目的は同じですが、回答の表示方法などが異なるチャットボットとFAQ。
この記事では、チャットボットとFAQのそれぞれの特徴や違いから、連携して導入した際のメリットについて詳しく解説していきます。
チャットボットとFAQ
「チャットボット」と「FAQシステム」のそれぞれの特徴について詳しく解説していきます。
チャットボットとは
チャットボットは会話(チャット)とロボット(ボット)を掛け合わせた言葉であり、人間ではなくロボットと会話ができる技術やサービスのことをいいます。
LINE公式アカウントにメッセージを送ると、自動で返信されるシステムやサイト内に出てくる「吹き出しマーク」と「チャット画面」などがこれに該当しており、システムに裏側に「チャットボット」が導入されています。
チャットボットは自動でユーザーと会話を進めてくれるため、ユーザーからの問い合せや疑問を解決してくれたり、申込手続きを進めてくれたりします。
チャットボットには「シナリオ・ルールベース型」と「AI型」の2種類があります。
チャットボットについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
チャットボットとは?AIとの違い・種類・選び方など、総まとめ
実際のチャットボット
実際のチャットボットの事例を紹介していきます。
今回ご紹介する「hachidori」は国内初のAIチャットボットツールになります。
マーケティングから業務効率化まで幅広い用途で使用できるチャットボットツールであり、各種様々なプラットフォームで使用できます。
hachidoriの特徴的な機能について説明していきます。
①GUIシナリオ
GUIシナリオは、ブラウザで動作するGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)となっていますので、シナリオ同士の接続・シナリオ全体の構造が一目でわかる仕組みになっています。
この機能を使用することで、「プログラミング」の知識が無くても全体像を考えながらシナリオの作成を行うことができます。
②クエリー機能
クエリー機能とは、トーク中に得た情報をユーザー個人情報として保管できる機能となり、BOTとの対話形式で様々な情報を得ることができます。
取得した情報を基にセグメント配信を行うことも可能です。
③Q&Aテンプレート
よくある質問と回答を用意しておくことのできる機能であり、シナリオだけでカバーできないワードが検出された際でも自動返信が可能となります。
回答ごとの表示回数も確認できるようになっているため、優先順位・回答内容を変更することで、「Q&A」の最適化を図ることができます。
④API連携
他のアプリケーションやデータベースと連携を行い、シナリオの遷移を変えたり、セグメント配信を行える機能となります。
⑤キャンペーン配信
LINEプラットフォームを使用して、友だちになっているユーザーに対してメッセージ配信を行える機能となります。
⑥ステップ配信
ユーザーごとに、それぞれのタイミングでメッセージ配信を行うことができる機能となります。
⑦ビヘイビア測定
シナリオ内に設置する事で、ユーザーが通過した際に記録してくれる機能になります。
ユーザーに多く見られている「シナリオ」や「問い合わせ」などを確認できます。
⑧LIFEリスト
トーク画面内にWebコンテンツを読み込むことができるLINE Front-end Frameworkを利用できる機能です。
チャットボットのタイプ
チャットボットには、「ルールベース型」と「AI型」の2つのタイプがあります。
・ルールベース型
あらかじめ設定したルールに合わせて回答するチャットボットになります。
「〇〇なら△△」と返答する。
「Aが含まれていたらB」と返答するといったように、決まった回答を自動で提示します。
そのため、以下のような特徴があります。
①選択肢での回答に限定されてしまう
②フリーワード、言葉の揺らぎに対応できない
③精度向上のために、手作業でチューニングが必要
・AI型
人工知能が搭載されたチャットボットです。
機械学習を行うことができるため、フリーワードでの質問や言葉の揺らぎに対応できるようになります。
AI型の特徴は以下の通りです。
①フリーワード、言葉の揺らぎに対応できる
②言葉の揺らぎを学習して、一定の精度を保持できる
③機械学習により自動で学習を行い、精度が向上していく
FAQとは
FAQとは「よくある質問」を意味するFrequently Asked Questionsの略称であり、よくある質問と回答のセットを大量に集めて整理したもののことをいいます。
ユーザーが電話やメールを使用せずに済む点、疑問や質問をサイト上で解決できる点が特徴といえます。
