企業や自治体で抱えている課題を解決するために、チャットボットとその他のツールを外部連携する方法があります。
チャットボットと外部連携することで、顧客への提案や回答に時間がかかるという問題やご本人様からの相談件数を増やしたいといった課題を解決することが可能になります。
この記事では、改めてチャットボットの説明をはじめ、チャットボットのAPI連携の説明・外部連携が出来るツールの種類・チャットボットを外部連携するメリット・チャットボットの選び方・外部連携の事例等について詳しく説明していきます。
チャットボットとは
チャットボットとは、「会話(チャット)」と「ロボット(ボット)」を掛け合わせた言葉であり、人間相手ではなくロボットと会話ができる技術やサービスのことをいいます。
公式LINEアカウントにメッセージを送ると自動で返信が返ってきたり、Webサイトを見ていると「吹き出しマーク」と「チャット画面」が出てくることがあると思いますが、そのようなシステムの裏側にチャットボットが導入されています。
問い合わせ対応・マーケティング支援に使用する企業が多く、カスタマーセンターでは顧客から寄せられる質問に回答したり、社内ヘルプデスクでは他部署の従業員からの質問に回答するなどの対応を行えるため、担当者の業務負担が軽減されます。
チャットボットについてさらに詳しく知りたい方は、以下のURLの記事をご覧ください。
チャットボットとは?AIとの違い・種類・選び方など、総まとめHummingbird (humming-bird.info)
チャットボットの外部(API)連携とは
チャットボットのAPI連携とは、「API」の仕組みを利用して外部ツールと連携させることをいいます。
例を挙げますと、LINE・Facebookメッセンジャー・Microsoft Teams等が挙げられます。
チャットツール上にチャットボットを設置したり、CRMと連携することでチャットボットの利用状況の管理が簡単になるなどのメリットを得ることができます。
APIは「Application Programming Interface」の頭文字を取った言葉であり、アプリケーションとプログラムを繋ぐ役割を果たすものを意味しています。
APIを公開しているLINEやCRMシステム等の外部ツールと連携が可能になります。
外部連携出来るツールの種類
外部連携が出来るツールには、「顧客向けチャットボットの場合」と「社内向けチャットボットの場合」でそれぞれ使用すべきツールが異なります。
顧客向けチャットボットの場合
2016年はAIシステムがスタートしたばかりですが、市場希望は2020年で87億円になり、2022年で132億円に達するという報告があり、市場がどんどん大きくなっていることが分かります。
この背景には、LINE・Facebookメッセンジャー等のメッセージツールがオープン化し、チャットボットのプラットフォームとしてメッセージツールを開発可能になったことが理由として考えられます。
顧客向けチャットボットの場合に活用できる外部連携ツールは以下の通りです。
①LINE
全世代平均で92.5%が利用するLINEはAPI連携が可能となっています。
メリットとしては、LINEトークルームで予約機能・デジタル会員証が利用できたり、メッセージ・画像・位置情報を送信する機能も使用できる点です。
②Facebookメッセンジャー
Facebookメッセンジャーから外部データの取得・投稿・更新が可能です。
③有人チャットツール
自社のWebサイトやアプリでオペレーターと顧客が直接チャットできるのが有人チャットツールです。
API連携を行えば、チャットボットの対応可能な範囲で自動で対応可能となります。
メリットとしては、多くの顧客の対応が可能となり、オペレーターの業務効率を向上させることができる点です。
④CRMシステム
APIを連携しますと、会社の顧客情報を一元化してリアルタイムで共有可能です。
⑤Web接客ツール
API連携により、最適にパーソナライズした活用ができる点が注目されています。
社内向けチャットボットの場合
社内向けチャットボットの場合に活用できる外部ツールは以下の通りです。
①メッセージングアプリ(Microsoft Teams、Slack等)
Microsoft Teamsは社内の従業員とチャットが行えるツールになります。
チャットボットにマニュアルやノウハウを登録しておくことで、質問が寄せられた場合にチャットボットが回答を提示するというLINEやFacebookメッセンジャーと同じ活用方法で使用できます。
