EC化率とは全商取引の売上の中で、ECの売上の割合を示す指標となっています。
新型コロナウイルスの流行が要因となり、日本を含む世界中でEC化が進んでいます。
この記事では、EC化率の説明をはじめ、EC化率の計算方法・日本のEC化率・日本のEC化率が伸びている理由・世界のEC化率・分野ごとのEC化率などについて詳しく説明していきます。
EC化率とは
(引用ファッション通販 |ワールド オンラインストア |ワールドオンラインストア (world.co.jp) :)
EC化率とは、「全ての商取引でECの市場規模を占める割合のこと」であり、簡単に説明しますと「インターネットを通じて商品を購入した割合がどの程度か」を示した指標になります。
つまり、対面販売・店舗販売・電話やFAX・ECなどの全ての商取引のうち、「ECが占める割合」を示しているということです。
経済産業省には、以下のように定義されています。
「EC化率とは、全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を指します。EC化率の算出対象は、BtoC-ECにおいては物販系分野とし、BtoB-ECにおいては業種分類上「その他」以外とされた業種としています。」
(引用:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省) )
EC化率の計算方法は以下の通りです。
・EC化率=EC総額÷全商取引総額
以下で具体的な計算事例をご紹介していきます。
EC化率の計算例
先程の説明だけでは分かりにくいと思いますので、EC化率の計算方式に数字を当てはめて実際に計算していきましょう。
例えば、ある産業では「全商取引総額が120億円」だったと想定します。
120億円はECだけでなく、店舗販売・対面販売・電話・FAX等のすべてを含んだ総額になります。
この中でECを利用した取引は36億円だったとします。
EC化率=EC総額(36億円)÷全商取引総額(120億円)=30%
となりますので、この産業のEC化率は30%となります。
上記の計算方法で、その産業・市場ごとの「EC化率」を計算することが可能になります。
計算した結果で以下のことが分かります。
・EC化率が高い=ネット販売が活発化している
・EC化率が低い=ネット販売が進んでいない・実店舗の売上が主流
日本のEC化率
日本国内のEC化率について、「BtoB」「BtoC」それぞれについて詳しく解説していきます。
BtoB
(引用:20220812005-h.pdf (meti.go.jp) )
経済産業省が発表した内容によると、日本国内のBtoBのEC化率は2021年で35.6%となっています。
BtoCの市場よりもEC化率は大きく上回る結果となっており、全商取引の約1/3がEC化されています。
市場規模は約372兆円となっており、EC大国である中国のBtoC市場よりも高い水準となっています。
EC化率・市場規模ともに成長しており、今後の伸び方に目が離せません。
上記のBtoBのEC化率はElectronic Data Interchange(EDI)と呼ばれる専用回線を用いた企業間データ交換を含んでいる点に注意しないといけません。
EDIはネットが台頭する前から活用されていますので、EDIを除いたBtoBの実際のEC化率は少し低くなります。
旧システムが活用されたEDIで前時代的な処理が行われている企業が多いため、その点については今後の課題といえるでしょう。
BtoC
(引用:20220812005-h.pdf (meti.go.jp) )
同じく経済産業省の発表した内容によると、BtoCのEC化率は2021年で8.78%となっています。
市場規模は20兆6,950億円と大きいですが、BtoB市場と比較しますと18倍以上の差があります。
ECサイトを利用して通信販売で商品を購入したり、デジタルコンテンツを利用することが一般的な感覚になったと思うユーザーも多いですが、実は全商取引の1割に満たない結果になっています。
BtoCのEC化率はユーザーの感覚よりも進んでいないのが現状です。
上記の内容は全分野を対象としていますが、4割ほどEC化が進んでいる分野もあれば、3%未満と進んでいない分野も存在します。
日本のEC化率が伸びている背景
日本のEC化率が伸びている背景として、「スマホの浸透」「ECツールの拡大」「ネット広告の伸長」「巣篭もり需要」などの4つの理由が挙げられます。
以下で詳しく解説していきます。
スマホの浸透
EC化率が伸びている要因の一つとして考えられるのが、「スマホの浸透」です。
国民の多くがスマホを持つ時代になり、ECの利用率が高くなってきました。
欲しい物を探す際にパソコンを起動して、注文情報を入力して決算を行うよりも、手元のスマホを使用して好きな時間・好きなタイミングに商品を購入する方がハードルは低くなるといえるでしょう。
その他にも、インフルエンサーが使用している商品(ファッション・コスメ等)を購入したいと考えるユーザーも多く、若年層を中心にEC市場は活発化しています。
ECツールの拡大
ECサイトを利用するユーザーが増えていますので、EC事業者を支援するツール・システムも年々増加しています。