商品・サービスの顧客(カスタマー)や従業員向けの社内ヘルプデスク等で活用されるケースが多いです。
FAQについてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
FAQとは?FAQの活用方法や意味からQ&Aとの違いまで全て解説
目的別のFAQの3つのタイプ
FAQは目的ごとに3つのタイプがあります。
①顧客向けFAQ
顧客向けFAQとは、顧客からの質問と企業側の回答をまとめてコンテンツ化したものをいいます。
自社Webサイトに「よくある質問」として設置をするのが一般的です。
BtoBやBtoCのどちらの顧客にも有効性が高いと言われています。
一般的にFAQサイトのことを「顧客向けFAQ」といいます。
②社内向けFAQ
日常業務において発生する疑問や質問に対して、FAQを活用して自己解決を目的として作成されるのが「社内向けFAQ」になります。
基本的には「社内のみ」の使用に限定されたものを意味しています。
③コールセンター向けFAQ
顧客対応を主な業務とする部署が使用するFAQを「コールセンター向けFAQ」といいます。
顧客の質問と回答をFAQとしてコンテンツ化しておき、顧客対応の品質向上を目的に使用されます。
チャットボットとFAQの違い
比較内容 | チャットボット | FAQ |
適切なQ&Aの数 | 300件以下 | 300件以上 |
回答スピード | 早い | 遅い |
取得できるユーザー情報 | 多い | 少ない |
提示できる情報量 | 少ない | 多い |
チャットボットとFAQは「ユーザーの疑問・質問を解決する」という目的は同じですが、異なる点も多いので以下で詳しく解説していきます。
表示内容
FAQの場合、回答結果に複数の候補が表示され、ユーザーが回答を選ぶ手間が少し掛かります。
勿論、チャットボットにも選択肢を提示していくタイプがありますが、AI型の場合では過去の会話の内容から学習しているため、ピンポイントで最適な回答を行うことができます。
ユーザーの手間を最小限に抑えながら、会話をしている形式で回答を表示させるため、ユーザーの満足度が向上していきます。
操作性
FAQは基本的にユーザーが自身で検索することが前提となっており、検索にヒットした情報一覧の中から知りたい情報を選ぶという操作方法です。
チャットボットの場合では、「メッセンジャーアプリ」のようにチャット形式で気軽な会話をしながら、回答を導き出すことができます。
ユーザーにとっては、画面の向こうの担当者と喋っている感覚で答えを得ることができるため、操作性が良いと感じてもらいやすいです。
Q&A数の数
チャットボットとFAQでは、適切な「Q&A」の数が異なります。
チャットボットの目安の数としては300件以下と少ないですが、FAQは300件以上の多くの量を扱うことができます。
ユーザーから同じような内容の「よくある質問」などの問い合せが多く来る場合には、会話をしながら気軽に答えを導き出せるチャットボットの方が向いていますが、 Q&Aの数が多くなる場合ですと、目当てのQ&Aを探し出すまでに何度もチャットボットと会話する必要が出てきますので、逆に手間が増えてしまう可能性があります。
回答スピード
回答までのスピードも違ってきますが、基本的にチャットボットの方がより短時間で回答にたどり着けるケースが多いです。
チャットボットの場合ですと、ユーザーとの会話の内容から求めている回答をすぐに提示できます。
FAQの場合では、基本的に目当てのQ&Aを探し出すまでに時間が掛かるケースが多いといえるでしょう。
欲しい情報に関する「適切なキーワード」が分からないユーザーが使用した場合にはさらに時間が掛かってしまいます。
FAQシステムを採用する場合には、トラブルや質問の傾向ごとのQ&Aの「分類」や「整理」が必要になってきます。
ユーザー情報の取得量
チャットボットの方が多くのユーザー情報を集めることが可能になります。
集めることのできる理由ですが、チャットボットとユーザーが会話することで、ユーザーが「知りたい内容」や「疑問」等の情報を複数回入力するためです。
ユーザーに対して質問すれば、欲しい情報をピンポイントで知ることが可能です。
ユーザーが入力した情報を分析して、ユーザーが感じている「問題」や「要望」などを導き出すことができます。
FAQについては、検索の際に使用された「キーワード」しか取得できませんので、結果としてチャットボットほどの情報は手に入りません。
表示する情報量
FAQの場合、専用ページにQ&Aを表示するケースが多いため、画面全体を使用して回答内容を詳しく解説することが可能です。
回答の文章、図や写真、表やグラフを使用して分かりやすく解説できます。
一方でチャットボットの場合では、提示できる情報量がFAQに比べると少なくなる傾向にあります。
