インターネットやスマートフォンが普及した現在では、SNSがマーケティングを進める際に大きな影響を与えています。
そんなSNSで影響力を持つ「インフルエンサー」に宣伝を依頼することを「インフルエンサーマーケティング」と呼び、多くの企業が採用しています。
この記事では、インフルエンサーに仕事を依頼する方法やインフルエンサーマーケティングのメリット、インフルエンサーマーケティングを成功させるためのポイントなどを解説していきます。
インフルエンサーマーケティングとは?
YouTube・Instagram・Facebook・TwitterのようなSNSで大きな影響力を持つインフルエンサーに自社の製品・サービスを使用・紹介してもらうマーケティング戦略を「インフルエンサーマーケティング」といいます。
SNSで絶大な人気を誇るインフルエンサーに消費者の目線から商品やサービスを紹介してもらうことで視聴者の共感性が発生し、商品購入を促す効果を期待できます。
市場規模も年々伸びており、当初は219億程度の市場ではありましたが、2021年には425億円にも及び、2025年には723億円に達すると予想されています。
インフルエンサーマーケティングとは?気を付けるべき点やメリット、デメリットまで
インフルエンサーマーケティングのメリット
インフルエンサーマーケティングを利用する際に得られるメリットは以下の通りです。
①ターゲット層にリーチしやすい。
インフルエンサー自体が特定のジャンルにおいて「カリスマ的な存在」となっているケースが多く、「美容」「健康」「子育て」「ファッション」などのそれぞれのジャンルに強いインフルエンサーに商品を紹介してもらうことで、ターゲット層になる可能性の高いユーザーに情報を発信することができます。
②消費者目線で情報を伝えてもらえる。
インフルエンサーマーケティングを利用することで、メーカー側の意見ではなく「インフルエンサーの言葉で発信してもらえる」というメリットがあります。
インフルエンサーが実際に使用して口コミなどを交えて紹介してもらえるため、「消費者目線」で情報を届けてくれるだけでなく、説得力の高い情報として視聴者に伝わります。
③広告感が少ないため、警戒されにくい。
インターネット上の広告や街中でも見かけたりする広告は、基本的に消費者からは「嫌悪感」を持たれています。
2019年の調査によると、ネット広告が「しつこい」「邪魔」という嫌悪感を抱く人が多くなっていることが分かっています。
インフルエンサーマーケティングの場合には、「広告」を見ているという印象が薄れるため、直接の広告よりも視聴者は情報が受け入れやすくなります。
④拡散効果が期待できる。
消費者に情報が届くだけでなく、フォロワーのシェアを得ることができれば、口コミにより多くのユーザーの獲得効果が期待できます。
SNSでインフルエンサーが発信した情報を多くの人が拡散してくれれば、ユーザー確保の確率が高くなっていきます。
インフルエンサーに依頼する3つの方法
インフルエンサーに依頼する場合には、「直接インフルエンサーにDMで依頼する」「インフルエンサーマッチングサイトを利用する」「インフルエンサーマッチングサイトを利用する」などの3つの方法があります。
直接インフルエンサーにDMで依頼する
「自分でインフルエンサーを探して直接依頼する」という方法になります。
注意点としては、インフルエンサーが見つかるまでの「時間が掛かること」と「炎上対策を自分達で行う必要があること」が挙げられます。
直接インフルエンサーに依頼するメリット
直接インフルエンサーに依頼する際のメリットは以下の通りになります。
①中間業者を挟まないため、コストを安く抑えることができる。
②本人と直接話をするため、スムーズにやり取りを進めることができる。
③自分達で自由にインフルエンサーを探すことができる。
インフルエンサーに依頼するDMフォーマット
〇〇様(インフルエンサーの名前)
「初めまして。」または「大変お世話になっております。」
〇〇(企業名)株式会社の〇〇(担当者名)と申します。
この度は新商品(または新サービス)の紹介でご連絡させて頂きました。
現在、弊社では〇〇という商品を開発しております。
商品のURL等:
〇〇様のコンテンツが弊社の取り扱う商品(またはサービス)について深い理解があり、影響力があると弊社で判断いたしました。
そのため、〇〇様に是非弊社の新商品を紹介して頂きたいと考えております。
報酬等に関しましては、1件当たり〇円でのご対応を考えておりますが、報酬面やその他のご相談についても対応が可能となっております。
もし本案件にご了承頂き、お仕事を引き受けて頂ける場合につきましては、弊社SNSアカウントにDMを送って頂けると幸いです。
何卒ご検討の程、よろしくお願い致します。
上記のようなメッセージの内容にしましょう。
