BtoB ECとは?事例や成功のためのポイント

BtoB ECとは?事例や成功のためのポイント

BtoB ECとは、企業間の商取引をECサイトを通じて行えるようにした仕組み・システムのことであり、従来の受注業務で発生していた業務負担を軽減し、担当者がコア業務に集中できるようになることで、追加人員の補充を行う必要がなくなるといったメリットを得ることができます。

この記事では、 BtoB ECの説明をはじめ、EDIについて・BtoB ECサイトの種類・BtoB ECサイトとその他のECとの違い・BtoB ECのメリット・BtoB ECシステム導入の際のポイント・BtoB ECの構築方法・BtoB ECの事例などについて詳しく説明していきます。

目次

BtoB ECとは

(引用:富士インパルス純正パーツショップ ニポ (fujiimpulse-nipo.com) )

BtoB EC」とは、企業間・法人間の取引をインターネット・ECサイトを通じて行うこと、またその仕組みやシステムのことを指します。

企業間・法人間でモノ・サービスの売買を行う際に、FAXなどの紙の書類・電話ではなく、ECサイトなどのデジタルな手段を通じて行います。

インターネットを使用してWeb上で受発注を行うシステムになりますので、BtoB ECは「Web受発注システム」と呼ばれることがあります。

BtoBは「Business to Business(企業間取引)」という言葉を簡略化した言葉であり、ECは「Electronic Commerce(電子商取引)」という英語の頭文字を取った言葉になります。

そのBtoBECという2つの言葉が合わさったのが「BtoB EC」です。

EDIとは

EDIは(Electronic Data Interchange)を略した言葉であり、企業間のデータ交換を行うことを目的に導入される仕組みのことです。

企業間取引を専用回線・インターネット回線で繋げることにより、伝票作業を電子取引化するシステムになりますので、FAX・電話での商取引の場合よりも業務効率化を図ることができます。

ただし、取引先ごとに異なるEDIを用いることがあるため、汎用性が低く効率化を妨げるリスクもあります。

またEDIISDN回線を使用する場合が多いですが、ISDN回線が2024年で終了しますので、それまでにIP網を置き換えなければいけないという問題が発生しています。

そのため、インターネット・ECサイトの普及に伴って、BtoB ECに切り替える企業が増加しています。

BtoB ECの市場規模

(引用:20220812005-h.pdf (meti.go.jp) )

経済産業省の公表によりますと、広義のBtoB EC市場規模は2019年で353兆円、EC化率は31.7%であると述べられています。

市場規模に関しては前年比2.5%増加、EC化率は1.5ポイント増加となっています。

新型コロナウイルスの影響により、2020年度の市場規模は334兆円と前年5.1%減少となりましたが、EC化率は33.5%と1.8ポイント増加しています。

2021年は市場規模が372兆円、EC化率は35.6%と2.1ポイント増加しています。

これらのデータを確認しますと、BtoB EC市場は「成長市場」であると判断できるでしょう。

BtoBEC化率

先程も説明しましたが、BtoB EC市場規模が成長していく度に、EC化率も増加しています。

2019年のEC化率は31.7%、2020年は市場規模が新型コロナウイルスの影響で減少している中でも、EC化率は33.5%に増加しました。

2021年にはさらに増加して35.6%になっています。

業界ごとのEC化率

同報告書では、業種別・業界別のEC化率も公表しています。

以下の表がその内容になります。

 

大分類 中分類 2019EC化率 2020EC化率 2021EC化率
製造 食品 59.3 63.3 67.2
電気・情報関連機器 57.9 61.1 64.2
繊維・日用品・科学 40.7 45.7 47.9
卸売 卸売 28.8 30.6 32.3
情報通信 情報通信 19.9 21.0 21.8
サービス 広告・物品賃貸 14.0 14.6 15.5
建設 建設・不動産 12.0 13.1 14.3

 