小さい画面でやり取りを行うことの多いチャットボットでは、多くの情報を表示することができません。
また、複雑な質問に回答できないケースもありますので、有人対応と組み合わせて対応する必要があります。
チャットボットとFAQの共通点
チャットボットとFAQシステムで共通している部分について、以下で解説していきます。
チューニングの必要性
チャットボットとFAQの共通点として挙げられるのが、継続的なチューニングが必要になる点です。
運用開始後も利用データを分析していき、改善していく必要がります。
特に、回答表示後に「疑問は解決しましたか?」といったアンケートを表示するようにしておくことで、改善が必要な項目等を見つけることに繋がっていきます。
その他にも、チャットボットでは「解決できなかった場合のやり取りの内容」であったり、FAQでは「入力されたキーワード」などを分析すれば、ユーザーの満足度を向上させるために改善していくことが可能となります。
このようなチューニングを行っていくことで、ユーザーの顧客満足度を向上させることに繋がります。
顧客満足度の向上につながる
どちらも「顧客満足度を向上させる」ことに繋がる効果を期待できます。
基本的にユーザーは電話・メールで問い合わせをした際に、「回答までの待たされる時間」がストレスになりますし、人によっては電話で話すことが苦手に感じる方もいらっしゃいます。
こういったユーザーは、疑問があったとしても電話やメールで聞く労力を選ばずに購入を断念してしまうケースも多いため、「機会損失」に繋がる可能性が高くなります。
チャットボットやFAQシステムであれば、すぐにユーザーの疑問を解決することができますし、いつでも顧客をサポートできるため、結果として顧客満足度を向上させることができます。
問い合わせ対応のコスト削減
チャットボットやFAQを導入することで、問い合わせに対応するスタッフの負担やコストを削減することができます。
「よくある質問」の中には、電話で問い合わせするほどの内容ではなく、必要な情報を見せるだけで解決できる場合も多いです。
簡単な質問やよくある質問については、チャットボットやFAQで回答するようにしておき、難しい内容の質問だけは有人の対応に切り替えるようにしておきましょう。
スタッフの負担が軽減されれば、他の業務に集中できるようになります。
Q&Aを準備する必要がある
どちらも導入の際にはQ&Aを事前に用意する必要があります。
表示の方法や仕方が変わるだけで、基本的にはどちらもQ&Aを利用して顧客に対して回答を提示する仕組みになっています。
問い合せを担当していたスタッフの知見や過去の問い合わせの履歴などを利用して、質の高いQ&Aを作成していきましょう。
チャットボットとFAQのどちらを導入すべきか
チャットボットとFAQのどちらを導入するべきかをそれぞれの向いているケースで解説していきます。
チャットボットが向いている場合
まずはFAQの量で考えますと、50件以下の場合には「ルールベース型チャットボット」、50~300件程度であれば「AI型チャットボット」が向いているといえるでしょう。
チャットボットは会話形式で気軽なコミュニケーションを実現できるため、顧客と関係を構築する場合や自社や製品に興味・関心を持って欲しい場合に向いているといえます。
FAQシステムが向いている場合
FAQシステムは、FAQが300件以上と数が多くなる場合に向いています。
FAQはテレフォンオペレーターなどを介さず、問題解決サポートを行うという立ち位置で利用する際に向いています。
FAQは大量の情報を整理・管理できますので、「製品の故障」「返品」「使い方の調査」「規約の確認」等、問題解決に適しています。
そのため、「自分の抱えている疑問が何かをよくわかっているユーザー」に適しているといえるでしょう
FAQチャットボットの検討
「FAQチャットボット」の導入を検討する方法もありますので、詳しく解説していきます。
FAQチャットボットとは、チャットボットとFAQシステムを連携させたシステムのことをいいます。
FAQに蓄積した情報や回答をチャットボットがユーザーに直接提示することや、適切なFAQへのナビゲートの目的で使用されることが多いです。
連携させることで、膨大な量のシナリオを扱いながらも、チャットボットの検索性を高めることができるだけでなく、システム単体では難しかったユーザーの質問に対応できる可能性が高くなります。
インターフェース関係でチャットボットでは説明が難しい回答であれば、FAQサイトに円滑に誘導することができますし、FAQで対応できなかった「質問が曖昧な内容」や「検索ワードの選び方が不適切」といった内容であっても、チャットボットで質問を明確化することが可能となります。