ECにおける広告施策は、ECサイトの売上を向上させるために絶対に必要な項目となりますので、ECサイトの運用に力を入れたいと考えている企業はしっかりと把握しておく必要があります。
Web広告の種類の選択や費用の割合を間違えてしまうと、コストだけが高額になり、Web広告の効果を活用できない事態に陥ってしまいます。
この記事では、Web広告の種類と特徴についての説明をはじめ、ECサイト運営で広告を使用するメリットや効果・ECサイトが広告を使うデメリット・ECが広告費を掛ける比率・ECサイトでweb広告を適切に使用するポイントなどについて詳しく説明していきます。
ECで活用できるweb広告の種類と特徴
ECで活用できるWeb広告には、「ショッピング広告」「リスティング広告」「ディスプレイ広告」「SNS広告」「記事広告」「メール広告」「アフィリエイト広告」などの7つの種類があります。
それぞれの特徴について詳しく説明していきます。
ショッピング広告
ショッピング広告とは、googleで商品名・商品のジャンル名を検索すると、検索結果として画面に表示される広告のことをいいます。
広告を掲載する方法は、google広告管理システムである「Google Merchant Center」に登録を行い、審査が承認されれば無料リスティングが開始されます。
商品フィードが先程のような検索結果のように表示されたり、google検索画面の「ショッピングタブ」を選択すると商品が表示されます。
ショッピング広告は、検索結果に商品画像が表示されますので効果の高い広告といえるでしょう。
しかし、1つの商品で利益を得るいう考えではなく、消費者にECサイトを知ってもらう・リピート購入で利益を得るなどのECサイトマーケティング戦略全体で考えて実施していかないと利益には繋がりません。
ショッピング広告は基本的には費用を設定して広告を配信する方式になります。
基本的に全て有料掲載になります。
予算は広告出稿者が自由に設定することができ、推奨されている1日あたりの予算額は1,000円~5,000円と言われています。
また、2020年10月以降に「無料掲載」のサービスが提供されています。
「Google検索のショッピングタブ内」でのみ配信することができます。
こちらのサービスは「無料リスティング」と呼ばれており、有料掲載枠の広告とは明確に区別されています。
リスティング広告
リスティング広告とは、googleやYahoo!などの検索エンジンでキーワードを検索することで、検索結果のページ画面の上部・下部に掲載される広告のことです。
リスティング広告の料金体系は、「クリック課金制度」でありユーザーが広告ページをクリックした場合に費用が発生します。
クリック時のコストは出稿者が設定できますが、設定したコスト等によって広告の掲載位置が変化します。
配信設定を行うことにより、特定の条件に当てはまるユーザーのみに広告を表示させることができます。
年齢・地域・時間帯・デバイス等、様々な条件を設定することで効果を高めることができます。
ディスプレイ広告
ディスプレイ広告とは、Webサイト上の広告枠に配信できる広告であり、バナー形式で表示されることが多い特徴があります。
テキスト形式のリスティング広告よりも、ユーザーの目に留まりやすい広告といえるでしょう。
ディスプレイ広告における主な手法として、リマーケティング広告などの追従型広告が挙げられます。
自社サイトを何かしらの形で利用したことのあるユーザーに対して広告を配信し、再度訪問や購入を促す広告手法になります。
同じユーザーに対して同様の広告を配信することで、広告効果を高めることが可能です。
SNS広告
SNS広告とは、SNSをプラットフォームとして配信を行う広告のことです。
Facebook・Instagram・LINE・Twitter・YouTube・Tiktokなどが代表的な露出媒体です。
各媒体でテキスト・画像・動画による広告が、それぞれの広告掲載場所に掲載されます。
SNS広告では、「クリック型課金」「インプレッション課金」などが料金体制の代表例として挙げられます。
特徴として、各チャネルによってユーザーの属性・傾向、機能などが異なってきます。
ECサイトにて獲得したいターゲットユーザー・広告出稿の目的を明確化しないと、必要な媒体を選定することが難しくなります。
SNS広告のメリットは以下の通りです。
①幅広いユーザー層へのアプローチが可能
②認知度向上が期待できる
③潜在層へのアプローチも可能
④拡散性が高い
⑤精度の高いターゲットが可能
ただし、年齢層が高いユーザー層へのアプローチが難しいというデメリットがあることも理解しておきましょう。
記事広告
(引用:投資信託とは?初心者にもわかりやすく解説 | マネックス証券 (monex.co.jp) )
記事広告とは、掲載先のメディアの視点で書かれている記事型の広告であり、「タイアップ広告」とも呼ばれています。
記事の体裁で広告を作成しますので、広告らしさを抑えることができるというメリットがあります。
「boxil」「ferret」等の集客力のあるWebサイトに自社の商材を紹介してもらうページを作成することで、広告記事を展開していきます。
商品・商材の購入を促すのではなく、購入するきっかけとなる悩み・ニーズに焦点を当てることでユーザーの購入意欲を刺激する手法になります。
