昨今は様々な働き方が導入され、効率的な働き方が求められるようになりました。
チャットボットを社内に導入すれば今まで有人で対応しなければならなかった効率の悪い業務をチャットボットが対応してくれます。
この記事では社内チャットボットの選び方や導入事例も合わせて説明していきます。
チャットボットとは
チャットボットとは、「チャット(会話)」と「ボット(ロボット)」を掛け合わせた言葉です。
ロボットと会話ができる技術・サービスのことを指します。
例えばLINEの公式アカウントなどで、メッセージを送ると自動で返信が来たり、何かのサイトを見ていると右下に出てくる「吹き出しマーク」と「チャット画面」がでてきたりすることがあります。
このシステムの裏側に入っているのが「チャットボット」です。
チャットボットとは?AIとの違い・種類・選び方など、総まとめ
チャットボットの2つのタイプ、シナリオ型とAI型
チャットボットには、大きく分けて2つの種類があります。
シナリオ型チャットボットとAI型チャットボットです。それぞれ見ていきましょう。
シナリオ型チャットボット
シナリオ型のチャットボットは、あらかじめ設定したルールに合わせて回答するチャットボットです。
基本的には「AならばB」「Cが含まれていたらD」のように、決まった内容を送信します。そのため、「ルールベース型」と呼ばれることもあります。
- 選択肢での回答に限定される
- フリーワードに対応できないため、言葉の揺らぎが発生しない
- 精度向上のために、手作業でチューニングをする必要がある
上記3点の特徴があります。
AI型チャットボット
人工知能(AI)が搭載されたチャットボットです。フリーワードで質問に対応できることや、機械学習の仕組みを使うことで、チャットボット自身が自分で学習をして回答の精度を上げていくことができます。
- フリーワード(自然文)での質問に回答することができる
- 言葉の揺らぎ(言い回しの違い・誤字等)を吸収して、一定の精度を保持することができる
- 機械学習等による自動学習で精度向上ができる
上記3点の特徴があります。
良くある社内問い合わせ業務の実態
社内問合せ業務の担当者は、あらゆる部門からの問い合わせに毎日対応する必要があります。
社内問い合わせ業務によくある3つの課題をご紹介します。
同じような質問が何回も寄せられる
業務マニュアルやFAQページを確認すれば答えが書いてあるような質問が、何度も寄せられる状態の会社は多いです。
その原因のほとんどが、必要な情報を即座に見つけることのできない体制です。
業務マニュアルが発散していたり、検索機能が役立っていなかったりすることが、ヘルプデスクの負担増加を引き起こしています。
<自分で調べず問い合わせをする理由>
- 必要な情報を見つけることができない
- FAQページや業務マニュアルが読みにくい
- ヘルプデスクに問い合わせた方が早いと社員が思っている
ヘルプデスクに情報が溜まらない
社員からの問い合わせを適切に共有・登録する体制が整っていなければ、ヘルプデスクに情報が蓄積されません。
業務の属人化や問い合わせ業務がいつまでも改善されないことなど、新たな課題が発生する原因にもなります。
<ヘルプデスクにナレッジが蓄積しない原因>
- 社員からの問い合わせ内容と、その対応を記録しておく仕組みが無い
- 記録はしていても、誰も参照しない・参照しても役に立たない
- 記録しているが、問い合わせ中に検索できないため意味がない
業務時間外にも連絡が来る
働き方の多様化により、業務時間外の問い合わせニーズが増えている傾向があります。
そのためにヘルプデスクの人員を増やしたり、稼働時間を増やしたりしまうと、担当者への負荷もコストも増大してしまいます。
2020年以降、AI搭載型のチャットボットが注目されています。
社内のどんな場面でチャットボットが使用できるのか
同じことを別の人に何度も質問されることは社内業務において、よく見るシーンです。
社内のどんな場面でチャットボットが使用できるのかご紹介します。
総務、人事、経理等のバックオフィスでの活用
「○○はどこにありますか?」 「○の申請方法を教えてください」 「○○は誰に聞けば良いですか?」 バックオフィスの方は、上記のような質問を受けることが多いです。
チャットボットは、定型化した質問に即時に答えることができます。
よく聞かれる質問に対しての回答を設定しておくことで、有人で答える必要がなくなります。
新入社員からの問い合わせ対応
マニュアルやFAQをしっかり管理している会社でも、新卒・中途を問わず、新しく社員が増えた際に社内フローやデータの置き場所など、一通りの説明が必要になります。