例を挙げますと、従来であればECサイトで商品を購入する際には、決済情報を一から入力する必要がありました。
しかし、Amazonアカウントと連携を行えば、手間をかけずにスムーズに商品を購入できます。
カゴ落ち率を抑えることができ、結果として売上を伸ばしやすくなります。
専門知識を有していない事業者でもECを始めやすいように、使いやすさを追求しているECツールも開発されています。
ネット広告の伸長
スマホが普及して、多くのユーザーがECを利用するようになった昨今、EC化率が伸びている要因の一つになっているのが「ネット広告」です。
企業がネット広告を利用することで、ユーザーに商品の購入を促すことができます。
ネット広告は様々な種類があり、企業がターゲットにしているユーザー層に商品を宣伝することができます。
ネットビジネスが大きく発展した理由に「ネット広告」が関係していると言っても過言ではありません。
ネットビジネスが儲かる要因を作り出した結果、EC化率が向上したと考えられます。
巣篭もり需要
2020年に流行した新型コロナウイルスが原因となって、長期に渡って国民の生活様式が大きく変わりました。
外出自粛・リモートワークの推奨などによって、自宅で過ごす時間が増えたことにより、「巣篭もり需要」が大きく拡大しました。
結果として、ECサイトを利用するユーザーが増加しました。
状況が落ち着いてくると、全体的に伸びは鈍化する可能性もありますが、今の時点でECを敬遠していたユーザー層を取り入れることができましたので、今後も成長は拡大していくと考えられます。
世界のEC化率
(引用:20220812005-h.pdf (meti.go.jp) )
経済産業省の市場調査を確認しますと、2021年時点で世界全体のBtoC市場の合算したEC化率は19.6%という結果が出ています。
世界的に流行した新型コロナウイルスの影響で需要が増加し、EC化率の増加に繋がったと考えられます。
市場規模についても、2021年時点で4.92兆USドルとなっており、2025年には7.39兆USドル・EC化率は24.5%まで増加すると言われています。
特にEC化率の進んでいるアメリカと中国の内容を拝見しましょう。
①アメリカ
アメリカのEC化率は2021年時点で13%台で推移しています。
②中国
中国のEC市場規模は2021年時点で2兆4,886億USドルとなっており、前年比の15%増加しています。
中国のEC化率は日本よりも進んでいるため、市場規模も約12倍となっています。
日本より進んでいる理由
アメリカと中国のEC化率が日本より進んでいる理由は以下の通りです。
①国の人口が日本よりも多い
②国土が大きく、実店舗での買い物よりもネットの方が便利だから
③EC活用にインフラ整備が進んでいる
中国では「現金よりもオンライン決済の方が確実・安全」という認識が広まっており、露店でもスマホ決済・QRコード決済しかできない場合が多いといえるでしょう。
中国の「国」としての事情もありますが、様々な要因によってEC化が進んでいるといえるでしょう。
分野ごとのEC化率
分野ごとのEC化率は以下の通りです。
・EC化率が高い業種
業種 | 市場規模 | EC化率 |
事務用品・文房具 | 2,264億円 | 41.75% |
書籍・映像・音楽ソフト | 1兆3,015億円 | 34.18% |
生活家電・AV機器・PC・周辺機器 | 1兆8,239億円 | 32.75% |
・EC化率が低い業種
業種 | 市場規模 | EC化率 |
自動車・自動2輪・パーツ | 2,396億円 | 2.88% |
食品・飲料・酒類 | 1兆8,233億円 | 2.89% |
化粧品・医薬品 | 6,611億円 | 6.00% |
以下で、「物販」「サービス」「食品」「デジタルサービス」の内容について細かく説明していきます。
物販
2021年の物流分野のBtoCのEC市場規模は13兆2,865億円となっており、前年から1兆532億円も増加しています。
EC化率は8.78%となっており、0.7%増加しています。
2020年は新型コロナウイルスの流行に伴い、大幅に市場が増加しましたが、2021年は少しの増加となっています。
しかし、引き続きEC化率は増加していくと予想されます。
サービス
サービス分野のBtoCのEC市場規模は2021年で4兆6,424億円となっており、前年よりも592億円増加しています。
サービス分野では旅行サービスが大きな割合を占めており、外出自粛が緩和されたことが理由となり、2020年に比較すると増加していますが、未だに2019年の水準には回復していません。
食品
食品業界はスーパーやコンビニ等の実店舗の利便性が高いため、コロナ化以前はEC化率が伸びにくい業界でした。
新型コロナウイルスの流行によって、オンラインサービスを利用するユーザーが増加したため、EC化が促進されました。
物流分野の2021年EC市場規模の伸長率で1位となっており、「食品・飲料・酒類」で14.10%となっています。
デジタルサービス
デジタルサービス分野においても、前年から3,047億円増加した2兆7,661億円となっています。
デジタルサービスでは、オンラインゲーム・有料動画配信・有料音楽配信等が大きな割合を占めています。
こちらも新型コロナウイルスの流行により、需要が増加しました。