インターネットが広がったことにより顧客の行動が変化し、カスタマーエクスペリエンスに注目が集まっています。
カスタマーエクスペリエンスが向上すると顧客がより企業のファンになり、顧客から顧客へ良い口コミの発信、解約防止、新規顧客からリピーターになってくれるなど企業にとってメリットが多くあります。ブランディングの強化にも繋がり売り上げ向上に繋がります。
カスタマーエクスペリエンスを理解し、向上できるよう学んでいきましょう。
カスタマーエクスペリエンスとは?
カスタマーエクスペリエンスとは顧客が企業等との取引を開始してから終えるまでの期間において、顧客が体験することや顧客が得られる価値、メリットなどを指した言葉です。
英語での表記はCustomer Experienceとなり「CX」と表記される場合もあります。日本語では顧客体験です。
インターネットの普及による顧客の消費行動の変化や市場の新規顧客開拓の難航などにより、デジタルマーケティングにて注目を集めています。
カスタマーエクスペリエンスの例
事例を3つ紹介します。
- 購入前の販促や購入後のサポートなどの購入前後を含めた購入のプロセスにおける体験
- 商品やサービスを使ったときに感じられる物質的、金銭的、心理的な体験
- 商品やサービスを提供している企業に対する印象
物質的、金銭的などの定量的な価値のみではなく、心理的な満足度、印象などの定性的な価値も重視されています。
ユーザーエクスペリエンス(UX)との違い
カスタマーエクスペリエンスと似たユーザーエクスペリエンスという言葉があります。UXと略されます。
CXはUXを抱合したもので、UXは個々の体験のことを指し、CXは体験全体ことを指します。UXは「商品購入前のエクスペリエンス」「商品購入後のエクスペリエンス」など1つ1つを指し、CXは「購入プロセス全体を指す」ということです。
カスタマーエクスペリエンスでの感情価値
カスタマーエクスペリエンスには感情的価値が多く、向上させるためには理解しておくことが必要です。それぞれの価値についてご紹介します。
感覚的経験価値
人の視覚、味覚、聴覚、触覚、嗅覚への価値のことです。実際に体験していなくても「美味しそう」「いい香りがしそう」などの感覚も当てはまります。
例えば
- コンセプトに合った外観、内装、家具などの視覚
- メロディーや元気なあいさつ、食べ物が焼ける音などの聴覚
- コーヒーやアロマの香りなどの嗅覚
- おいしい、甘い、などの味覚
- 触り心地の良い服などの触覚
これらの価値が高いほど、リピートしてくれる人が増える傾向があります。
情緒的経験価値
顧客の感情にアピールすることで顧客が抱く情緒的価値があります。商品やサービスよりも購入前の親切な説明や購入後のサポートなどに感動して企業の評価があがる体験のことです。
例えば
- 親切な接客
- きれいなトイレ
- 手厚いサポート
- 商品の感動ストーリー
顧客に感動を与えることでリピーターになってくれることもあるでしょう。
認知的経験価値
顧客の探求心や自尊心、満足感にアピールすることで生まれる価値のことです。顧客が持つ知的好奇心に対し、情報や商品を与えることが必要です。
例えば
- おもしろい
- 勉強になる
- 初めての体験
- わくわく感が得られる
自尊心が刺激されリピーターになってくれる可能性が高まります。
肉体的経験価値
肉体的経験価値は、体を使った経験による影響や変化全般のことです。
例えば
- 日常生活や仕事が効率的にできるようになる体験
- 健康的な生活に改善される体験
- 新しい生活習慣になるような変化
肉体的経験価値を向上させれば顧客のライフスタイルに馴染むのでリピーター増加に繋がります。
カスタマーエクスペリエンスが注目される背景
カスタマーエクスペリエンスが注目されているのはインターネットが広まったことによる顧客のデジタルシフトが要因の一つです。
従来は企業と顧客の接点は実店舗や広告、口コミ、コールセンターなどでした。企業は一方的で長期的に商品やサービスの情報を提供し続け、購入に結びつけていました。
しかしインターネットが広まったことにより変化が生まれたのです。
企業と消費者接点のデジタルシフト
デジタルシフトの事例を紹介します。
- 「検索」「SNSの活用」などの顧客行動により、企業が情報の発信を待たずにほしい情報を得ることができるようになった
- 企業が顧客に情報を与える前に、顧客が商品を購入していることが起こるようになった
- ブログやSNS等で顧客側が情報を発信するようになった
このような変化により企業は情報発信の優位性がなくなり、インターネットが広まったことによる変化に応じた他社との差別化を図る必要が出てきました。
カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリット
向上のメリットを上げていきます。
顧客からの紹介に繋がる
顧客から良い口コミをWEB上にアップしてもらい、顧客からの紹介に繋がります。
パーソナルデバイスの発展により顧客自身がいつでもどこでも商品やサービスについての情報を発信するようになりました。
顧客がWEB上でよい口コミを書くことで宣伝効果があり、売り上げ等にプラスに働きます。
また、口コミのみではなく、直接知り合いの企業または知人を顧客として紹介してくれる可能性もあります。
ブランディングの強化
ブランディングの強化ができます。企業のひとつの商品やサービスの購入プロセスに満足すると別の商品やサービスにも興味を持ち、購入につながる可能性があります。
企業の商品やサービスを横断的に使用してもらうことで企業自体のブランドイメージが向上します。ブランディングを強化することで商品やサービスの価値を高め、売り上げアップに繋がります。
