ECサイトの構築には、クラウドEC、ASP、ECパッケージ、フルスクラッチなどのサービスがあります。
今回はその中でもクラウドECの特徴やサービスの違いを紹介します。
クラウドECとは
クラウドECとは、クラウド上にあるプラットフォームを用いてECサイトを構築できるサービスのことです。
自社のECサイトを立ち上げるには、商品の在庫の管理機能、コンテンツの編集機能、決済機能などのシステムを運用するためのプラットフォームが必要です。
ECパッケージなどの構築手法ではこのプラットフォームを自社のサーバーにインストールが必要ですが、クラウドECは必要がなく、クラウド環境上でECサイトを運営することができます。
クラウドECは長期的な視点で見たときのコストパフォーマンスがよく、かつ機能性やカスタマイズの自由度も比較的高いサービスです。
クラウドECとASP・ECパッケージなどのサービスとの違い
クラウドECとASP・ECパッケージなどのサービスとの違いを表にまとめました。
クラウドEC | ASP | ECパッケージ | フルスクラッチ | |
初期費用 | 約500万~ | 10~30万 | 約600万~ | 約1000万~数億 |
月額費用 | 数十万円 | 数万円 | 数十万円 | 数十万円 |
導入期間 | 最短3か月 | 最短1週間 | 最短3か月 | 最短1年 |
拡張性 | 〇 | – | 〇 | 〇 |
セキュリティ | 〇 | 〇 | △ | △ |
最新性 | 〇 | 〇 | – | – |
ASPとの違い
ASPカートとはクラウドという概念だけでみると、ほぼ同じタイプです。
ASPは初期費用・月額費用が非常に安価ですが、クラウドECプラットフォームにできることとASPカートのできないことがあり、大きな違いとしては
- 拡張性がない(独自のECサイトができない)
- 外部システムとの連携ができない
ということが挙げられます。
- に関しては、販売するフロントの機能から管理側の機能まで、ASPに合わせてECサイトの運営をしていく必要があります。売上があがるとお客様へのサービス向上をするための機能追加や、売上をさばくための管理機能を拡張していきたいということになりますが、それが不可能なのがASPカートです。
- に関しては、店舗や基幹システムとのデータ連携を始めオムニチャネルを行うにあたっては必須のカスタマイズになります。カスタマイズができないという点がASPの弱点です。
ECパッケージとの違い
ECパッケージはカスタマイズが可能なECシステムです。国内の大規模ECサイト構築はほとんどがECパッケージで構築されていることが多いです。ECパッケージとの違いは
- ECシステムを導入した後は、システムが古くなっていく
- 構築費用がASPに比べ割高
という点が挙げられます。
- に関してECパッケージはASPのように常に最新のシステムに自動アップデートがされません。システムを事業者のためだけに切り出して構築をするため、共通のプラットフォームではなくなり、自動アップデートができない点がECパッケージの弱点です。
- に関してECパッケージは拡張性が高く、基本的にはどんなカスタマイズも可能ですが、独自のカスタマイズが可能なプラットフォームとなり、費用はASPに比べて割高になります。
フルスクラッチとの違い
クラウドECの導入期間は最短3カ月です。クラウドECの導入期間が短い理由はパッケージと同様、基本機能を備えたシステムを用意しているので、カスタマイズをしても比較的早く導入することが可能です。
最も導入期間が長いのは、ゼロからECサイトを構築するフルスクラッチです。独自の機能要件も多い大手ではよく使われるシステム構築方法です。
ASPはカスタマイズしない分、既存のものを使うので、最短1週間でリリースすることも可能です。
導入期間の長さがフルスクラッチとの違いです。
クラウドECの特徴
クラウドECの特徴をご紹介します。
無料アップデートで常に最新のシステム
クラウドECはシステムが自動でアップデートされます。そのため、常に新しいシステムを使うことができます。ECパッケージを利用した場合などは、常にユーザー側でシステムのメンテナンスが必要になりますが、クラウドECの場合は必要ありません。また、システムの改修を何度も行うことで費用が高くなったり保守性が悪化したりする可能性もあります。