メルマガのようないきなり距離の近いメッセージであったり、顔文字などを沢山使用していたり、企業の詳細が分かりづらい場合には「詐欺メッセージ」だと勘違いされてしまいます。
気を付けるポイントとしては、「ビジネス然として丁寧な文章であること」「最初に企業名や担当者名を記載すること」「そのインフルエンサーに依頼した理由を記載すること」「具体的な仕事内容・報酬内容を記載すること」などです。
インフルエンサーマッチングサイトを利用する
インフルエンサーマッチングサイトを利用する方法ですと、登録しているインフルエンサーの中から企業側の「ニーズ」に合わせて依頼する人を選ぶことができます。
システムを利用してメッセージのやり取りを行う方法になります。
インフルエンサーマッチングサイトを使うメリット
インフルエンサーマッチングサイトを使うメリットは以下の通りです。
- ターゲットとフォロワーのマッチング精度が高いインフルエンサーがすぐに見つかる。
- 自分で探すよりもインフルエンサーが見つかりやすい。
- インフルエンサーに断られる可能性が低くなる。
- 「効果測定」などの分析ツールが利用できる。
広告代理店に依頼する
最後はインフルエンサー代理店などに仕事を依頼する方法になります。
インフルエンサー代理店とは「キャスティング会社」や「インフルエンサーマーケティング会社」とも呼ばれており、人材マッチングをはじめ、効果測定の分析・プロモーションの提案などのトータルサポートをしてくれる「ディレクション型」のサービスを提供する企業です。
広告代理店に依頼するメリット
広告代理店等に依頼する際のメリットは以下の通りになります。
- インフルエンサーの選定・依頼・効果測定までの全ての流れを任せることができる。
- 自社で考案するよりも「面白い企画」ができる可能性が高い。
- 初めてインフルエンサーに依頼する人でも、失敗せずに高い効果を得られやすい。
- インフルエンサーの質が保証されている。
- 炎上対策をしてもらえるため、リスクが最も低い。
- 「難易度」が最も低い。
代理店に依頼する場合の流れ
インフルエンサー代理店にインフルエンサーマーケティングを依頼する流れは以下の通りになります。
- 希望する「キャストのイメージ」や「予算」などを提示する。
- ヒアリングした内容をもとに、おおよその見積もりを受ける。
- 「キャスティング候補リスト」「出演条件」「PR方法のルール化」「スケジュール」などのプロモーション内容の提案。
- 代理店は所属事務所を通してインフルエンサーに出演交渉をする。
- 条件が合致した場合にインフルエンサーの事務所と契約を結ぶ。
- 撮影日・スタジオの調整・サポートスタッフの手配などの管理を代理店が行ってくれる。
- 動画を投稿した結果を分析してデータを受け取ることができる。
- 全工程が完了したら、末日翌月未払いなどの規定に沿って費用を支払う。
インフルエンサーマーケティングにかかる費用
インフルエンサーマーケティングを行う際にかかる費用について詳しく解説していきます。
インフルエンサーマーケティングで発生する費用
インフルエンサーマーケティングを行う際に発生する主な費用は以下の通りになります。
- インフルエンサーに支払う報酬
- インフルエンサーに依頼する自社商品の商品代金や配達料
- 訪問や宿泊などにかかる交通費や宿泊費等
インフルエンサーへの報酬
インフルエンサーマーケティングを行う際にかかる費用の大部分を占めているのが、「インフルエンサーに支払う報酬」になります。
企業側はインフルエンサーに依頼する際には、「報酬」と「得られる効果」を比較して費用対効果をしっかりと検討する必要があります。
インフルエンサーへの商品代金
自社の商品・サービスを紹介してもらう際には、インフルエンサーに無料で商品やサービスを提供する必要がありますし、その際に発生する配送料なども企業側が負担する必要があります。
他にも起用したインフルエンサーがSNSを通じて投稿した写真を自社の広告やPRで利用する場合には、肖像権や著作権の兼ね合いから「二次利用費」を支払って利用しないといけない場合があります。
インフルエンサーの交通費
インフルエンサーが訪問や宿泊しないといけない場合には、交通費・宿泊費も企業側が負担する必要があります。
インフルエンサーの時間を拘束することになりますので、「拘束分の費用」も必要になるケースが多いです。
これらの経費も計算した上で、インフルエンサーマーケティングを進める必要があります。
インフルエンサーマーケティングの費用はフォロワー単価で決まる
一般的にインフルエンサーマーケティングはフォロワー単価で決まります。
フォロワー単価の料金相場は1回のSNS投稿で「フォロワー数×2~4円」程度と言われています。