解約防止、リピーター獲得に繋がる
カスタマーエクスペリエンスを向上させることで、顧客はリピーターになってくれやすくなります。リピーターは新規顧客への積極的な販促をせずに商品やサービスを使用してくれますし、良い口コミを広めてくれます。多くのリピーターを獲得することで売り上げ獲得に繋がります。
またリピーターが増えることは解約防止をすることでもあります。
新規顧客を獲得し、リピーターにならなかった場合は新規顧客の獲得に多くのコストがかかってしまいます。カスタマーエクスペリエンスを向上させることでリピーター獲得と解約防止が叶います。
カスタマーエクスペリエンスを向上させる方法
向上させる方法を紹介します。
顧客データの整備、管理
顧客のプロフィール、行動履歴、検索履歴などの情報を収集し、見込顧客、新規顧客、リピーターそれぞれの分析をすることが重要です。顧客データを適切に管理し、向上に繋げましょう。
ペルソナ、カスタマージャーニーマップを作成する
カスタマーエクスペリエンスを向上させるために一番必要なのは顧客の視点になって考えることです。ペルソナとカスタマージャーニーマップを作成し、顧客視点で考えてみましょう。
ペルソナ
ペルソナとは企業の商品やサービスを使用してくれる顧客像のことです。ターゲットを明確にするために重要です。ペルソナを作成するときは企業の想定のターゲットだけでなく、既存の顧客の情報や市場の情報も考慮し、実際の顧客を捉えられるようにしましょう。
ペルソナは年齢や性別だけでなく、年収や家族構成、文化習慣などあらゆる角度から分析してより具体的なペルソナを作成しましょう。
ペルソナ作成のポイント
- 特定する
セグメント分けを行い、属性を特定する
- 集計
セグメントを構成する人物像の最小数を決める
- 描写
ターゲットの様々なデータをまとめ、より具体的に描写する
- 検証
作成したペルソナを事業啓作と照らし合わせる
- 活用
完成したペルソナを企業戦略に活用する
カスタマージャーニーマップ
上記で作成したペルソナを使用し、ペルソナの行動を理解するためカスタマージャーニーマップを作ります。カスタマージャーニーマップを活用し、顧客の企業の接点から購入後までの経路を整理し、理解できます。
現状の見直し、方針の決定
ペルソナとカスタマージャーニーを作成し、それをもとにデジタル戦略をつくり、改善、商品のアップデートに繋げましょう。社内で共有することで社員が同じ方向を向き仕事ができます。改善を繰り返し、よりよいものに仕上げていきましょう。
運用、改善
PDCAを回し改善を重ねることが大切です。
PLAN:ペルソナやカスタマージャーニーを用いて目標設定をする
DO:目標を実行する
CHECK:目標の達成率を評価
ACTION:具体的な改善点をさがす
カスタマーエクスペリエンスの向上に活用できるツール
ツールを活用して向上させることもできます。
マーケティングオートメーションツール
カスタマーエクスペリエンスを向上させるためには膨大な顧客データの管理やシナリオの作成、最適なマーケティング戦略を実行することが必要になります。マーケターの手で行うのではなく、マーケティングプロセスの効率化を図り、MAツールを活用することをおすすめします。
MAはマーケティングオートメーションの略で、マーケティング業務を自動化するツールのことです。情報の収集やキャンペーンメールなど自動的に行うことができます。
MAにより効率化できるマーケティングプロセスは以下の通りです。
- 情報収集、蓄積、管理。
- 顧客の行動を把握しスコアリングして興味関心の高さを可視化
- 顧客の行動にあわせたコンテンツや広告の表示
- 施策の結果検証
チャットボット
会話式で顧客対応ができ業務改善や顧客満足度向上が期待できます。
チャットボットとは「チャット」と「ロボット」を組み合わせて作られた言葉です。
人ではなく、ロボットと会話することができます。
LINEやECサイトで「何か質問はありませんか?」とチャット画面が出てくるサイトが増えています。これがチャットボットの一例です。
チャットボットにはAI型とシナリオ型があります。
AI型はAIが搭載されており、フリーワードで質問の受け答えが可能です。機能学習することができ、精度が向上します。
シナリオ型は最初に設定したワードやルールに従って受け答えするチャットボットです
チャットボットとは?AIとの違い・種類・選び方など、総まとめ
カスタマーエクスペリエンスを向上させた事例
事例を2件紹介します。
スターバックス
世界的に有名なシアトル系コーヒーショップを展開しているスターバックス。
スターバックスは、単にコーヒーの販売数を増やすことではなく、顧客の心や生活を豊かにする体験を提供することを心がけています。スタッフはマニュアル的接客を好まず、それぞれのスタッフが顧客に合わせた接客をしています。
購入した商品のカップに手書きのイラストや言葉を書く対応で、顧客に感動を与えています。また店舗を「サードプレイス」(家でも職場でもない第三の場所)と位置付けており、店舗設計やインテリア、BGM選曲も徹底しています。
このような姿勢が「非物質的な価値」でカスタマーエクスペリエンス向上の企業といえます。
東京ガス
首都圏を中心に都市ガスや電気などを販売する東京ガス。
東京ガスはエネルギーの小売り自由化をきっかけに、より顧客に選ばれる会社づくりをめざしています。その施策として一般家庭向けポータルサイト「MyTOKYOGAS」の新版を行いました。
データ分析を行い、顧客を属性に分け、それに応じたコンテンツの配信やキャンペーン
を行いました。
そうすることで顧客と関係が深くなり、会員増加に繋がりました。
データを活用し、顧客との関係を深めたカスタマーエクスペリエンス向上の企業です。