クラウドECは、追加機能のリリース、各種システムのアップデートは自動的に行われます。リソース不足でシステムの改修ができないという心配もありません。自動アップデートはコストを抑えることにもつながり、中長期的な視点で考えると、費用削減も見込めます。
万全のセキュリティ
クラウドECはシステムが自動でアップデートされるため、セキュリティも最新のものを利用することができます。
セキュリティ基準の高い企業が導入しているクラウドECは、その企業の水準にシステムをアップデートさせる必要性が出てきます。そのため同じクラウドECを活用している企業も高いセキュリティになります。
日々の売り上げ管理やタスクに直結しないセキュリティ対策の負担を減らせることもクラウドECのメリットといえます。
幅広いカスタマイズ性
クラウドECは、プラットフォームの共通領域と会社別のカスタマイズ領域を別々に用意しています。システムのカスタマイズや外部システムとの連携にも対応しており、柔軟なサイト構築ができます。
導入までの期間が短い
クラウドECは短い期間で導入が可能となります。ECに必要な基本機能を備えているため最短3カ月程度で導入ができます。また、カスタマイズをしても比較的早い導入が可能です。
導入期間が短くすぐにECサイトを構築できるため、クラウドECの早期導入は事業の成功にもメリットがあります。
最適なインフラ環境を利用できる
クラウドECでのサイト構築の場合、ECサイトにおいて必要なデータやシステムは、すべてクラウド環境に置かれることになります。そのため、自社でサーバーなどのインフラを用意する必要がありません。
サーバーの保守担当やセキュリティ担当などに人員を割く必要がなく、専門性の高い知識や社内リソースがない場合でも運用が可能です。
サーバーが落ちないよう対策ができる
クラウドECでは、サーバーの増減を設定できます。例えば、セールのタイミングなどでアクセスの集中が見込まれる場合、インフラ環境をあらかじめ拡張しておけば、アクセスの増減にも対応可能です。
これにより、アクセス急増によるサーバーダウンといった機会損失を防ぐことができます。
追加機能が低コスト
ECサイトを構築する際、最初からカスタマイズや外部システムとの連携を行うと、システムの開発費用に大きなコストが発生します。
売り上げの見込みに確信がない状態でECサイトを立ち上げるときは、システム開発への投資も必要最低限に抑えることが大切です。クラウドECであればコストを抑えながら、ECサイトの構築が可能になります。
クラウドECでECサイトを構築して売り上げを伸ばした場合も、カスタマイズによってシステム連携がスムーズになります。この間にシステムの自動更新も入るため、ECパッケージよりも費用を抑えることができます。
おすすめクラウドECサービス
おすすめのECサービスをご紹介します。
ecbeing
ecbeingはebisumartにとっては最大のライバル会社です。中、大規模のECサイトではよく比較検討されています。
ecbeingもebisumartに対抗してメルカートというカスタマイズ可能なクラウドECプラットフォームをリリースしました。
しかし、カスタマイズの幅に制限があり、大規模ECサイトの場合は従来のパッケージが主流になっています。
ebisumart
ebisumartはクラウドECで自動アップデート機能があり、システムが古くなることを防ぎ、加えて機能の拡張性やカスタマイズ性も備えています。
クラウドECの長所を生かし、すべてを実現するクラウドコマースプラットフォームとしてebisumartは注目を集めています。
MakeShop
MakeShopエンタープライズのクラウドECは低コストで高機能ECシステムが活用でき、独自開発する場合と比較すると大幅にコストを抑えることができます。
初期費用は100万円~、月額費用は50,000円~となっており、毎月の機能アップデートができるなどスピード面で高いコストパフォーマンスが実現します。
MakeShopとは?主要機能や導入事例、料金プランを徹底解説
コマース21
コマース21はソースコードを開示している強みがあり、構築後は自社でECサイトを保守、開発も視野にいれたい企業には、ドキュメントもしっかりしており、おすすめです。
クラウドECのメリット
クラウドECのメリットは費用対効果の高さです。
導入コストでいえば、たしかに最も安価で済むのはASPですが、拡張性の良さやカスタマイズの幅広さなど、自社ECで成し遂げたい要件に必ずしも対応できるとは限りません。
