日本では、電気製品を巡るトラブルや事故を防ぐために、国の安全基準が設けられています。
その安全基準を満たしていることを示すPSEマークは、電気製品を国内で販売する場合、海外から輸入したものであっても、販売事業者がこのマークを表示する必要があります。
ではそのPSEマークを表示するためには、どのようなことをしなければならないのでしょうか。
今回はPSEマークについて、どのような製品が対象となるのか、その表示方法や注意点など、越境EC事業者や輸入販売をしている事業者が知っておくべき情報を詳しく説明していきます。
PSEマークとは
まずPSEマークとは、「Product Safety Electrical appliance&materials」の略であり、電気用品安全法により、約460品目の電気用品に表示が義務付けられているマークのことです。
このPSEマークが付いている=国の安全基準を満たした製品であるということを示しています。
PSEマークは2種類
引用:消費者庁| 電気用品を製造・輸入、または、 販売される事業者の皆様へ
PSEマークには2種類あり、電気製品に求められる必要な安全性によって分類されています。
それぞれについて詳しく説明していきましょう。
特定電気用品(ひし形のPSEマーク)
特定電気用品とは、特に高い安全性が求められる電気製品です。
460品目あるうちの116品目が該当します。
主に故障すると漏電・感電の恐れがあるものや、検査するのに専門業者を必要とするもの、高齢者や小さな子どもが使うものが挙げられます。
例としては次の通りです。
・マッサージ器、家庭用治療器
・電気温水器、ポンプ
・子どもが使う電気を使用したおもちゃ
・電気用品の部品(電線、ヒューズ、アダプタ、コンセントなど)
このひし形のPSEマークは、国が定めた専門機関でのみ検査することができ、そこで基準をクリアすることではじめて交付されます。
それ以外の電気用品(丸形のPSEマーク)
それ以外の電気用品とは、特定電気用品に該当するもの以外の製品で、特定電気用品ほどの危険性はないが安全性を保証しておかなければならない製品のことを指します。
460品目中341品目が該当します。
主に一般的に家庭で用いられる電気製品が挙げられます。
例としては次の通りです。
・家電製品(冷蔵庫、電子レンジ、扇風機など)
・電熱機器(電気カーペット、電気毛布など)
・照明器具(LED、電灯など)
・リチウムイオン蓄電池
いつからある制度か
PSEマーク表示の義務化が初めて施行されたのは2001年です。
それまでは「電気用品取締法」で製品の安全確保について定められていましたが、手続きの複雑さなどにより「電気用品安全法」へと改正され、猶予期間を5年間設け、2007年から本格的に施行されました。
必須化された背景
そもそもPSEマークの表示が必須化されたのはなぜでしょうか。
それは、PSEマーク表示が義務化される前までに、数々のトラブルが起きるようになったからです。
火災事故の多発
中でも大きな被害となった事例として、火災事故が挙げられます。
その原因は、品質の悪い電気製品の故障によるものが多く、バッテリーの異常発熱による発火や、安全対策不足による過充電であることがわかりました。
モバイルバッテリーの事故も
普段から使われているモバイルバッテリーからの発火が原因で起きる事故も多発し世間を騒がせました。
アマゾン・ジャパンやアマゾン・ドット・コムに損害賠償請求があった件もこの事故が原因です。
このような危険性が重要視され、国が規制に乗り出したという背景があります。
安全性を確認できない製品は、火災だけでなく漏電・感電のリスクも高くなります。
自社で取り扱う製品の安全性の確保は、販売責任者としてしっかり行うようにしましょう。
電気用品安全法
電気用品安全法は、上記のような電気製品の使用上のトラブルや事故を防ぐため、安全確保について定められた法律です。
これは日本国内においての法律となるため、海外輸入品が日本での安全基準を満たしているかどうかは検査してみなければ分かりません。
特に中国製品を中心として、海外製品を取り扱う事業者は、速やかに輸入した製品にPSEマークを表示する手続きを行いましょう。
