ゼロパーティデータとは、顧客が意図的に企業と共有する情報のことをいいます。
この記事では、ゼロパーティデータについての解説をはじめ、ゼロパーティデータを使用した事例・活用すべき理由・収集方法などについて詳しく解説していきます。
ゼロパーティデータとは
ゼロパーティデータとは、顧客が意図的にかつ積極的に企業・ブランドと共有する情報のことをいいます。
アメリカの企業であるForrester Researchが提唱し、2020年頃から注目を集めるようになってきました。
顧客の同意を得てから、ヒアリング・アンケートなどで情報取集を行います。
顧客自身が回答するデータであるため、非常に価値が高いといえるでしょう。
クッキーとは
クッキーとは、Webサイトやサーバーにアクセスした人の情報をブラウザに一時的に保存する仕組みのことをいいます。
クッキーが有効化されますと、使用中のブラウザで初めてアクセスしたWebサイトに、サイト側が指定した訪問ユーザーを認識するための情報が保存されます。
Webサイトで入力したID・閲覧情報も記録されますので、2回目以降の訪問時にこれらの情報を元にして、スムーズに情報を提供することができます。
その他のデータの種類
ゼロパーティデータを含む消費者データは4つのタイプに分類されます。
以下で詳しく解説していきます。
ファーストパーティデータ
自社が顧客から直接収集したデータのことをいいます。
ファーストパーティデータは、最も信頼度の高いデータといえるでしょう。
例:購入履歴、電話番号、住所、生年月日、メールアドレス、氏名、Web行動データ等
セカンドパーティデータ
セカンドパーティデータとは、パートナー企業から直接入手したデータのことをいいます。
特性自体はファーストパーティデータと似通っていますが、違いはパートナー企業から仕入れている点です。
自社で収集したデータではないため、信頼度は少し劣ります。
例:cookieの情報・金融資産や収入等、自社収集が困難な情報等
サードパーティデータ
サードパーティデータとは、第三者が収集した外部データのことをいいます。
データ販売を行う企業から購入する形になります。
利点はスケールが大きい点であり、先程紹介した2つのタイプではリーチできない顧客に対してもリーチできる可能性が高くなります。
ただし、信頼度は先程の2つのタイプよりも低くなります。
例:人口統計情報、企業情報など第三者が収集して提供している情報
ゼロパーティデータを使用した事例
ゼロパーティデータを使用した事例をいくつかご紹介していきます。
①金融機関の例
アンケートに回答されたユーザー情報をパーソナライズして、そのユーザーに対する最適な金融商品の提案が可能になります。
②美容・健康食品の販売企業の例
ユーザーの年齢・体質・健康状態などに適した商品のレコメンドを行うことができます。
ゼロパーティデータは、消費者の個人情報を守りながらも、同時に消費者に対して有益な顧客体験を提供できます。
ビジネスの持続性を高める取り組みとして、マーケティング活動に利用していきましょう。
ゼロパーティデータが注目される背景
ゼロパーティデータが注目されている理由には、「個人情報に関する規制の強化」「顧客行動の変化」「パーソナライズの重要性が高まっている」などが挙げられます。
個人情報に関する規制の強化
世界的に個人情報の強化が進み、GDPR(General Data Protection Regulation)やCCPA(California Consumer Privacy Act)等が策定されました。
そのため、サードパーティcookieを段階的に廃止しているブラウザが増えているため、ユーザーは容易にトラッキングを拒否できるようになってきました。
企業活動の中でも、GDPRを遵守しなければ多額の罰金が科せられることになります。
マーケティングにおいて、消費者が同意の上で提供してくれたデータを活用しないといけない状況下にあります。
消費者が直接提供するデータは信頼性が非常に高く、ゼロパーティデータが注目される要因に一つになっています。
顧客行動の変化
cookieの追跡による情報提供に不信感を抱いている消費者が全体の3分の2を占めるといわれています。
一方、顧客自身へのサービスが向上するのであれば個人情報を提供したいと考えている消費者は50%、商品の先行販売・割引等の特典を受けるために個人情報を提供してもいいと考えている消費者は80%だといわれています。
「顧客体験価値」が向上するのであれば、情報を提供したいと考えるようになり、消費者の考え方や行動が変化してきました。
ゼロパーティデータを活用すれば、情報の取得のハードルが下がり、企業にとって非常にメリットが大きいといえるでしょう。
パーソナライズの重要性が高まっている
パーソナライズとは、顧客に応じて提供するサービス・コンテンツを変える戦略のことです。
顧客データをもとに一人一人異なるニーズ・趣味嗜好を予測して、コンテンツ・サービスを出していきますが、その際にゼロパーティデータが重要な役割を果たします。
ファーストパーティデータ(性別・年齢・住居地)だけでは優れたパーソナライズは実現できないため、ゼロパーティデータを上手く活用する必要があります。
ゼロパーティデータを活用すべき理由
ゼロパーティデータを活用すべき理由は、主に2つ挙げられます。
以下で詳しく解説していきます。
定性的なデータも集めることが出来る