BtoB ECサイトの種類

BtoB ECサイトの種類には、登録会員しかサイトを閲覧できない「クローズド型」、誰でも閲覧できる「スモール型」の2種類があります。

それぞれについて以下で詳しく説明していきます。

クローズド型

BtoB ECサイトのクローズド型とは、サイトに登録した会員以外は入ることができないECサイトになります。

ID・パスワードでログインを行った会員しか閲覧や利用ができないように、アクセス制限をかけています。

登録会員=取引先企業しか閲覧できませんので、価格・製品情報がオープンにならず、情報の機密性が保たれます。

取引先を限定したり、顧客別の対応を行ったり、情報公開先を限定したりする場合に適したサイトだといえるでしょう。

取引先ごとに違う販促情報を個別配信したり、オープンサイトよりもWeb集客コストを下げたりすることができます。

新規開拓よりも既存のリピート営業を強化したい場合に選ばれるBtoB ECサイトといえます。

スモール型

BtoB ECサイトのスモール型とは、誰でも閲覧可能なオープンなBtoB ECサイトになります。

取引先がフロントサイトから新規登録を行って利用する形となり、営業担当がアプローチできない遠方の取引先・小口取引の顧客などの商取引に向いています。

もちろん、既存顧客との取引も行うことができます。

既存顧客の受注以外にも、新規顧客の獲得を行いながら既存顧客へアプローチして、広い層から受注を取りこぼすことなく売上向上を目指したい場合に適しているサイトです。

その代わり、ターゲットが広くなりますので、戦略・販促には工夫が必要になります。

BtoB ECサイトとその他のECとの違い

BtoB ECサイトとその他のECとの違いとして、顧客などの販売対象が異なります。

また、販売対象が異なりますので、ECシステムに求められる機能も異なってきます。

以下で詳しく説明していきます。

販売対象の違い

BtoBは企業から企業、BtoCは企業から消費者、CtoCは消費者から消費者に向けて行われるビジネス形態になります。

つまり、それぞれのECは販売を行う対象が異なります。

BtoB ECは「メーカー卸問屋」「卸問屋小売店」などの商取引で、モノ・サービスを提供するサイトのことをいいます。

一方で、BtoC ECは「企業消費者」のように、企業が個人に対してモノ・サービスを提供するサイトであり、オンラインショップや通販サイトと呼ばれるものがこれに該当します。

近年、市場が伸びてきているCtoC ECはメルカリやラクマなどの「個人個人」で行う消費者間取引を行うサイトやEC上のサービスのことをいいます。

また稀に自社の従業員向けに販売を行うBtoE ECも存在します。

BtoCCtoCについてさらに詳しく知りたい方は、以下のURLの記事をご覧ください。

CtoCとは?BtoBとの違いや市場規模について | Hummingbird (humming-bird.info)

ECシステムに求められる機能の違い

ECサービスを展開する場合に欠かせないのがECシステムであり、システム会社の多くがECシステムを提供していますが、その過半数はBtoC向けのシステムとなっています。

BtoB向けの商取引に必要になる機能は、BtoC向けのシステムでは対応できない場合が多く、事業内容によって求められるシステムの内容が異なることを把握して、構築を行う必要があります。

BtoBに求められる機能の代表例を以下の表で記載しています。

 

販売側に必要な機能 購入側に必要な機能
買い手側ごとの価格表示や商品表示 法人と所属する社員情報の関連付け
最低ロット、最低注文金額の設定 発注前の見積書作成
掛売の対応等 リピート機能(同じ注文の繰り返し)
荷姿の選択 一覧画面から一度に異なる複数の商品をカートに入れる機能
基幹システムと柔軟に連携可能な設定を行う機能 上長による発注の承認機能

 

BtoB ECのメリット

BtoB ECを導入することで、従来は電話・FAXで行っていた見積依頼や発注業務をWeb上で完結することができますので、業務の効率化を図ることができるというメリットが挙げられます。

また新型コロナウイルスが流行した時期には、新規顧客の獲得が難しい時期がありましたが、BtoB ECであればネット上で営業活動を行うことができますので、新規顧客の獲得を促す効果も期待できます。