またチャットボットがあることで、社内知識の標準化を図ることができます。
②情報共通ツール(SharePoint等)
SharePointとは、Microsoft365のうちの1つとして提供されているサービスであり、複数のユーザーが一つのファイルを同時に編集・共有・ダウンロードしたり、音声通話しながら文章を作成することのできるツールです。
チャットボットと連携することで、情報を探す手間を省くことができる・必要に応じて担当者に引き継ぐことができる・チャットボットへの問い合わせ内容を社内ポータルサイトに蓄積することができる等のメリットがあります。
チャットボットを外部連携するメリット
チャットボットを外部連携するメリットは、「問い合わせ対応工数の削減」「顧客データ管理」「会議室予約等の一元管理も」の3つのメリットが挙げられます。
問い合わせ対応工数の削減
ビジネスチャットとチャットボットを連携すれば、社員は疑問や問題をその場で解決できますので、社内ヘルプデスクに寄せられる問い合わせ数を削減できます。
会社の規模が大きくなるほど、社内ヘルプデスクには様々な質問が寄せられますが、その多くがマニュアルを確認したりすることで解決できるものも少なくありません。
そういった質問への対応に時間が取られてしまい、本来のコア業務が進まないことに悩んでいる担当者も多いといえます。
チャットボットを外部ツールと連携し、よくある質問に回答できる仕組みを構築することで、社員は自ら疑問を解消できますので、結果的に社内ヘルプデスクに寄せられる質問数を削減でき、業務の効率化を図ることができます。
顧客データ管理
チャットボットとCRMツールを連携することで、チャットボットとやりとりを行った情報が全てCRMに同期されます。
コンタクト履歴は社内で共有が可能になります。
顧客との会話内容が残っていますと、営業部門・お客様窓口・製品開発部門等で活用できそうな情報も見つかりますので、それぞれの業務改善に活用させることができます。
顧客との会話データは、顧客のニーズや属性を把握するための貴重な情報源となります。
CRMで顧客の属性が分かりますと、店舗を運営している企業であれば、周辺にお住いのユーザー・顧客に対してのみセール情報・お得な情報をメールやメッセージで送るなど顧客の属性に合わせた販促メッセージを送る施策を行うことができます。
つまり、顧客の属性に合わせたマーケテイング施策が可能になるということです。
会議室予約等の一元管理も
チャットボットの種類によっては、各種サブスクリプションサービスと連携できるものがあります。
TeamsやOffice365等と連携できれば、社員のスケジュール管理・会議室の空室管理などもチャットボット上でできるようになります。
ミーティングのスケジュール調整、会議室の予約をワンストップで可能になりますので、設定したスケジュールをカレンダーに反映し、後はメールで通知しておくと完了になります。
チャットボットの選び方
チャットボットの選び方としては、「導入目的を整理する」「AI搭載の必要性」「連携可能な外部ツール」「サポート体制の有無」の4つのポイントを意識することが重要となります。
導入目的を整理する
チャットボットと他のツールのAPIを連携させて達成したい目的・目標を整理しておく必要があります。
その目的が明確になっていないと、どのようなチャットボットツールを導入するべきかを決めることができなくなります。
必要な機能も洗い出す
チャットボットに搭載されている機能は異なるため、自社の導入目的の達成に必要になる機能を洗い出しておく必要があります。
【例】シナリオ型・AI型・Excel対応・有人チャット切り替え・音声認識・AIサジェスト・対応言語等
AI搭載の必要性
チャットボットにはAIが搭載された「AI型」と非搭載の「シナリオ型」のチャットボットがあります。
シナリオ型は一問一答の単純な質問に対して回答を行えますが、AI型は複雑な質問や文字の揺らぎにも対応可能です。
問い合わせに対する人的リソースの削減を目指す場合にはAI型が向いていますが、マニュアルの内容を返答するだけで良いのであればシナリオ型でも対応可能です。
そのため、自社の導入目的に合わせてAI型がいるのかを検討してください。
コストが変わってくる
シナリオ型チャットボットの場合、初期費用は無料~10万円となっており、運用費用も月額5万円以下のものが多いです。
一方で、AI型チャットボットの場合、初期費用が20~100万円、運用費用は月額30~100万円となり、非常に高額になります。
