商品・サービスの印象が良くなり、信頼度も向上するためです。
既存顧客のリピート率を上げつつ、「新規顧客」の開拓も進めていかないと、新規顧客を獲得する前に収益が減少してしまいます。
その意味でも、カスタマーサポートの対応業務がいかに重要な業務であるかが理解して頂けると思います。
カスタマーサポートと他の職種との違い
「カスタマーサクセス」「ヘルプデスク」「テクニカルサポート」などの他の職種と、カスタマーサポートの違いについて詳しく解説していきます。
カスタマーサクセスとの違い
カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いは「顧客の対応するタイミング」になります。
カスタマーサポートは基本的に顧客からのアプローチを受けてから対応する形になりますが、カスタマーサクセスは「企業側」から対策や施策を行います。
クラウドサービス・アプリなどを展開している企業ですと、ヘルプページの開かれることの多い項目をはじめ、離脱率の高いページなどについて分析や改善を行っていきます。
その積み重ねの結果、解約を防ぐことに繋がっていきます。
その他の細かい違いについて、下記の表にまとめました。
カスタマーセンター | カスタマーサクセス |
①顧客からの問い合わせを受けて問題を解決する
②問題が発生した後に対応する ③電話・メール・チャットでの対応がメインとなる ④商品やサービスに関する質問をはじめ、操作方法やクレーム対応も行う ⑤個々の問題を解決し、顧客満足度の向上に繋げることが目的である ⑥全ての業種に必要なサポート体制 |
①製品やサービスで顧客の目標の達成や成功を目的としている
②問題が発生する前に対策・施策を行う ③商品やサービスを継続して利用して頂くことで、売上向上や解約率ダウンに繋げる ④SaaSといったサブスクリプション型の企業では特に重要なサポート体制 |
ヘルプデスクやテクニカルサポートとの違い
ヘルプデスクやテクニカルサポートはIT業界に特化したサービスであるのに対して、カスタマーサポートは業種に関係なく幅広く運用されている点が異なります。
ヘルプデスクとテクニカルサポートは同じような意味で捉えられることが多いですが、ヘルプデスクは操作方法やトラブル対応、テクニカルサポートは製本の故障・サービスの不具合といった技術面でのサポートを行うといった違いがあります。
その他の細かい違いは下記の表でまとめています。
カスタマーサポート | ヘルプデスク | テクニカルサポート | |
特徴 | ①商品やサービスを提供している企業が設置しているサポート体制の一つである
②顧客からの問い合せで問題解決する ③購入前~購入後の全ての過程において問い合わせることができる |
①IT機器・製品のサポートを行う
②社外の顧客に対するコンピューター関係のサポートを行う ③社内のシステム対応がメインである ④社内でのPCなどの操作方法のサポートを行う |
①IT機器・製品の提供を行っている企業が行う顧客サポート
②顧客に対する商品操作・トラブル等のサポートを行う ③電話・メール・チャットで問い合せができる |
規模等 | 中小企業:2名ほど
大手企業:100名ほど |
中小企業:2~3名ほど
大手企業:20名ほど |
中小企業:3名ほど
大手企業:7名ほど |
費用等 | 初期費用:20~300万円程度
ランニングコスト:月額1~70万程度 |
初期費用:インフラの状態等で異なる
ランニングコスト:月額10万円~ |
初期費用:500万円程度
ランニングコスト:(年額75万円)システム構築に掛かった費用の15%程度 |
カスタマーサポートを成功させるには
カスタマーサポートを成功させるためのポイントをいくつかご紹介します。
KPIを明確化させる
カスタマーサポートでKPIを設定することで、顧客にも社員にもメリットがあります。
カスタマーサポートは顧客をサポートするための重要な業務ですので、KPIを設定して明確化することで、自然とサービスと品質が向上していきます。
KPIを設定・明確化していないカスタマーサポートでは、「解決率を把握できていない」「長時間待たせてしまいクレームに繋がった」という事態に陥り、顧客満足度を下げてしまいます。
また、カスタマーサポートの業務では「成約数」「売上」のような結果の数字を表すことが難しいです。
それだけでなく、クレーム対応しないといけない場合もありますので、従業員のモチベーションが下がりやすい業務といえます。
KPIを設定すればカスタマーサポートの業務の達成度を可視化することができます。
可視化できる=仕事の評価が分かりやすくなるため、モチベーション向上に繋げることも可能です。
継続率、応答率、課題解決率が特に重要
カスタマーサポートの質の向上のために追うべき重要な3つのKPIを紹介します。
①継続率