メール広告
メール広告とは、メールマガジン広告とも呼ばれているものであり、電子メールで配信される広告のことです。
基本的には自社のメールアドレスで配信せず、外部サービスが発行したメールアドレスで配信される電子メールに広告を掲載することを意味しています。
多くの読者を有するメルマガ発行者・仲介者へ出稿することで掲載される仕組みです。
メール広告・メールマガジン広告は、広告の単価に発行部数(読者数)・広告掲載位置などを掛け合わせた料金が掛かってきます。
SNS広告と同じで、メールマガジンにも多くの種類があるのでユーザーの属性が異なってきます。
そのため、自社がアプローチしたいユーザー層をしっかりと明確にし、最適な掲載先を選定しないといけません。
一度に多くのユーザーにアプローチできるというメリットがある一方で、LINEなどに比べて開封率が低くなるというデメリットも考えられます。
アフィリエイト広告
アフィリエイト広告とは、広告掲載枠のあるHPやWebページを持っているアフィリエイターによって掲載が行われるインターネット広告の1つです。
アフィリエイト広告を出稿するためには、多くのアフィリエイターを管理しているASPを介さないといけません。
アフィリエイト広告の多くは「成果報酬型」であり、アフィリエイターの保有するHP等で掲載されている広告がユーザーにクリックされて、商品購入・資料請求等の何かしらのコンバージョンに至った際に料金が発生する仕組みとなります。
アフィリエイターへの報酬とASPへの仲介手数料が掛かってきます。
CV発生時の費用以外にも、広告を出稿する際にASPへの初期費用・契約のための月額費用も掛かってきます。
認知度の拡大が図れる・高い費用対効果が得られるといったメリットがありますが、CV発生時の報酬にASPへの初期費用や月額費用が発生する・自社製品やブランドと乖離するアフィリエイターによって掲載されてしまう可能性があるといったデメリットも考えられます。
ECサイト運営で広告を使用するメリット、効果
ECサイト運営で広告を使用するメリットには、「顕在層へのリーチを拡大出来る」「届けたい層へのセグメントが可能」などの2つのメリットが挙げられます。
顕在層へのリーチを拡大出来る
ECサイト運用でWeb広告を利用するメリットとして、顕在層へのリーチを拡大できるというメリットがあります。
自社のユーザーはサイトを訪問してくれますが、自社のことを知らないユーザーに対しては積極的にアプローチを行っていかないといけません。
Web広告は配信を行うメディアを選択できますし、どんなユーザーに対して広告を見てもらいたいのかを細かく設定することができます。
アナログ媒体の広告とは違い、Web広告は効果測定も簡単で行えますので、出稿条件・配信内容をより効果の出る形へと変化させることができます。
届けたい層へのセグメントが可能
Web広告は「誰に広告を見せたいのか」を指定でき、届けたい層へのセグメントが可能です。
例えば、20~30代の男性がネットサーフィン・YouTubeを見ていますと、マッチングアプリや脱毛関係の広告が流れることが多いですが、そのような広告を見かけない人も存在します。
Web広告はその人に合わせた内容の広告を届けることが可能です。
ユーザーを属性ごとに分けるために必要な項目は以下の通りです。
①ユーザー:国、地域、言語、年齢、性別、学歴、勤務先、交際ステータス
②興味関心:趣味、よく使用するアプリ、音楽、映画、スポーツ、検索クエリ
③端末情報:OS、デバイス、ブラウザ
ECサイトが広告を使うデメリット
ECサイトが広告を使うデメリットには、「専門知識が必要」「費用対効果が合わない可能性がある」などの2つのデメリットが挙げられます。
専門知識が必要
Web広告は簡単に効果測定を行うことができますが、その反面、データを適切に解析し、課題の発見・施策の選定を行うことが求められますが、相応のスキルが必要になってきます。
媒体によって指標は異なりますし、多角的な視点で分析を行うことが重要となります。
効果測定などの専門知識を有する者が社内に居ない場合、外部に委託するなどの方法がありますが、その場合にはコストが掛かってきますので注意が必要です。
費用対効果が合わない可能性がある
比較的低コストで始めることのできるWeb広告ですが、広告による売上を確保できなければ、どの種類のWeb広告を使用する場合でもコストだけが掛かってしまい、費用対効果が合わない可能性があります。
例を挙げますと、リスティング広告の場合では、選択するキーワードによっては想定よりも広告費がかさんでしまう可能性があります。
クリック単価は競合が多いキーワードほど高額になる傾向があるからです。
また、アフィリエイト広告の場合でも、自社のブランドイメージと乖離するアフィリエイターによってHPに掲載されてしまうと、費用が掛かる割に集客が全く期待できないという事態に発展してしまう可能性があります。
ECが広告費を掛ける比率
ECでは広告費の使い方次第で集客が大きく異なります。
以下で、広告費の平均割合等について説明していきます。
平均的なROAS
一般的にECの売上高に占める広告宣伝費の平均は20.1%だと言われています。
つまり、売上が100万円だと想定した場合には広告費は20.1万円かかることになります。
