AI・人工知能ではないチャットボット技術をサービス展開

AI・人工知能ではないチャットボットをサービスに応用するべき


2018年4月、当社hachidoriは東京ビッグサイトで行われたAI・人工知能EXPOに出展した。今ではチャットボットを提供している企業がかなり増えており、筆者自身も目の当たりしたのが現実だ。2016年以降、急速に広がっているこのチャットボットは、一般的には「よくある問い合わせをAIチャットボットが自動応答する」というイメージがあるだろう。もちろん現在でも、そのスタイルは変わっていないが、これからは「チャットボットという技術を応用してサービス展開する」というニーズが強くなると考えている。筆者はそんなことをAI・人工知能EXPO出店時に感じた。

そもそもチャットボットの認知度はなぜ低いのか

2018年4月現在、チャットボットの波が日本に来て2年が経つ。この2年の間で様々なチャットボットが誕生してきたと思うが、「そんなサービスを知らない」「チャットボットという名前を初めて聞いた」など、認知度が非常に低い。知名度が高い企業はたくさんあるが、その知名度が高い企業が、実はチャットボットサービスを行なっているという認知度はほぼないに等しい。それはなぜか。

理由としては、チャットボットはAI・人工知能らしくないからだ。

例えば、ヤマト運輸のLINEチャットボットがある。このチャットボットはLINE上で届け物の確認や再配達ができるという非常な便利なLINEチャットボットになっており、その友だち数は1,000万人を超えているという。国民の10人に1人が使用しているこのヤマト運輸のLINEチャットボットを果たしてAI・人工知能だと思って利用している人はどれくらいであろうか。おそらく、ほとんどの人がAI・人工知能、はたまたチャットボットと認識していないはずだ。理由は1つで、「その企業の1サービス」として利用しているからだ。つまり、AI・人工知能らしくなく、ただ純粋にLINE上にあるヤマト運輸の新サービスと思って、利用しているわけだ。

上記のようなものであるため、当然チャットボットというものは認知度は低い。

AI・人工知能チャットボットという言葉を真に受けない

AI・人工知能をおさらいすると、人間の持つ脳を人工的に作り出し、人間の代わりとなる労働力として活用することである。しかし、現在のサービスや労働環境の中で、果たしてAI・人工知能という技術が必要なのであろうか。工場などの労働生産力はロボットで補うことができる。わざわざAI・人工知能でなくても問題ない。またLINEチャットボットでも「女子高生AIりんな」もそうだ。りんなはLINE上で、会話形式で自動応答してくれるが、友だち感覚であり、ビジネス向きではない。友だちとの会話でAI・人工知能が必要ないという点と、りんな自身は機械学習を行わないという。膨大なビッグデータを元に回答しているため、回答はパターン化されている。パターン化された回答はサービスには非常に役立つが、パターン化された中でも都度回答が異なる部分もあるため、利用者によっては使いづらいところもあるだろう。

AI・人工知能が抱えるフレーム問題

「フレーム問題」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。

人工知能における重要な難問の一つで、有限の情報処理能力しかないロボットには、現実に起こりうる問題全てに対処することができないことを示すものである。(参照:Wikipedia)

例えば、AI・人工知能搭載型のロボットに「牛乳を買ってきて」と指示する。AI・人工知能であるから、人間にとって非常に簡単なこのような指示が当然できると思う人がほとんどであろう。しかし、AI・人工知能というのは人間と異なり、数多ある事象の中から「牛乳を購入する」という1つを絞り出して選択する必要があり、それらを取り巻く事象を無視しなければならない。「牛乳を購入する」という行為に対して、考えうる全ての事象を想定してしまうAI・人工知能ロボットは考えるのに膨大な時間を費やしフリーズしてしまうということだ。ある特定の枠(フレーム)の中だけで考えさせることで、解決させることができるが、「牛乳を購入する」というフレーム以外のことには対応することができないため、複数フレームを用意しなければならない点と、フレームの中でも1つの選択に絞り込むのに時間を費やしてしまう点がある。これがAI・人工知能が抱える「フレーム問題」である。