それぞれについて以下で詳しく説明していきます。

業務の効率化

従来の電話・FAXといったアナログな発注方法では、営業時間内でしか発注を受け付けることができませんし、問い合わせの対応もできません。

しかし、BtoB Cであれば買い手側は24時間365日いつでも発注をかけることができますし、サイト上に掲載されている商品の情報を自分で確認することができます。

そのため、従来の発注方法では機会損失に繋がっていた受注の機会を逃すことなく、BtoB ECサイトで商品を知ってくれた新規顧客の獲得も期待できます。

さらに全てWeb上で処理できますので、「受注対応業務の効率化」と「問い合わせ対応の効率化」を図ることができます。

受注対応業務の効率化

アナログな受注対応では、担当者が受注情報を基幹システムに手動で入力などを行う手間が発生するケースが多いといえます。

場合によっては、電話での聞き間違いやFAXの文字が判別できず、確認や訂正を行うなどの手間が発生してしまいます。

この際に誤発注などのミスが発生する可能性があります。

BtoB ECを使用すれば、従来の受注対応業務で発生していた情報入力・確認といった作業を自動化することができ、工数を削減して業務の効率化を図ることができます。

また、人的ミスの発生を防ぐことにも繋がります。

問い合わせ対応の効率化

BtoB取引では見積発行・在庫や納期の確認等の問い合わせが発生しますので、その対応に工数を割かれてしまいます。

BtoB ECサイトに商品の在庫数や納期の目安を掲載したり、見積を自動発行できる機能を導入することで、これらの問い合わせ件数を削減し、問い合せ対応業務の効率化を図ることができます。

新規顧客の獲得

新型コロナウイルスが流行した2020年は、テレワークでの業務が中心になっていましたが、そのせいで担当者が足を運べる範囲でしか営業ができず、新規顧客の獲得が難しいと感じる企業が多かったと思います。

また普段からも遠方の顧客に営業に行ったり、新規顧客獲得のために営業マンがカタログを持って会社に伺うために電話でアポイントを取るなど、新規顧客の獲得には多くのリソースがかかっていました。

BtoB ECサイトを導入しておくことで、これまでフォローできていなかった顧客に情報を届けることができたり、同時にWeb広告を導入すれば、特定の商品に関連する情報を探している企業が新規顧客になる可能性が高くなります。

ECサイトを訪問して問い合わせを行ってきた企業を見込み顧客として判断し、積極的に販促活動を行うことで、新規顧客の獲得・販路の拡大を期待できます。

BtoB ECシステム導入の際のポイント

BtoB ECシステムを導入する場合には、「売上アップ」または「業務効率化」など、自社の導入目的を明確化しておく必要があります。

導入目的を明確化しておかないと、導入コストだけが掛かってしまい、予想していた効果を期待できないという事態に陥ってしまう危険性があります。

また、サポート体制がしっかりしているのか、セキュリティ面で優れているのかも合わせて確認しておく必要があります。

社内にITの有識者が居る場合には、トラブルが発生してもある程度自社で対応できますが、有識者が居ない会社も多いと思いますので、サポート体制がしっかりしている企業を選んでおくことで、トラブルが発生しても迅速に対応できます。

また、セキュリティ面については取引先の企業の情報を扱うことになりますので、非常に重要な項目となります。

その他にも、自社に合った機能が搭載されているか、システム連携が可能であるかも確認しておきましょう。

それぞれについて以下で詳しく説明していきます。

目的に合ったシステムを選ぶ

BtoB ECシステムは、導入目的に合ったものを導入するようにしましょう。

代表的な導入目的には、「売上アップ」と「業務効率化」の2つの目的が挙げられます。

売上アップが主な目的の場合

売上アップを目的にしている場合、営業・販促として活用できる機能が搭載されているシステムを選択すると良いでしょう。

得意先別のキャンペーンを設定できる機能、キャンペーン情報を発信できるお知らせ機能、自社の営業が取引先の代わりにログインを行い、注文・在庫確認ができる代行注文機能、スマホやタブレット対応機能、カタログ発注機能などが売上アップに効果的な機能といえるでしょう。