新しく入社した人は、一気に情報を詰め込むこととなり、入社しばらくしてから「あの資料はどこだっけ…?」といった状態になることもあります。
チャットボットがあれば、教える側は同じことを教える手間が省け、質問をする側は即時に回答を得ることができます。
ヘルプデスクへの問い合わせ対応
ヘルプデスクへの問い合わせ対応に既存の社内FAQをもとに構築したAIチャットボットを導入し、応対品質の向上と、課題解決速度の改善に役立った事例もあります。
社内チャットボットを導入するメリット
チャットボットがどのようにして社内問い合わせ業務の課題を解決していくのか、メリットをご紹介します。
対応コストの削減
社内問い合わせ業務にチャットボットを導入すると担当部署の対応コスト削減ができます。
チャットボットを問い合わせ業務フローに組み込むことで、社内からの問い合わせを前さばきしてくれます。
すると社内担当部署の対応コストを削減できるようになり、担当者は他の業務に対応できるようになります。
実際のチャットボット運用は、問い合わせ頻度の高いFAQを優先的に登録し、チャットボット起動時に一覧表示させておくケースが多いです。
問合せ対応内容を平準化
チャットボットを社内に導入すると、「問合せ対応内容を平準化」することができます。
社内問い合わせ対応業務は一部のベテランオペレーターに属人化しやすく、担当者によって対応内容に誤差が生じることもあります。
一定のルールに従って問い合わせ対応を行うチャットボットなら、オペレーターによって対応品質が異なる状況が起こりません。
社内ナレッジの集約、属人化の排除
チャットボットを導入することで社内ナレッジを集約することも可能になります。
サイシードのAI搭載型チャットボットである sAI Chat では、社員が実際に入力した問い合わせキーワードをデータベースに保管し、どのようなキーワードの問い合わせが多いのか定量調査できます。
キーワードにまつわるQAを追加していくことで、社内に潜在していた小さなニーズや要望をすくい取るに至り、結果として社内のナレッジベースを構築することができます。
チャットボットに社内のナレッジを集約することで、情報の属人化を防ぎ、社内の標準知識として周知することが可能です。
質問する人のストレスを軽減する
何度も同じ問い合わせを受ける人はもちろんストレスですが、質問する側にもストレスはあります。
相手が忙しくないかなど様子をうかがってから質問することや、相手が気難しい上司だったり、忙しい人だったりなどと一人考えあぐねることもあります。
チャットボットであれば、「質問すること」自体で生じるストレスを解消することができます。
対応時間を他の仕事に充てることができる
ヘルプデスクなどで電話の受けを行う「受電対応」においては、自動で回答してくれる「シナリオ型」の導入をすることにより、利用者の自己解決を促すことができ、対応時間を他の仕事に充てることが可能です。
24時間いつでも回答できる
多様な働き方が認められ、仕事に取り組む時間も様々になってきています。
チャットボットは24時間365日、いつでも利用可能です。問い合わせ先がチャットボットなら、24時間いつでも相手の状況を気にすることなく質問することができます。
また、回答を待つ時間がなくなり、業務が滞ることも減らせます。
他にも、1度に複数の質問に対しても対応可能なため、ヘルプデスクに繋がりづらいといったことがなくなります。
Teams、Slackなどと連携できる
社員が利用するシステムやツールが増えれば、ツールによって使い方やインタフェースが異なるために、業務効率が下がることがあります。
可能な限り、社員が使うツールは、少ない方がよいです。
チャットボット導入の際も、自社で使用しているコミュニケーションツールとチャットボットを連携させることができれば、社員にとっては、使い慣れているため違和感なく利用することができます。
チャットボットはTeams、Slackなどのコミュニケーションツールと連携できます。
コミュニケーションツールと連携することで、社員が自然とチャットボットを利用することができ、利用率も高まります。
チャットボットが連携しているコミュニケーションツール
- LINE
- LINE WORKS
- Facebookメッセンジャー
- Google Hangouts Chat
- Microsoft Teams
- Slack
- Chatwork
テレワークを推進できる