ROASを計算すると、(売上)100万÷(広告費)20.1万円×100=約497%となります。
売上が50万の場合でも、(売上)50万÷(広告費)10.05万円×100=約497%となります。
つまり、こちらが平均的なROASといえるでしょう。
ROASとは
そもそもROASとは「Return On Advertising Spend」の頭文字を取った略語であり、「広告の費用対効果」を表す指標になります。
広告費に対する売上の割合を%で表します。
ROASが高いほど、広告の費用対効果が高いと判断できます。
基本的にはROASは100%以上でないと費用対効果が低いと考えられます。
他業界の平均的なROAS
一般的なビジネスでは、広告宣伝費の割合は売上高に対して5~10%程度と言われていますので、他の業界に比べてECの広告費が高いことが分かります。
売上が100万円の場合、(売上)100万÷(広告費)10万円×100=約1,000%
つまり、他の業界のROASの方がEC業界よりも高いことが分かります。
ただし、EC業界については他の業界よりも「粗利率」が高い業界になりますので、他の業界よりも広告費を掛けることができ、広告費を掛けることで売上増加を進めることができます。
他の業界は広告費がEC業界よりも低い傾向にありますが、その他の経費が多く掛かっていますので、粗利率はEC業界より低い傾向にあります。
ECが広告予算を決める方法
実店舗を持っていないECの場合、広告そのものが「売り場」としてとらえられます。
つまり、広告費は売上に多大な影響を与える「直接費」として考えている企業が多いということです。
広告を出さなければ、売上を上げる目途がつかない場合もありますので、どうしても広告費が占める割合も大きくなります。
ECでは売上を向上させるためにどの程度の割合で広告費をかけるのかが重要になります。
目的に合わせて考え方が違う
ECの広告予算を決める際、「目的」に合わせて考え方が違うことを知っておきましょう。
例えば、「サイトへのアクセス数をKPIとする場合」と「売上を向上させたい場合」では内容が異なります。
以下でそれぞれについて詳しく説明していきます。
サイトへのアクセス数をKPIとする場合
まずは、サイトへのアクセス数をKPIとする場合の計算方法です。
・目標の訪問顧客数×クリック単価=広告予算
例:20,000人×3円=60,000円
売上を向上させたい場合
売上を向上させたい場合の計算方法になります。
・売上目標÷平均購入単価=購入顧客数
例:2,000,000円÷2,000円=1,000人
・購入顧客数÷購買率=訪問顧客数
例:1,000人×1%=100,000人
・訪問顧客数×クリック単価=広告予算
例:100,000人×5円=500,000円
広告を出す目的をしっかりと明確にし、上記で紹介したシミュレーションを行った上で広告予算を決定してください。
ECサイトでweb広告を適切に使用するポイント
ECサイトでweb広告を適切に使用するポイントには、「自社に合った広告媒体の選定」「改善活動を必ず行う」「自社運用か代理店運用かを決める」「目的とターゲット、目標設定」などの4つのポイントが挙げられます。
自社に合った広告媒体の選定
Web広告には上記で紹介した7つの種類がありますので、自社の狙いたい顧客・ユーザーの多くが使用しているメディアを選択しないといけません。
また、導入の目的に合わせた広告を選ぶことも重要になります。
とりあえず、多くのユーザーにサイトに訪問してもらいたい場合には、リスティング広告・ディスプレイ広告を選択すると良いでしょう。
じっくり自社ファンを獲得したい場合には、記事広告・SNS広告、購入者等を増やしたい場合には、アフィリエイト広告などを選択すると効果的です。
改善活動を必ず行う
Web広告については出稿してしまえば、放置しても大丈夫というものではなく、継続的に効果測定・改善を繰り返しながら運用していかないといけません。
アナログ広告とは違い、アクセス数・クリック数などはすぐに確認・把握することができます。
ユーザーのアクセスする時間帯・属性などの情報を把握できますので、効果測定・改善を繰り返すことによって広告効果を高めることができます。
自社のターゲットに適したアプローチを行うためには、効果測定・改善を定期的に繰り返して行う必要があります。
自社運用か代理店運用かを決める
自社にWeb広告に関する専門知識を有する人材が居る場合には、自社の運用チームを作って自社運用を行うことでコストを抑えることができます。
しかし、専門知識を有する人材が居ない場合には、代理店に運用して頂く方法もあります。
代理店運用の場合には、他社へ依頼するための費用がかかってきますので注意が必要です。
目的とターゲット、目標設定
自社でWeb広告を採用する前に、導入の目的やターゲットを明確にし、目標を設定しておきましょう。
理由としては、自社の「目的」によってターゲット層は異なりますし、選ぶべきWeb広告施策も異なるからです。
また導入後の「目標設定」を行っていないと、Web広告を掲載したことに満足してしまい、その後の効果測定・改善をしなくなる可能性があります。
目標設定が行われていますと、その目標に至るために効果測定・改善をしっかりと行っていき、Web広告の効果を最大限に発揮することができます。