クラウドECのほうがより理想のショップ運営を叶えられます。
パッケージのように数年ごとのシステム改修で費用が発生しないので、ランニングコストを抑えることができます。
クラウドECのデメリット
クラウドECのデメリットは、そもそもクラウドECを利用できる環境でなければ導入の検討は難しいという点です。
長期的にみてコストパフォーマンスがよいといっても、機能性に富んだサービスですので導入のコストはかかります。そのため、ある程度資金力をもった中規模以上の企業であることが条件です。
また、ソースコードが開示されていないことです。自社サイトのソースコードを把握していないので社内での保守管理ができません。
クラウドECがおすすめの企業
クラウドECがおすすめの企業は以下の通りです。
運用リソースの確保が難しい場合
クラウドECはシステムの自動アップデートなどECパッケージなどと比較しても運用に手間がかかりません。サーバーの用意も不要なため、専門的な知識を持つ人員を配置する必要もないです。
そのため、クラウドECは社内リソースを割くことや、新しく人材を採用することが難しい企業におすすめです。システムの自動更新があればカスタマイズ領域も広がるため、一度導入するとシステムリニューアルもできます。、運用リソースを最小限に抑えたECサイトの運営が可能です。
年商10億円前後の中小規模
クラウドECを導入するときのEC年商は1億円~20億円が目安です。これ以上のEC年商となると、独自のカスタマイズや外部連携も複雑になる場合が多いため、ECパッケージを選ぶ企業が多くなります。
EC年商が1億円程度ならば、ASPカートでのECサイト運営も可能です。しかし、その規模のECサイトとなると、受注業務などのバックエンド業務が追いつかない可能性が高くなります。
ECサイトの構築方法はEC年商と密接な関係があり、年商が大きくなるにつれて必要な機能やこなすべき業務が変化します。年商が大きくなると、顧客管理や商品管理を自社システムと連携することが多いです。
決済方法に関しても、独自の入力フォームにしたいというニーズも出てくるでしょう。しかしながら、そのようなニーズはカスタマイズ性の高さが必要となるため、ASPカートでは対応できません。
クラウドECの選び方
クラウドECの選び方は下記をご参照ください。
目的・目標を考える
クラウドECを選ぶときは目的や目標を考えることが大切です。自社のECサイトの位置づけや売り上げ目標を考えることから始めます。EC事業で実現したいことを整理し、ターゲットの選定や運用フローを決めていきます。
EC事業を自社内でどう位置づけるか、ECサイトでどのようなコンテンツの配信を行うかなど、コンセプトの決定も重要です。
ECサイトのコンセプトの決定はブランディングに通じます。
サポート体制を確認する
クラウドECは提供するベンダーのサポート体制が異なります。ベンダーによってはシステムの導入にあたって専任のサポート担当がつき、初めて運営する場合でも安心して利用できる製品があります。
システムを導入したあとも、サービスの操作方法や機能の設定方法などを電話やメール、専用の掲示板で対応してくれるベンダーも存在します。有償サポートにより、ECサイトの売り上げアップのためのマーケティングやコンサルティング支援を受けることも可能です。
クラウドECを選ぶときは、サービスを提供するベンダーの企業規模や、ここ数年の成長率を確認することをおすすめします。
複数社に見積もりをとる
クラウドECを選ぶときは複数社の見積もりをとると良いです。自社が目指すクラウドECにマッチしそうな複数の候補をピックアップして、機能面や料金面、サポート体制などさまざまな視点で比較することがおすすめです。
価格だけでなく自社の予算や希望する納期、自社が求める必要な最低限の機能、競合サイトなどが反映されているか確認します。
ヒアリングで自社の目的や、目標とする売り上げの確認があるかも大事なポイントです。それらがヒアリングされた場合は、どのようにアプローチするのかを提案書で示しているか確認しましょう。
EC運営に合わせて確認したいこと
EC運用に合わせてSNSの運用は出来ていますでしょうか?
ECにおいて、SNSの活用は必須です。
LINEやInstagramをECに活用した事例を下記にてまとめていますので、併せてぜひご覧ください。