2020年以降、コロナウイルスの影響により、企業ではテレワークの推進が進んでいます。
テレワークでは、社員同士のコミュニケーションがオフィス内のリアルコミュニケーションよりも希薄になる傾向にあります。
リアルコミュニケーションなら簡単な質問も周りの社員に聞くことができたのに、テレワークでは、チャットやメールで都度、担当者に問い合わせる必要があります。
テレワークを推進する場合は、社内用チャットボットの導入もあわせて行うことで、間接部門によせられる簡単な質問を全てチャットボットが対応するので、テレワークの際にも業務効率を高めることができます。
また、テレワークでは、社員はPC以外にも、スマートフォンでのやり取りも多くなります。
チャットボットは、スマートフォンでも質問することができ、自宅を含めた社外での勤務にも対応しています。
社内チャットボットの活用事例
社内チャットボットの活用事例を紹介します。
株式会社ラクスの社内チャットボットの活用事例
株式会社ラクスは交通費・経費精算システム「楽楽精算」やメール管理共有システム「メールディーラー」などのサービスを提供する会社です。
新入社員や中途社員からの質問に加えて、本格的に領収書の電子化を開始したことによる関連質問の大幅増加という課題を抱えていました。
社員の精算処理タイミングと経理部門の業務ピークが月末や月初に重なるため、作業時や締め作業時の問い合わせ対応は生産性を悪くなっていました。
チャットボット導入により、問い合わせ対応の稼働時間が約半分に削減されました。
特に、マニュアルを見ればすぐに分かる内容の質問は件数が大幅に減少しました。
マニュアルを見てから申請をする社員が多くなり、差し戻しの件数も減り業務効率化にも繋がりました。
大手通信インフラA社の社内チャットボットの活用事例
契約内容ごとに複数のシステムや承認プロセス、フォーマットが用意されているA社では、契約手続きのFAQを専門に取り扱う sAI Chatを導入しました。
その結果、問い合わせが半減し、チャットボットを利用した社内問い合わせ業務の効率化に成功しています。
社内におけるチャットボットの失敗事例
社内向けチャットボット導入の失敗事例を2つ紹介します。
大手通信会社の事例
ある通信会社では、膨大な量の社内データベースから、取引先企業の詳細や営業ノウハウなどを取り出すシステムを必要としていました。
社内データを検索し、営業活動などを簡略化するシステムとしてチャットボットを導入しました。
しかし、システムを利用する営業部門からのヒアリングが不十分で、何を必要としているか、必要なデータは何なのかを、分析しなかったことで、導入から3カ月程度で、現場の社員はチャットボットを利用しなくなりました。
Webメディア制作会社の事例
あるWebメディア制作会社では、社内の問い合わせに満足いく回答ができないことや、担当者の負担が大きいことが課題でした。
回答の精度向上や問い合わせ件数を減らすことを目的として、人工知能を利用したチャットボットを導入しました。
しかし、機能は充実しているものの、データやコンセプトなどが社内の需要とあわず不満が溜まり、チャットボットは使用されなくなりました。
必要なデータなどを分析せず、ツールで何ができるかを優先してしまったため、失敗してしまいました。
社内チャットボット運用失敗の要因
失敗の要因として考えられる4つの要因を解説します。
ユーザーの問題が解決されない
チャットボット導入でもっとも求められることは、社内の問題が解決されることです。シナリオの完成度が低い場合は、社員が求めている回答ができず、社内での問題や課題を解決することはでません。
よってツールへの信頼度が下がり、利用されなくなっていきます。
回答できない場合の対策がない
シナリオをしっかりと考えて設計したとしても、システムでは解決・判断できない案件は発生します。
その際、回避策が用意されずに、対応できないままにしてしまうと、社員の満足度が下がり、利用されなくなってしまいます。
導入自体がゴールになっている
チャットボットの導入は、あくまで課題解決のための手段であり、ゴールではないという認識が大切です。
目的が不明確であればシナリオ自体もぼんやりとしたものになってしまい、利用されなくなる可能性が高くなります。
「社内の何を解決したいのか」「何のために導入するのか」という目的を明確にすることが大切です。
社内での運用体制が確立されていない
社内でのチャットボットの運用体制を確立していないことも失敗要因のひとつです。
チャットボットは導入して終わりではなく、利用者の質問を収集し、改善を重ねることが重要です。
