アカウントベースドマーケティングとは、企業が売上の最も期待できる顧客に対して効率的にアプローチを行うマーケティング手法になります。
対象企業を絞り込んでマーケティングを行うことで、高い費用対効果やコストの削減などのメリットが期待できます。
この記事では、アカウントベースドマーケティングの説明をはじめ、アカウントベースドマーケティングが注目される背景・アカウントベースドマーケティングのメリット・アカウントベースドマーケティングの実施方法・アカウントベースドマーケティングに活用できるツールなどについて詳しく説明していきます。
アカウントベースドマーケティングとは
アカウントベースドマーケティングとは、企業が優良な顧客に対して効果的にアプローチを行う手法のことで、アカウントベースドマーケティング(Account-Based Marketing)を略してABMと表記することもあります。
つまり、幅広い顧客に対して均一に対応するのではなく、売上が最大化する顧客を見極めて、戦略的・組織的にアプローチするということです。
ABMが注目される背景
AMBが注目される理由には、以下の3つの理由があります。
①意思決定方法の変化
②マーケティングと営業の連携の問題
③テクノロジーの進化
意思決定方法の変化
経営者・役員が意思決定を行うトップダウン方式は、企業=経営者や役員という構造だったため、リード自体を管理しておけば制約に結びつきました。
一方で、ボトムアップ方式では意思決定に関わるメンバーが複数名に増えることになります。
この場合ですと、個人をターゲットにしていると成約に結びつけることができません。
企業の業種・規模などの情報を集めて、組織全体をマーケティングの対象と考えることが重要となってきました。
マーケティングと営業の連携の問題
リードのみに対するマーケティングの場合、対象となる企業の予算・自社の商材との相性までを考慮することが難しくなります。
営業に引き継いだとしても、案件化されたり、受注に繋がらないという理由で受け取りを拒否されたり、フォローされないままになっている現状がありました。
一方で、アカウントベースドマーケティングの場合では、営業とマーケティングが営業戦略を共有した上で、対象企業の絞り込みが行えます。
この方法で獲得したリードはすでに合意済みのものになりますので、営業のフォロー率も格段に上昇します。
そのため、今まで問題となっていたマーケティング部門と営業部門の連携の悪さを改善するために、アカウントベースドマーケティングが注目されるようになりました。
テクノロジーの進化
PCやインターネットの普及によって、顧客とのやり取りをメール・チャットなどのデジタル領域で行うようになりましたので、情報をデータとして収集できるようになっています。
さらにSFAツール(営業支援ツール)・MAツールなどが開発されたことで、アカウントベースドマーケティングを実施できる環境が整ってきました。
デマンドジェネレーションとの違い
ABMとデマンドジェネレーションは比較して語られることも多いですが、両者の違いについて解説していきます。
デマンドジェネレーションは、リードジェネレーション(見込み顧客の新規獲得)→リードナーチャリング(獲得した顧客の育成)→リードクオリフィケーション(育成により受注確度の高い顧客の選別)という3つの一連の活動を経るマーケティング手法になります。
マーケティング部門が主体となって、事前にセグメントされた顧客に対して幅広いアプローチを行い、受注確度を高めていくことを目的としています。
一方でABMは売上の最大化を目的としており、事前に対象となる企業を選んだ上で、マーケティング部門・営業部門が一丸となって、様々な手段でアプローチを行っていきます。
上記のように、デマンドジェネレーションとABMは目的や対象が異なる手法となります。
アカウントベースドマーケティングのメリット
アカウントベースドマーケティングのメリットとして、「高い費用対効果」「リソースを集中させられる」「PDCAを加速出来る」「効果計測が行いやすい」「営業部門とマーケティング部門の連携」の5つの理由が挙げられます。
高い費用対効果
ABMは高い費用対効果を期待できます。
ABMに取り組むことでROIが向上します。
売上が平均顧客単価よりも100倍の企業があれば、他の企業よりも10倍のリソースを割いても十分なROIになります。
必要なところにコストを投下して無駄を削減していくことで、高い費用対効果を期待できるでしょう。
リソースを集中させられる
対象企業の絞り込みを行い、最適なマーケティングを行うことで、人材・お金などのリソースを集中させることができます。
幅広いリードにアプローチを行うマーケティングオートメーションと比較して、無駄な施策を削減できます。
PDCAを加速出来る
少数の顧客をターゲットにしますので、マーケティング・営業の仮説や実施・検証等が容易に行えるようになり、PDCAサイクルを回すスピードを加速させることが可能です。
効果計測が行いやすい
ABMは効果測定が行いやすい点もメリットといえます。
対象となっているアカウントの企業へのマーケティングに対する効果測定を行う際、他の成果が出ているアカウントと比較して違いを分析することができます。
アプローチ先・アプローチの方法などに改善の余地があるのか、ターゲット自体の設定を見直す必要があるか等、これらを確認することでABMの精度は向上していきます。
営業部門とマーケティング部門の連携
マーケティング部門と営業部門が同じ顧客志向に基づいたマーケティング施策を行うことにより、両方の部門の目的が一致する企業に効果的なアプローチを行うことが可能になります。
