チャットボットは、人工知能(AI)なのか?人工無脳とは?
近年、人工知能という言葉が飛び交っているが、チャットボットが人工知能に分類されることがあるようだ。また、世の中のチャットボット関連サービスによっては、AIチャットボットや人工知能チャットボットと謳っているものもある。
一方で、人工無脳という言葉を知っているだろうか?人工無能と書かれることもあるこの言葉は、ごく最近チャットボット業界において聞くようになった。お察しの通り、人工知能の対義語として使われることが多いのだが、実際にはどうなのか。
本記事では、チャットボットと人工知能、人工無脳の関係性をまとめた。
人工知能とは?
そもそも人工知能という言葉を気軽に使っているが、人工知能とはなんだろうか。
wikipediaによると、以下が人工知能だ。
人工知能(じんこうちのう、英: artificial intelligence、AI)とは、人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指す。
出典:wikipedia
一般社団法人 人工知能学会設立趣意書によると、以下のように定義されている。
大量の知識データに対して、 高度な推論を的確に行うことを目指したもの
出典:一般社団法人 人工知能学会設立趣意書からの抜粋
総務省によると、以下のように説明されている。
知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技 術
出典:総務省 人工知能(AI)の現状と未来
実は人工知能の定義は研究者によって様々である。
つまり、人工知能(AI)という言葉が初めて世に知られた1956年以来、人工知能の定義は未だに明確に定められていないのだ。
人工知能の定義が定められていない以上、チャットボットが人工知能であるかどうかを判断すること自体が不可能ということになる。しばしばチャットボットが人工知能なのかという質問を聞くことがあるか、上記の事実を知っていれば、その質問自体がセンスのある質問であるとは言えないということに気がつくだろう。
ただ、そうなるとこれで本記事は終わってしまうので、あえて人工知能の定義を当サイトとして定義した上で、チャットボットが人工知能かどうかを考えてみる。
総務省の「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」による以下のようなデータも参考にしている。
様々な人工知能に関する解釈をまとめ、当サイトとして以下のように定義してみた。
人工知能=大量の知識データから現象を推論し、気づくことができる人間のような知能である
チャットボットは人工知能なのか?
では、人工知能を上記の通り定義した場合、チャットボットは人工知能に値するのか。
答えは「多くのチャットボットは人工知能ではない」が正しいだろう。
なぜなら、大半のチャットボットが大量の知識データから現象を推論していないからだ。
チャットボットの多くは、事前に定められたルールに則って、会話を自動化している。(これをシナリオ型、またはルールベースのチャットボットと呼ぶ)
例えば、「パスワードを忘れた」という質問に対して、「パスワード再発行の方法は〜〜です」と伝えたい場合、質問と回答を事前にチャットボットに覚えさせる。
決して、チャットボットが「パスワードを忘れた」という日本語の意味を理解しているわけではないし、「パスワード再発行の方法は~~です」という回答をチャットボットが自動生成するわけでもない。
ただ、「パスワードを忘れた」という質問に対して、「パスワード再発行の方法は~~です」を返答するのか「パスワードを忘れた場合は以下までお問い合わせください」を返答するのか、といった判断をするための会話ロジックの組み方はチャットボットサービスによって様々だ。
人工無脳とは?
ここまで人工知能について触れてきた。では、対比として使用される人工無脳(人工無能)とは何だろうか。
wikipediaによると、以下が人工無脳だ。
人工無脳(じんこうむのう)は、英語圏ではchatterbot、もしくはchatbotと呼ばれる会話ボットあるいはおしゃべりボットといったようなコンピュータプログラムのことで、語としては「人工知能」ないし「人工頭脳」からの派生である。
出典:wikipedia
wikipediaによると、もはやチャットボットは人工無脳であると断言しているも同然だ。
すなわち、人工無能(無脳)は言葉の意味を理解しているわけではなく、あくまでルールベースや単語レベルの意味理解に基づいた表面上の「会話」を目的としている一方で、人工知能は大量の知識データから現象を推論し、気づくことができる人間のような知能を再現しようとしていると解釈できるだろう。
人工知能(AI)チャットボットとは?
では、最近聞く“人工知能(AI)チャットボット”とは何なのか。
全くの嘘なのか。
企業が宣伝のために誇張しているだけなのか。
メディアに取り上げられるために、人工知能(AI)というキーワードを使っているだけなのか。
真相は不明だが、おそらく、watson(ワトソン)などのいわゆる人工知能(AI)サービスと掛け合わせたチャットボットサービスという意図で、”人工知能(AI)チャットボット”を謳っているのだろう。
実際に調べてみれば、いくつかそのようなサービスは存在する。
チャットボットが人工知能である必要性
最後にチャットボットが人工知能である必要性、言い換えればチャットボットに人工知能を搭載する必要性について考察する。
そもそもチャットボットに人工知能を搭載することによって何を実現しているのか。
それは多くの場合、自然言語処理を指している。
自然言語処理についてはの詳細は別の記事で書くとして、この自然言語処理には機械学習や深層学習(ディープラーニング)の技術が使われている。
チャットボットサービスでは、多くがこの自然言語処理を搭載しており、言葉のブレを吸収できるようにしている。チャットボットが人工知能なのかという議論が起こる要因でもあるだろう。
結論だが、自然言語処理を人工知能と言うならば、チャットボットは人工知能である必要はあるだろう。
ただ、当然だが必ずしもWatsonなどのいわゆる商用の人工知能(AI)サービスを搭載している必要はない。
出典:eweek
ちなみにWatson搭載のチャットボットサービスの多くは、WatsonのNatural Language Classifier(自然言語分類)という自然言語処理でチャットの内容を解析してスコアリングし、同じくWatsonのR&R(Retrieve & Rank)で回答を見付け、適切なものを上位に提示するということをしている。
自然言語処理をした上で、最適な回答結果が提示できればチャットボットサービスとして成立する。そのための手段は、いくらでもあり、その方法がチャットボットベンダーによって様々なのだ。
自然言語処理対応のチャットボット開発ツール hachidori