対象外の商品
電気製品へのPSEマークの表示は義務付けられていますが、中には表示の義務の対象外となっている製品もあります。
ここでいう、特定電気用品116品目と特定電気用品以外の341品目に該当しない製品ですね。
具体的には次のようなものが挙げられます。
・蛍光灯電線
・フロアダクト
・温度ヒューズ
・光電式自動点滅器
・ミシン用コントローラー
詳しくは、経済産業省のHPで確認できます。
PSEマークの表示が必要かどうかの判断が難しい場合には、問い合わせてみることをおすすめします。
PSEマークを取得していない場合
PSEマークは国が許可をしたり認証したりするものではありませんが、事業者が責任を持って届出を行い、電気用品安全法による安全基準を満たした商品として表示する義務があります。
この工程を行わず、PSEマークを取得していない、または安全基準を満たしていないのにPSEマークを表示して販売していると、違法行為を行ったとして1年以下の懲役や100万円以下の罰金などの罰則が課されます。
法人であればさらに大きな額の罰金が課される場合もあります。
行政処分を受ける可能性も
違法行為の内容によっては行政処分を受ける可能性もあります。
大手ホームセンター「コーナン」は、2014年に大規模なPSE違法行為により事実上の販売停止処分が課されました。
その違反した内容を具体的に挙げてみます。
・輸入事業者として届出が必要な電気用品の区分に対して届出が行われていない。
・法令で定められているマークの表示がされていない
・製品の技術技術に適合していないものがある
このような違反内容の販売製品は1623品にものぼり、行政処分を受けたことで企業の信頼を大きく失いました。
メーカー、販売店ともに罰則
このような罰則は、メーカーと販売店の両方が対象となります。
国内においてPSEマークの表示がない製品は、製造・輸入・販売の全てができないようになっています。
販売をする目的で商品を陳列するだけでも罰則の対象となりますので注意が必要です。
法人からの買取は出来ない
PSEマークのない製品を個人から買い取ることは可能ですが、法人から買い取ることは違法行為です。
どちらにおいても、買い取った製品をPSEマークのないまま販売しないことが前提です。
こういった線引きもしっかりと念頭に置いておきましょう。
商品回収等のコストがかかる可能性
PSEマークの表示義務の違反は、「コーナン」のように企業の信頼を失うだけではなく、違反の対象となる商品の回収にも大きなコストがかかります。
販売停止にもなれば損失しか残りません。
近年ではSNSが浸透しているので、企業の信頼に関わる情報はすぐに世間に広まります。
「炎上」などは専門の弁護士でないと対応できない場合もありますので、その対応にもコストがかかると思っておいた方が良いでしょう。
日本の規格に適さない可能性がある
輸入製品を取り扱う業者であれば念頭に置いておかなければならないのが、輸入製品は日本の電圧や電力に適しておらず、使用できない可能性が高いという点です。
電圧が日本のものに適合していなければ電源のショートや発火による事故が起きる可能性が高まります。
そもそもPSEマークは日本国内の法令に基づくものですので、海外の製造事業者は表示することができません。
輸入製品が日本の安全基準を満たしているかどうかは、輸入事業者や輸入製品の販売事業者が責任を持って確認し、PSEマークを表示しましょう。
罰則や行政処分となれば、事業者としての信用にも関わってきます。
信用の低下や商品回収コストなど、デメリットしかありません。
このような事態を招かないためにも、PSEマークや電気用品安全法について正しく理解し、きちんと法令を遵守して運営していくようにしましょう。
PSEマークの取得方法
それでは、PSEマークはどのようにして取得するのでしょうか。
これからPSEマークを取得するという事業者の方はぜひ参考にしてください。
①対象商品がPSEマークの表示義務の対象かどうかを確認する。
まずは販売予定の商品にPSEマークの表示が必要かどうかを確認しましょう。
下記リンクの経済産業省のホームページで品目の確認ができます。