つまり、営業部門とマーケティング部門がちゃんと連携した状態でマーケティング施策が行えるようになるということです。
営業部門とマーケティング部門でしっかりと連携が行えていますと、コスト削減・売上向上を目的としているマーケティング部門と現場で成約していく営業部門が数字を元に、追う案件・追わない案件を管理することが可能です。
また連携できていますと、自社内で一貫したアプローチを行うことができます。
アカウントベースドマーケティングの実施方法
アカウントベースドマーケティングの実施方法ですが、以下の4つの流れで行うことができます。
①対象アカウントの設定
②接点の確認
③プランの策定
④アプローチの開始
以下で詳しく説明していきます。
対象アカウントの設定
最初に「自社にとって注力してアプローチをすべき企業(アカウント)はどこか」を企業名レベルでリストアップしていきます。
リストアップの方法の手順は以下の通りです。
①自社の取引企業のうち、8割以上を占める上位2割の企業の規模・地域・業種などの属性を分析する。
②同じ属性で尚且つ、自社の顧客ではないアカウントを抽出。
③見込まれる取引の規模・市場の影響度・リピーターになる可能性・平均的な利益幅に比べて大きくなる可能性等を考慮する。
接点の確認
対象となるアカウント内の意思決定者との顧客接点の有無を確認します。
顧客接点があれば直接的なアプローチを行えますが、ない場合には接点を発掘する手段が必要になります。
BtoB商材である場合には、サービスの導入の際に意思決定に関わる人間が多くなりますので、アカウント企業の意思決定者の人数・どの部署に存在しているのか等をイメージしておく必要があります。
接点の創出
接点を作るためには、展示会での名刺獲得・コールドコールなどが一般的な手段といえるでしょう。
その他の考えられる方法は以下の通りです。
①IPアドレスで対象企業のみバナーの配信を行う。
②Facebook広告等で認知を高め、ダイレクトマーケティングで刈り取る。
重要人物の洗い出し
対象企業を選択しましたら、企業内の意思決定者などの重要な役割を行っている人物の特定を行います。
重要人物と接点がない場合、営業部門でその人物の調査を行ったり、社外専門業者から情報を購入するなど、必ず特定しておきましょう。
プランの策定
企業内の重要人物にとって価値があると思って頂けるコンテンツ・メッセージを提供することで、自社のサービスに関心を持ってもらえる可能性は高くなります。
どのようなコンテンツを作成し、どのようなアプローチを行っていくかの「プランの策定」を行っていきましょう。
最適なアプローチチャネルも検討
どんなプランを策定するかを決めましたら、次に最適なアプローチを行うチャネルも検討していきましょう。
企業内の意思決定者・インフルエンサーが使い慣れている・よく見ているチャネルにすることで、内容を見て頂ける可能性が高くなります。
最適なアプローチチャネルとして考えられる項目は以下の通りです。
①Web
②Eメール
③モバイル
④紙媒体
アプローチの開始
接点の創出や整備等が完了しましたら、いよいよアプローチを開始していきます。
ABMは直接的なアプローチによって、接触頻度を高めることが求められます。
例を挙げていきますと、インサイドセールスによるメールや電話等、状況によってはフィールドセールスによる商談を重ねることも効果的です。
MAツールを利用して、メールマーケティング・セミナー集客によって購買意欲を刺激する、所謂ナーチャリング活動もこのタイミングで行うと効果的です。
ABMのために活用出来るツール
ABMに活用できるツールとして、「名刺管理システム」「MAツール」「SFA、CRMツール」が挙げられます。
以下で詳しく解説していきます。
名刺管理システム
特に営業部門が多くもらう機会があり、机の中に入れ込んでしまいがちな「名刺」。
今現在では名刺の情報を一元管理し、企業の情報資産として取り扱うことができるようになりました。
営業部門のどの担当者がクライアント企業の誰とお会いしたのか、接点のない部門はどこなのか等、ターゲットとなる企業に対して組織的なアプローチを行うための土台作りを効率的に行うことが可能です。
MAツール
時代が変わっていく中で、顧客との初回の接点が飛び込み営業やコールドコールなどの方法から、Webを中心としたリード獲得に変わってきています。
そういったリード情報を一元管理して、企業ごとの見込み度合い把握に利用できるのが「MAツール」になります。
通常ですとリード情報として登録される場合、フォームへの入力等ユーザーによる能動的な情報入力がきっかけになることが多いですが、その場合には㈱などの略語・アルファベットとカタカナの混在など、表記のゆれが存在してしまいます。
MAツールはそれぞれのリードの表記ゆれを企業ごとに紐づけて、整理する機能が搭載されています。
企業名・業種・売上/従業員規模といった企業属性を付与することも可能です。
このような機能を活用し、それぞれの企業のポテンシャルを把握して、対象となるアカウントの整理を効率化することができます。
MAツールについてさらに詳しく知りたい方は、以下のURLの記事をご覧ください。
MAツールの導入に掛かる費用は?相場から期間までを解説 | Hummingbird (humming-bird.info)
SFA、CRMツール
SFA、CRMツールの役割は、「各企業へのアプローチの可視化」を行うことです。
いつ・誰が・誰と・どんな会話や商談を行ったのか。
商談がどのフェーズになっているのかといった営業活動の状況、取引が発生している場合にはその取引額・サービスの継続状況等、商談→受発注→取引継続を全社で一元管理することができます。
CRMについてさらに詳しく知りたい方は、以下のURLの記事をご覧ください。