例えば、フォロワー数が10万人のインフルエンサーに依頼した場合では、費用の相場は20万円~40万円となります。
「インフルエンサーの拡散力=フォロワー数」となっているため、フォロワー単価はフォロワー数が大きくなるにつれて、費用も高額になっていくという仕組みになっています。
最近では「フォロワー1.5円」から依頼できるような企業が増えてきているため、「価格の適正化」が進んでいる傾向があります。
インフルエンサーマーケティングを成功させるポイント
インフルエンサーマーケティングを成功させるには、「目的を定量的に決めておく」「フォロワー数だけでなくエンゲージメントを見る」「KPIを定めてPDCAを回す」「ステマにならないようにPRを明記する」などのポイントに注目する必要があります。
目的を定量的に決めておく
まずはインフルエンサーを選定する前に利用する目的を明確にしておく必要があります。
段階 | 役割 | 施策例 |
認知 | 認知度を拡大するために土台作り | SNS上で宣伝してもらう |
関心・興味 | 認知させた商品・サービスに関心を持ってもらう | 商品のキャンペーンの告知などをしてもらう |
検索 | 興味のあるユーザーにレビューを提供して購入意欲を刺激してもらう
ユーザーが購入前に検索を行って情報を収集する |
詳しい商品・サービスのレビューをしてもらう・書いてもらう |
購買 | 直接的に購入を促す | SNSの設定を利用して誘導してもらう |
上記の表のようにインフルエンサーマーケティングは4つの段階に分かれます。
それぞれの段階によってインフルエンサーマーケティングの効果は違ってきます。
「新商品を認知させたい」場合にはインフルエンサーにSNSで宣伝してもらうと効果的です。
「認知」段階ですと「フォロワー数」が多いほど効果が大きくなると考えて良いでしょう。
「興味・関心」の段階ではインフルエンサーに割引キャンペーンなどを宣伝してもらうことで、大きな効果を期待できます。
やはり、「割引」などのお得な情報は消費者にとって興味を持ってもらえる可能性が高いといえます。
「検索」の段階まで来たユーザーは多くの場合、ネットやSNSで商品・サービスの口コミを調べる確率が高いことが分かっています。
そのため、インフルエンサーに「レビュー」を書いてもらうことで、ユーザーの購買意欲を刺激できます。
通常であれば、検索段階まで来れば基本的に終わりになりますが、必要な際には購入フェーズを利用して「ブースト」をかけるのも良いといえます。
インフルエンサーに依頼する場合でもこの4段階に分かれるため、「どのような効果を得たいのか」「依頼するインフルエンサーの人数等」を定量的に決めておく必要があります。
フォロワー数だけでなくエンゲージメントを見る
インフルエンサーのフォロワー数だけでなく、「エンゲージメント」も確認しておきましょう。
エンゲージメントとは、SNSに投稿した際に投稿に反応したユーザーのことを指します。
この「エンゲージメント」を分析すれば、インフルエンサーの持つ「具体的な影響力」を把握することができます。
SNSにおいてフォロワー数は一つの人気を表す指標にはなりますが、フォロワー数が多いインフルエンサーが必ずしも「人気」であるとは限りません。
場合によってはフォロワー数をお金で買っているケースも存在するため、そのようなインフルエンサーは影響力がほとんどありません。
またフォロワー数=アクティブユーザー数と考えるのは「危険」であるといえます。
「エンゲージメント」は投稿にリアクションしてくれた人を指していますので、エンゲージメント率が高いと「そのインフルエンサーのコメントが多くの人に見られている」ということになります。
「閲覧数が多い=インフルエンサーマーケティングの効果が高い」ということになります。
KPIを定めてPDCAを回す
インフルエンサーマーケティングを行うことで得られる成果が、企業の求めるKPI(目標や成果)と内容がズレていないことを確認する必要があります。
- 「認知獲得」を目指す場合、「インプレッション数」や「リーチ数」をKPIに設定する。
- 商品・サービスの販促を促す場合、「投稿への反応数」「実際の売上数」「ECサイトへの遷移数」などをKPIに設定する。
上記の2つのように目的によってKPIに設定すべき内容が異なってきますので、事前に必ずKPIの設定を行っておき、そのKPIの達成に適しているインフルエンサーを選定していく必要があります。
また設定したKPIを達成するために「Plan(計画)」→「Do(実行)」→「Check(確認)」→「Action(改善)」からなる「PDCAサイクル」を回していく必要があります。
ステマにならないようにPRを明記する
SNSではPRマークを付けることができますが、PRマークには以下のメリットがあります。