連携可能な外部ツール
チャットボットを導入する際には、連携できる外部サービスがどの程度あるのかも必ず確認しておきましょう。
今後新しいツールを導入する際に、連携できるツールから選択しないといけなくなるからです。
その選択肢を狭めないようにしておくことも重要な項目となります。
サポート体制の有無
サポート体制の有無についても確認しておく必要があります。
チャットボットを導入する際には、通常の業務と並行して準備を進めないといけませんので、担当者の負担が多くなる傾向が見られます。
場合によっては、いつまでも運用を開始できないケースもあるようです。
運用を開始できたとしても、チャットボットの精度を向上させるためにはチューニングが必要になりますので、定期的な見直し作業が必要になります。
そんな時でもサポート体制がしっかりしていれば、担当者が過剰な負担を負うことなく、導入・運用が可能になります。
導入時・導入後にどのようなサポートが受けられるかを必ず確認しておきましょう。
外部連携の事例
外部連携の事例として「社内システムとの連携」「チャットツールとの連携」の2つの事例をご紹介していきます。
社内システムとの連携
「社内システムとの連携」の例として、不二製油株式会社の事例をご紹介します。
不二製油は植物性油脂、業務用チョコレート、乳化・発酵素材、大豆加工素材の事業に関する食品の開発製造販売を行う企業です。
不二製油は営業部門への「商品知識の共有」という課題を抱えていました。
どのような問題かといいますと、不二製油の営業の担当は取り扱っている製品ごとではなく、お客様ごとに分かれている仕組みになっており、営業1人が理解して覚えておかなければいけない商品の知識量が非常に多く、新入社員が多くの知識を覚えることが難しい状況にありました。
そのため、製品開発部門に同じような質問が何度も寄せられて、その度に担当者が対応しないといけないだけでなく、回答までに時間が掛かってしまった場合には、お客様への提案・回答が遅れるといったロスが発生していました。
そういった課題を解決するために、社内のイントラシステムにチャットボットを導入することを決めました。
担当社が少し未完成の状態でも、チャットボットの効果や利用者の反応をすぐに見たいと考えたため、製品開発グループの中で一部の製品についてだけチャットボットを作成し、実際に営業部の方に利用してもらいました。
チャットボットの導入については、社内のイントラシステムの掲示板に掲載したため、若手を中心にすぐに周知されていきました。
担当者は実際に利用した営業部門の方からフィードバックをもらい、足りていない部分を追加していった結果、営業部門の若手がチャットボットに先に問い合わせを行い、それでも分からない部分については製品開発部門も問い合わせるといった流れを定着させることができました。
また、想定していない部門でも利用されていることが分かり、予想以上の効果を得ることができています。
チャットツールとの連携
「チャットツールとの連携」の例として、名古屋市の事例をご紹介します。
元々子ども・若者総合相談センターは、ご予約を頂いて対面でご相談をお受けするスタイルで運営していましたが、ご本人様からの相談が2割程度でした。
ご本人様からの相談を増やす方法がないかと考え、LINE相談窓口の導入を決めました。
LINE相談窓口での対応が初めての試みであったため、全てのご相談を捌くことが難しいと考え、「hachidori」のチャットボットを導入しました。
LINEチャットボットの使用方法ですが、主に相談者の振り分けに利用しています。
相談者の対象が名古屋市在住の15歳~39際に限定されていますので、最初に年齢・性別・お名前・ご相談内容を質問して振り分けを行っています。
全ての質問をクリアした方には相談内容の確認を行い、相談員におつなぎする仕組みになっていますが、チャット相談を受けたうえで「実相談でお会いしてサポートが必要」と判断した方には直接お会いするように促しています。
元々、メールと電話で受付を行って面談の日を決めていましたが、若い方にとって「電話をする」という行為はハードルが高いと感じていたようです。
実際にLINE相談窓口に寄せられるご相談の9割はご本人様からのご相談です。
現在も1日10~15名の方がチャットでご相談に来られています。
今まで電話だとなかなか言葉にできなかった事が、LINEで気軽に相談できる環境が整ったため、今まで拾いきれなかったご相談も拾えるようになりました。