判断が難しければ直接問い合わせてみても良いでしょう。
②事業開始届を提出する。
事業を行う管轄の経済産業局へ事業開始届を提出しましょう。
事業開始の30日前までには届出が必要です。
過去に提出していれば、有効期限はないので再度提出する必要はありません。
製造・輸入ごと、電気用品の区分ごとに届出が必要であるため、過去にどの内容で届出ているかを確認しましょう。
③対象の商品が基準に適合しているか検査を受ける
特に特定電気用品であれば、専門機関で検査を受ける必要があります。
特定電気用品でなければ、基準を満たしていることを示す資料を提出します。
④検査記録を作成し保存する。
登録機関による検査結果や自主検査結果は、検査記録として保管する義務があります。
経済産業省の立ち入り検査が行われ、検査記録の提出を求められる場合があります。
商品を取り扱っている間は、その商品の検査記録を保管しておくことが望ましいでしょう。
⑤製品にPSEマークを表示する。
検査が済んだらPSEマークを表示しましょう。
PSEマークには、以下の表示が必要です。
・PSEマーク
・事業者名(特定電気用品の場合は登録検査機関名も)
・定格
これらが表示されて初めて販売開始できます。
PSEマークと類似のSマークも
PSEマークの他にも、電気製品に表示が必要な類似のマークがいくつか存在します。
どのマークも電気製品を取り扱う上で知っておきたいものです。
どんなマークがどのような意味を持つのか理解を深めましょう。
◯PSCマーク
PSCマークは「消費生活用製品安全法」によって表示が義務付けられているマークです。
ユーザーの命に関わる、もしくは身体に危害が及ぶ恐れが多い製品で、その安全基準を満たしていることを示します。
具体的には次のような製品が該当します。
・家庭用圧力鍋や圧力釜
・石油ストーブや石油給湯器
・登山用ロープ
・乗車用ヘルメット
・乳幼児用ベッド
・浴槽用温水循環器
・ライター
◯JET
引用:電気製品の安全マーク – JET 一般財団法人 電気安全環境研究所
JETはSマークと呼ばれ、対象の電気製品の製造者や輸入業者が安全であることと、第三者がその安全性を確認していることを示しています。
PSEマークとSマークの両方が表示されていると、より安心して使用することができますね。
◯技術基準適合証明マーク
引用:外国製無線機を使用する場合は技適マークを確認してください – 総務省
流通が活発化し、海外製品をよく目にするようになりましたが、日本と海外では周波数割り当てなどの電波使用基準が異なります。
このマークは日本国内で合法的に使用できる機械であることを示しています。
外国規格のベビーモニターやコードレス電話機などは特に注意が必要です。
◯FCC
引用:FCC認証とは(アメリカ・カナダ) – EMC規格 基礎編 – CEND.jp
FCCとは、アメリカ合衆国の米国連邦通信委員会のことを指し、アメリカ合衆国で通信や電波の規制を行う連邦政府機関でのことをいいます。
周波数の割り当てや無線機器・電子機器の規制をしており、このマークが表示されていると、無線を含む通信機器が定められた制限を下回っていることが認証されているということを示します。
パソコンやスマートフォン、モバイルバッテリーなどがこの対象となります。
◯CE
引用:欧州CEマーキング | 世界各国の規制・認証制度 | 日本認証株式会社
CEマークは、対象の製品がEUの基準を満たしていることを示すマークです。
無線などを含み、製品の安全性や環境性能基準、有害物質の使用制限などが検査の対象となります。
イタリア・イギリス・ドイツなどEU加盟国で流通する製品は表示が義務付けられています。
偽物のPSEマークに気を付けよう
ここで注意しなければならないのは、偽物のマークが表示されていることもあるという点です。
製品に偽物のマークを表示し、基準を満たした製品であるとして販売されていることもしばしば。
一見すると信用してしまいがちですが、本物のマークには届出事業者名や定格が記載されているので、しっかりと見極めることが重要です。
引用表示 – 届出・手続の流れ – 電気用品安全法(METI/経済産業省)
法令を遵守した上で事業運営をしていきましょう。