現在では、AI・人工知能という言葉が先行しているだけだ。このAI・人工知能の性質を理解した上で、どの技術であればサービスの軌道に乗せることができるかを考えるべきだ。

AI・人工知能ではないチャットボット技術を用いたサービスのあり方

それではAI・人工知能という言葉を無視して(無視する必要はないが)、自動応答という意味でのチャットボットをどのように活用していけば良いのだろうか。先に述べたように友だちの数が1,000万人を超えているヤマト運輸のLINEチャットボットサービスを例に挙げると非常にわかりやすい。ヤマト運輸のLINEチャットボットは下記のポイントを明確に解決して、訴求している。

・窓口人員確保のカバー
・営業時間外対応
・LINEプラットフォームを利用

ヤマト運輸が抱えている人材不足という企業課題をチャットボットが解決している。且つ、営業時間外でも自動で受付をしてくれるため、利用者にとっても便利である。それらを利用者7,300万人というLINEプラットフォームで展開することで、たくさんあった窓口を集約することができる。これらを説明すれば、すでにお分かりであろうが、AI・人工知能でなくても十分サービスとして成立している。

つまり、チャットボット技術を利用したサービスの代表例がこのヤマト運輸のサービスであり、今後展開される新サービスはこのようなあり方で良いのではないだろうか。AI・人工知能という言葉が先行しているなかで、自社のサービスに必要なのはAI・人工知能であるのか、それともチャットボットのような人工無脳技術を用いたものなのか、そもそも必要ないのか、それはその企業の従来のサービスに帰属するものであろう。

AI・人工知能ではないチャットボットサービスの活用例

AI・人工知能ではないチャットボットサービスを紹介する。1つのサービスの中にチャットボット技術を用いて展開することでユーザーにとって便利なツールとなる。下記は航空券販売サービスをチャットボットを用いた例だ。誰もが利用しているLINEで手軽に航空券検索ができ、問い合わせもできる。

格安航空券販売のエアトリ

国内・海外格安航空券の最安値販売を行なっているエボラブルアジアのエアトリ。LINEのチャットボット上には様々なコンテンツを展開し、画像のように航空券検索を行なうことができる。また同一LINE上でチャットでの問い合わせも可能。

エアトリチャットボット エアトリチャットボット
出展:エボラブルアジア社 詳細はこちら

こちらのサービスもヤマト運輸同様、AI・人工知能だと思って利用している人は少ないだろう。しかし、こういった技術を用いたサービスを展開することは可能であり、AI・人工知能という言葉よりも「1つのサービス」として確立させることで、より便利な社会を創り上げることができる。なぜならば、利用するユーザーにとっては既存サービスから新たなサービスが生まれたという認識でしかなく、以前よりも便利になったという事実だけで十分だからだ。

AI・人工知能ではないチャットボット技術をサービス展開まとめ

以上が、筆者が考えるAI・人工知能ではないチャットボット技術を用いたサービスの展開だ。「よくある質問」「FAQ」をチャットボットにして自動で応答するというのはルールベースでしかなく、AI・人工知能が熟考して応答するものではない。拍子抜けされる人もいるであろうが、現在の技術では先に述べたような「フレーム問題」もあり、AI・人工知能を開発する上での課題は山積みだ。しかし、AI・人工知能には否定的ではなく、この技術を発展させていくことで進化できるサービスもあるはずだ。例えば、児童の相談窓口だ。

児童相談窓口は大概17時までである。児童が相談したい時間帯は決して17時までというわけでもなく、相談相手が人間でないといけないわけでもない。AI・人工知能型である必要性はこのような領域ではないだろうか。相手がAI・人工知能であれば、児童が相談するというハードルは一段と低くなり、潜在的な相談を掘り起こすことができるかもしれない。その相談窓口サービスを管理し、アンテナを張るのが人間の仕事だ。筆者はAI・人工知能が大いに活躍する社会を見てみたいが、適材適所に活用できる社会の方が人間味も垣間見れて面白い社会になるのではないであろうか。