継続率はECや通販事業では30~40%を目指すことが望まれます。
継続率は「顧客満足度」「売上」の2つに直結するKPIのため、この数字の改善が非常に重要となります。
カスタマーサポートで得た顧客からの不満・要望を開発部や営業部に落とし込むことで、製品の改善を行うことができ、結果として継続率が向上していきます。
カスタマーサポートは継続率を向上させるために、重要な役割を担っているといえるでしょう。
②応答率
入電に対する応答率も顧客満足度を向上させるための重要な指標となっています。
応答率90%以上が理想の数字であるといえるでしょう。
サービス開始時には応答率が90~100%だったのに対して、サービス利用者が増えたことで徐々に下がってきてしまうことがあります。
「電話がつながらない」=企業や製品に対する不信感に繋がるという可能性がありますので、応答率を下げないようにする工夫が必要になります。
また、電話が多いということは「製品」や「サービス」に問題を抱える顧客が多いということになりますので、問い合せの内容を分析して、製品の品質向上やサービスの改善などを行い、入電を減らす努力が必要になります。
③課題解決率
数値としては図りずらいですが「課題解決率」も重要なKPIであり、80%以上を目指すように心掛けましょう。
つまり、10回の問い合わせに対して8回はしっかりと解決できているという状態にすることが理想です。
対応した担当者の感覚で「解決できた」と思っていても、顧客は満足できていない場合が考えられますので、「5段階評価アンケート」などを導入し、顧客満足度の指標を作成するようにしてください。
また、担当者の知識量により、課題解決率は大きく差が出てしまいます。
そのため、勉強会などを定期的に行い、担当者によって知識量にバラつきが出ないように対策することも重要となります。
顧客対応の属人化を防ぐ
カスタマーサポート業務の質を上げるためには、担当者によってサービスレベルに差が出ないようにすることが大切です。
サービスレベルを一定にしておかないと、問い合せ時に担当者によってムラができるだけでなく、解決までに時間が掛かってしまうという事態に陥ってしまいます。
サービスレベルを一定化するためには、Web上のQ&Aに「よくある問い合せ」を設置したり、問い合わせ内容や解決方法をマニュアル化しておくなどの対策が有効的です。
商品知識などの必要な情報を学べる「勉強会の開催」も非常に効果的といえるでしょう。
他部署との連携を強化する
カスタマーサポートを充実させる上では他部署との連携が重要になります。
問い合せを受けた際の顧客対応だけでなく、その後の成果も意識する必要があります。
顧客から商品に対する意見・要望が寄せられますので、企画担当者・開発担当者に内容を共有するなど、各関連部署との連携を積極的に行っていきましょう。
顧客の課題に先回りする
顧客の課題に対して先回りした対応を意識することも大切です。
顧客から頻繁に寄せられる質問などを自社サイトの「FAQページ」にまとめて掲載するなど、カスタマーサポートに問い合せをしなくても自身で解決できる方法を用意しておくことも重要です。
先回り対応により、個別対応の数を減らすことができれば、一人一人に対してきめ細かな対応ができるようになります。
その結果、顧客満足度の向上に繋がります。
リソースに合わせてアウトソーシングも検討する
いつまでもサポートの質が向上しない場合には、社内の「ナレッジ」が溜まっていないため「サポートの改善点」を見つけることができていない場合があり、そのことが原因になっている可能性が高いといえます。
社内ナレッジの蓄積方法としては、「他社のカスタマーサポートのワークショップを開催する」「行動規範の見直しのためのディスカッションを行う」などの方法が効果的といえるでしょう。
日々の業務に圧迫されて時間が作れないような企業では、「アウトソーシング」を利用して時間を作るようにしていきましょう。
カスタマーサポートにチャットボットを
カスタマーサポートにチャットボットを導入することで、「問い合わせ件数の削減」を行うことができ、今まで多く掛かっていた人件費などのコストを削減することができます。
また、問い合せに対応していた社員の業務負担が軽減されるため、本来取り組むべきコア業務に時間を使えるようになります。
また、チャットボットを導入することで24時間365日対応することができるようになりますし、リアルタイムで回答を得られるようになりますので、結果として顧客満足度の向上に繋がっていきます。
チャットボットとは
チャットボットとは、会話(チャット)とロボット(ボット)を組み合わせた言葉であり、人間相手ではなく、ロボットが会話を行うサービスのことを意味しています。
つまり、LINEなどのチャット上で話しかけた質問に対して、自動で回答を提示してくれるシステムのことをいいます。