業務効率化が目的の場合

業務効率化が目的の場合、有人で対応すると負担がかかる部分を自動化できる機能が網羅的に搭載されているシステムを導入すると効果を期待できます。

取引先が出力できる見積機能、納期回答機能、出荷状況表示機能等、BtoB ECでよく問い合わせされる内容を表示できるようにしておくと、業務負担が軽減されます。

その他にも、手間がかかる取引先別の対応、出荷対応等がシステムで処理できますと、業務をスムーズに処理できるようになります。

サポート体制の確認

運営していく上で、システムエラー・トラブルが起こる可能性は少なくありません。

それらが発生しても、すぐに対応できるようにサポート体制が充実しているのかを確認しておく必要があります。

BtoB ECが機能しませんと、売上に直接的なダメージを受けますのですぐに対応できるのか、事前に担当者・窓口に確認しておきましょう。

システム連携が可能か

自社に基幹システムが導入されている場合には、BtoB ECシステムが基幹システムと連携可能であるかを確認しておく必要があります。

連携することができれば、それぞれのシステムの機能を併用して使用することができますので、更なる業務効率化を期待できます。

自社に合った機能が搭載されているか

導入目的はそれぞれの企業によって異なりますので、導入目的を達成するために必要になる機能を搭載しているかをしっかりと確認しておく必要があります。

そのためには、業務フローをしっかりと洗い出して、それぞれの業務でBtoB ECが活用できるかの有無を確認しておきましょう。

独自の商習慣がある場合でも、システムをカスタマイズして対応できる可能性があります。

セキュリティ面の確認

多くの顧客情報を取り扱うBtoB ECは、情報漏洩を起こさないためのセキュリティ対策を講じる必要があります。

情報漏洩が発生した場合には、多額の損害賠償が発生する可能性もあり、企業の信頼も失墜します。

そうならないためにも、セキュリティ面の確認は絶対に行いましょう。

BtoB ECの構築方法

BtoB ECの構築方法には、セミオーダー型のシステムである「パッケージシステム」、簡単にECサイトを開設できる「ASPカート」、0からECサイトを自分で構築できる「フルスクラッチシステム」などの3つの方法が挙げられます。

それぞれについて以下で詳しく説明していきます。

パッケージ

ECサイトに必要となる機能を標準で詰め込み、標準機能で足りない部分をカスタマイズしながらECサイトを構築する仕組みなのが「パッケージシステム」になります。

土台として必要機能が搭載されていますので、0から構築する必要が無く、自社の要望に合わせたECサイトを構築可能です。

ecbeing BtoB」というBtoB取引に特化したプラットフォームも増加しています。

標準機能・カスタマイズの範囲はベンダーによって異なりますので、コストだけでなく、システムの持つ機能性・拡張性、自社の目的とマッチしているかを確認するようにしましょう。

ASPカート

クラウドシステム上で提供されるサービスを使用するASPカートは、手軽にECサイトを始めたい企業に向いています。

数万円程度で導入できる・導入までの期間が短い・ベンダーがバージョンアップやセキュリティ対応を行うといった特徴があります。

ASPカートはカスタマイズを加えることができませんので、拡張性が乏しい傾向にあり、システムに合わせてサイト運営を行う必要がありますので、独自のサイトを構築したい場合には不向きといえるでしょう。

フルスクラッチ

必要な機能・デザイン等、要望に合わせてオーダーメイドでECサイトを構築する方法がフルスクラッチになります。

0から構築を行いますので、開発期間・コストがかかりますが、自社に100%マッチしたECサイトの作製が可能です。

自社のやりたいように実現できるというメリットがある一方で、構築後のサイトの改修・セキュリティ対策は自社で行う必要があります。

リソース・コストが揃わないと実現できない構築方法であるといえるでしょう。

BtoB ECの事例

BtoB ECの事例として、デジタル化が進んでいない業界の中でもシステムを導入して成功している「フランスベッド」、業務効率化を目的にBtoB ECサイトをリニューアルして、見事に成果を出すことができた「ホーザン」の2つの事例をご紹介します。

フランスベッド

(引用:フランスベッド株式会社 (francebed.co.jp)

ベッド等の寝具や寝装品の製造・販売を行っているフランスベッドは、受注業務の負担増加と人的ミスの発生が問題となっていました。

受注作業に問題が生じていた理由として「アナログ業務」が挙げられますが、FAXで子会社・取引先から注文を受け取り、その内容を目視確認して手入力を行っていましたので、担当者の業務負担が大きくなり、入力ミスが発生していました。

そのため、受注業務を自動化する目的でBtoB ECを導入しました。

業界自体がデジタル化が進んでいなかったこともあり、本格的な活用に時間がかかりましたが、1年後にはグループ子会社であるフランスベッド販売からの注文の8割をEC化することに成功しました。

業務時間で換算しますと、45時間分もの業務時間の削減に成功しています。

生産リードタイムの短縮・納期回答の自動化も可能となり、24時間365日いつでも受発注が可能となり、自社だけでなく取引先の利便性も向上しています。

ホーザン

(引用:【HOZAN】 ホーザン株式会社

工具などの販売を行うホーザンは、利便性の向上・ユーザーとの接点を持ちやすくするために、別のプラットフォームを採用して、別々に運営していたBtoB ECサイトとコーポレートサイトを統合したECサイトのリニューアルを行いました。

サイトと基幹システムの両方をリニューアルしたことによって、業務量の3割程度の削減に成功し、業務効率化を実現できたことで、担当者が別の業務に集中できるようになり、追加の人員補充が不要になるなどの成果を出すことができました。

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