- インフルエンサーの投稿から、自社のアカウントに飛ばすことができる。
- ステマを防止することができる。
「ステマ」を防止するメリットは非常に大きく、ステマだという事実が発覚すると「社会的信用」をすぐに失ってしまいます。
怒りの矛先はインフルエンサーを含め、「関与した企業」にも影響が及ぶことが考えられます。
「ステマ」はPRマークで防止することができますので、インフルエンサーに仕事を依頼する場合には必ず記載することを忘れないようにしておく必要があります。
インフルエンサーマーケティングの成功事例
インフルエンサーマーケティングを行って成功した企業には、「UNIQLO」「キリン」「Dior」「ワイモバイル」「阪急梅田」などがあります。
下記で詳しく解説していきます。
UNIQLO
幅広い世代に人気のUNIQLOを経営している「株式会社ファーストリテイリング」もインフルエンサーマーケティングを行っています。
「藤井明子」さんと言われるアラフォーモデルの方には、一般人がInstagramに投稿するにはハードルが少し高い「ブラトップ」を格好良く着こなした写真を投稿して話題となっていました。
その他にもYouTubeで影響力のあるインフルエンサーの「なぐもふうか」さんを起用して、動画内でアイテムを紹介してもらっています。
なぐまふうかさんが投稿した動画は26万~100万回再生されており、コメント数も130件~450件ほど寄せられています。
動画を見て興味を持ったユーザーがすぐに購入できる工夫がされていて、複数のURLを設置しておき、商品ごとに細かく導線を用意しておくことで、インフルエンサーマーケティングの効果を高めることができました。
キリン
清涼飲料水メーカーであるキリンですが、「午後の紅茶」が高校生の間であまり人気がなく、需要が伸び悩んでいました。
今現在の高校生は紅茶を飲む機会があまりなく、紅茶を飲む高校生であってもフレーバーが豊富な「リプトン」を選ぶ傾向にあります。
そのため「キリン」はTikTokを使用して、「ほほティー」という自分の頬に午後の紅茶をあてる写真を投稿して話題性を作りました。
その可愛いポーズが人気となり、真似をする中高生が一気に増えていき、中高生の売上も向上しました。
TikTokでは「ほほティー」の動画に対して3,500~5,200件ほどのイイネが来ていました
「今日好き」という番組ともコラボを行い、さらに中高生へ大きな影響を与えました。
Dior
Diorは10~20代の女性が愛読している「ViVi」公認の古川貴絵さんにインフルエンサーマーケティングを依頼しました。
普段からフォロワーから「そのアイテムをどこで買いましたか?」というコメントが殺到しているため、コスメの投稿などを行うとフォロワーからの注目が一気に集まる状態になっています。
そんな古川貴絵さんに商品を宣伝してもらうことで新商品の知名度が上がるだけでなく、購入意欲を刺激することができました。
当時、発売前に投稿された内容であるにも関わらず、イイネ!が7,000件近く集まっていました
ワイモバイル
(Y!mobile(ワイモバイル)CMは野球と思いきやダンスなう!出演者は芦田愛菜・吉岡里帆・中田圭祐!ワイモバ学割 (tv-rider.jp) より引用)
ワイモバイルはTikTokで「#と思いきやダンス」CM出演チャレンジというハッシュタグを利用してインフルエンサーマーケティングを進めていきました。
CMには出川哲郎さんをはじめ、芦田愛菜さんや吉岡里帆さんなど数多くの芸能人が出演しており、話題性は抜群です。
ハッシュタグを利用したキャンペーンは、多くの企業がプレゼント企画などで利用しており、ユーザーもハッシュタグのキャンペーンに飽きています。
そんな状況でワイモバイルは「CM出演」という非常に珍しい特典を用意しました。
近年の若者は「目に見えない形の景品に食いつく傾向」があるため、ワイモバイルの施策は大成功しました。
阪急梅田
阪急梅田はデリスタグラマーの「きょん。」さんとコラボをしました。
きょん。さんはスイーツやカフェに特化したフォトグラマーとして活躍しているだけであって、インスタの投稿もオシャレな構成で撮影されています。
そんなきょん。さんは阪急梅田本店で開催された(2018年2月14日)バレンタインチョコレート博覧会で販売されていた「たい焼きソフト」をシンプルな構成で撮影し、写真をInstagramに投稿して話題を集めていました。
きょん。さんの投稿をきっかけにイベントの存在を知ったユーザーが簡単にイベント特設アカウントにアクセスできるようになっていました。
投稿からわずか2日でいいね!数が4,000件を突破しており、多くのコメントも寄せられており、宣伝効果は絶大であったといえます。
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