ゼロパーティデータは顧客本人しか知りえない情報を顧客自身から直接提供して頂けます。
つまり、「最も情報の質が高く、信頼度が高い」といえる情報になります。
本人の同意を得て顧客から情報を提供して頂けるため、趣味趣向・嗜好などの少し踏み込んだ情報も収集可能です。
これらの情報をもとに、さらに深いマーケティング活動を行うことができます。
ロイヤルカスタマーの獲得
ゼロパーティデータは、ロイヤルカスタマーの育成にも活用することが可能です。
従来のマーケテイングは新規顧客に重点を置き、顧客の獲得からロイヤルカスタマーに育成していく方法が主流となっていました。
しかし、ロイヤルカスタマーの獲得までには多くの時間とコストばかりが掛かってきてしまいます。
そこで、ゼロパーティデータを活用することで、多くの企業がロイヤルティの高い顧客へのアプローチを重視する流れにシフトチェンジしています。
また、ゼロパーティデータではロイヤルティの高い顧客に直接意見を聞くため、商品・サービスに反映しやすく、顧客と良好な関係を築くことができます。
ロイヤルティの高い顧客を増やすだけでなく、良好な関係を維持していくためにも、ゼロパーティデータを活用していくべきといえるでしょう。
ゼロパーティデータの収集方法
ゼロパーティデータの収集を行う方法には、以下の3つの方法があります。
顧客ヒアリング
電話・メール・SNS・チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを使用して顧客と企業を結ぶ役目を果たしている「コンタクトセンター」が、ヒヤリングを行い取得する方法があります。
顧客の趣味嗜好等の情報を顧客管理システムに取り組める設定を行い、同意を得て、オペレーターがヒヤリングを行っていきます。
ヒヤリングの結果はCDPなどのデータプラットフォームに取り込んで、分析を行う際に役立てます。
資料請求やセミナーの申込みなどのタイミング
基本的にゼロパーティデータは無償で提供して頂けるものではありません。
情報を提供してくれる顧客に対して、対価を提供することで情報を提供して頂けます。
①プレゼント・懸賞への応募
②賞品付きクイズ・アンケートへの応募
③コンテスト・イベントへの参加等
④無料セミナーの申し込み
⑤ホワイトペッパー等の有益な情報のダウンロード
上記のような顧客にメリットのある対価を提供して、顧客の同意を得て、初めて提供して頂けます。
アンケート
Webアンケートや郵送調査等、顧客に自主的にアンケートを回答してもらう方法があります。
アンケートの場合、コンタクトセンターと異なり収集できるサンプルが多いという特徴がありますが、趣旨が伝わりくいという事態が発生してしまう可能性もあるため、設計に気を付けないといけません。
ゼロパーティデータに関するポイント
ゼロパーティデータに関するポイントには、「データの使い方を事前に想定しておく」「インセンティブを用意する」「収集目的や結果を開示する」の3つが挙げられます。
データの使い方を事前に想定しておく
ゼロパーティデータを取得する際には、事前にデータの使い方を措定しておく必要があります。
取得したデータをもとにして、商品の質やサービスの内容を向上させることで、顧客満足度を向上させたいと考えた場合には、現状の製品に対してどういった部分に不満があるのかを確認すると良いでしょう。
また顧客の性別・年齢等の情報があれば、今現状として自社製品がどういった層に受け入れられているのかを確認できますし、その他の層に売り込みたい場合にはマーケテイング戦略を考える際に参考になります。
ゼロパーティデータを取得する際には、必ず使い方や目的を明確にしておきましょう。
インセンティブを用意する
約80%の消費者が商品の先行販売や割引等の特典を受けるために、情報を提供してもいいと考えていることが多い傾向にあります。
顧客は何かの「インセンティブ」がある場合には、積極的に情報提供したいと考えているケースが多いということです。
ゼロパーティデータを収集する際には、顧客にメリットのある情報をお礼として用意しておき、頂いた情報をもとに商品の品質やサービスが向上した際には、さらに顧客満足度を向上させることができます。
パーソナライズコンテンツの精度が高まったりする顧客体験もインセンティブといえるでしょう。
収集目的や結果を開示する
収集目的・結果は顧客に提示するようにしましょう。
顧客は情報提供をして頂く理由を知ることができないと、「何のためのアンケートなのか?」「どういった目的で使用されるのか?」という不安を感じてしまいます。
「サービス向上のため」「商品の開発・改良のため」「改善点・現状の把握のため」など、しっかりと目的を掲示しておきましょう。
そうしないと、正確な回答をして頂けなくなるため、情報の質も低下してしまいます。
また、自分が回答した情報をどのように使用されるかを確認できると安心して頂けます。
HPなどで収集したデータの結果を掲示すれば、顧客自身が企業・ブランドをサポートしている実感が湧くため、良好な関係を継続することができます。
チャットボットなら自然にゼロパーティデータを引き出せる
チャットボットを導入しておくと、ユーザーとの会話ログを後から確認できるため、ユーザーのゼロパーティデータを自然と引き出すことができます。
会話の中で情報が引き出せなかったとしても、最後にアンケート等を掲示する仕組みにしておくことで、さらに確実にゼロパーティデータを引き出すことが可能です。