運用体制が整っていないと、データ収集やメンテナンスも行われず、利用する社員たちの使いづらさも改善されません。
社内チャットボット選びのポイント
社内チャットボット選びのポイントを紹介します。
導入する目的を明確に決める
なぜチャットボットを導入するのか、目的は具体的で実用性のあるものを設定すると良いです。
目的を明確にするとチャットボットの役割も具体的になり、ツールも選びやすくなります。また、シナリオも設定しやすくなるので社員が利用しやすくなります。
サポート体制が充実しているか
チャットボットは、常にメンテナンスと改善を行う必要があります。
また、チャットボットを導入する際は、わからないことも多く、特にサポートを利用すると思います。
チャットボットの作成や設定はもちろん、導入後の運用についてもサポートがあるツールを選ぶと安心です。
社内でチャットボットを実際に試してから導入できるか
チャットボットを導入しても、会社に定着しなければ意味がありません。
チャットボット選びで重要なポイントは、現場社員のニーズを的確に把握することです。
そのために、実際に現場で一度使ってみると良いです。
トライアル版のチャットボットには、削減できる業務の範囲を確認できることや、比較検討がしやすいというメリットもあります。
導入実績の確認
使い勝手のよいツールなら、多くの企業が導入しているため、ツールの導入実績数も1つの指標といえます。
チャットボット開発ツールのWebサイトでは、導入実績数や実際の導入事例などを紹介していることも多いです。
導入前に実績や事例を確認しておくとよいでしょう。
料金体系の確認
チャットボット開発ツールの料金体系はサービスによってさまざまです。
初期費用、ランニングコストなど事前に確認しましょう。
また、自社に合うようにカスタマイズする場合は、別途料金がかかることもあります。
無料期間があるのであれば、実際に利用してみるのもおすすめです。
社内チャットボット導入の費用感
チャットボットは多くのベンダーから提供されておりますが、大きくはクラウド型チャットボット、オンプレミス型チャットボットの2つのタイプのチャットボットに分けることができます。
クラウド型チャットボット
- 初期費用が数万円~程度
- 月額費用が月額数万円~
- 導入までの期間が1ヶ月程度
オンプレミス型チャットボット
- 初期費用が100万円~
- 月額費用が数十万~
- 導入期間が1~2ヶ月
- 企業毎の独自のセキュリティ要件に対応可能
社内チャットボット運用のポイント
社内チャットボット運用のポイントを紹介します。
データを蓄積して回答の精度を上げる
チャットボットは、常にメンテナンスを行うことが重要です。
チャットボットは、シナリオ型・AI型どちらの場合でも、データを蓄積して回答の精度を高めることが必要です。
社内のチャットボットの担当者を決め、メンテナンスできる体制を整え、定期的にシステムを更新していきましょう。
より多くの社員に、チャットボットを使ってもらうよう工夫するのもポイントです。
たくさんの問い合わせや意見が集まるほど分析もしやすくなり、精度の向上にもつながります。
KPIを設定してPDCAを回す
導入が終わってからも、下記のようなKPIをもとに、チャットボット運用を改善していきましょう。
チャット返答率:有効な返答数 ÷ チャット回数 = チャット返答率 解決/未解決率:どれだけチャットボットで解決することができたか?
Q&Aデータを追加してPDCAを回し、回答率を高めていきます。運用を重ねることで、社内の業務改善がどんどん進んで行きます。
また、チャットボットが答えることができない複雑な質問の場合も、チャットボットから社員にエスカレーションする機能があり、有人の問い合わせチャットに切り替えることができます。
チャットボット開発ツール「hachidori」について
ここまで述べてきたように、チャットボットは大きなポテンシャルを秘めたサービスです。
この記事を執筆しているhachidori株式会社は、NoCode(プログラミング不要)でチャットボットを開発できるツールを提供しています。
チャットボットは便利なものではありますが、決して魔法の杖ではありません。チャットボットの成果をしっかり出すためにはプランニング・設計・PDCAに基づいたチューニングも非常に重要です。
hachidoriでは、経験豊富なコンサルタント・カスタマーサクセスが貴社のビジネスに伴走する形で支援します。
この記事を読んでチャットボットに興味を持たれた方は、ぜひhachidoriサービスサイトよりお問い合わせください。