LINE公式アカウントに喋りかけると自動で返信が返ってきたり、Webサイトのページの右下に出てくる「いつでも問い合せください」というフォームがありますが、これらの裏側にはチャットボットのシステムが導入されています。
チャットボットは大きく分けて以下の2種類のチャットボットがあります。
①シナリオ(ルールベース)型チャットボット
人間があらかじめ設定したルールに沿って回答を提示するチャットボットです。
あらかじめ登録したシナリオに沿って、ユーザーに対していくつかの選択肢を提示する方法を繰り返していき、最終的にユーザーの質問・疑問に対する回答を提示していきます。
②AI型チャットボット
AI型チャットボットは、その名の通り「AI(人工知能)」を搭載しており、機械学習の仕組みを使うことで、チャットボットが自ら学習を行い、回答の精度を向上させることができるチャットボットです。
シナリオ型よりもより自然な会話を行うことができますし、複雑な内容や言葉の揺れに対応できますが、学習期間が必要になるといったデメリットもあります。
チャットボットとは?AIとの違い・種類・選び方など、総まとめ
チャットボットを利用したカスタマーサポートの事例
カスタマーサポートにチャットボットを導入した事例として、屋久島町の事例をご紹介します。
鹿児島県熊毛郡屋久島町では、健康長寿課の岩川様が一人でワクチン接種の管理を行っていました。
職員が少ないということで、予約を行政で受けることに抵抗があったため、ワクチン予約システムのようなものがないのかと検討したのが導入のきっかけです。
若年層はLINEで予約を行い、高齢者はコールセンターが必要になるだろうと考えたため、予約情報を基幹システムで一括管理して、コールセンターの運用とLINEからの予約を一括で行える「hachidori」を導入しました。
若年層の住民のためにOCRで接種券の読み込みも行える点もポイントが高かったです。
町内での摂取は基本的に個別接種会場であり、現在は町内10ヵ所にワクチン接種が可能な病院があり、病院側と予約枠を調整して、決定したら予約システム側に設定・反映しています。
住民からの予約を受け付けたら、システムからCSVデータで予約の一覧を抽出し、病院側に送付する形を取っていました。
導入後の効果としては、「職員の業務量を減らすことができたこと」が一番の効果だと考えています。
ワクチンの接種スケジュールの管理・キャンセルの受付などの多岐の業務を並行して行う中で、ワクチン予約をシステム化したおかげで他の業務に取り組む時間を増やすことができました。
屋久島町様 | hachidoriの導入事例 | hachidori(ハチドリ)| プログラミング不要のチャットボット開発ツール
カスタマーサポートにチャットボットを導入するメリット
カスタマーサポートにチャットボットを導入することで、「属人化を防ぐことができる」「24時間年中無休で対応出来る」「人的リソースの削減」などのメリットを得ることができます。
以下で詳しく解説していきます。
属人化を防ぐことができる
カスタマーサポートの業務が滞ってしまう理由には、「業務の属人化」が大きな要因となっているケースがあります。
カスタマーサポートは単なる問い合わせ対応ではなく、通り一辺倒の回答のみを求められるわけではありません。
情報共有されていないと、担当者ごとに対応に「ムラ」が発生してしまいます。
チャットボットを導入することで、担当者ごとの対応のムラが発生する心配が少なく、一定のクオリティの問い合わせ対応を維持することができます。
また、スタッフごとの知識量の違いによる対応の差が発生しにくく、業務の属人化を防ぐことに繋がります。
24時間年中無休で対応出来る
チャットボットは基本的に24時間365日、いつでも顧客のタイミングで問い合わせることが可能です。
カスタマーサポートは営業時間が決まっているため、顧客のタイミングで問い合わせたいと考えても、営業時間外である場合には顧客が待たされることになります。
待たされている間に購入の意思が変わってしまい、機会損失に繋がるケースも少なくありません。
チャットボットでいつでも問い合わせが可能な状態にしておくことで、そういった機会損失を極力防ぐことができます。
人的リソースの削減
チャットボットはあらかじめFAQを設定しておくことで、応対の自動化が可能になります。
全ての質問に対応できるというわけではありませんが、カスタマーサポートのサポート業務の一部をチャットボットに任せることで、担当者の業務量を軽減することができ、人材不足の補完やカスタマーサポート全体の業務効率化を図ることができます。
また、チャットボットが従業員の代わりとして業務を代行してくれますので、カスタマーサポートの人材の削減や採用活動などのコスト削減にもつながります。