越境ECとは、インターネットを通じて自国から商品やサービスを海外の顧客に販売する方法であり、世界的に需要が急激に伸びている市場です。
越境ECを上手く取り入れることで、企業のビジネスの幅が大きく広がりますが、対応するためのECサイトが必要であったり、国ごとの販売ルールがあるなど、把握しておかないといけないことも沢山あります。
この記事では、越境ECについて改めて説明しながら、メリット・デメリットについても詳しく解説していきます。
越境ECとは?
越境ECとは、海外へ日本国内の商品をインターネットを活用して販売を行うEC(電子商取引)のことをいい、現在急成長をしている市場であるため、EC市場で最も注目を集めています。
マーケティング戦略的にも販路が格段に広がるため、新しい顧客の開拓や売上増加に繋がっていきます。
越境ECの市場規模
現在、全世界での越境ECの市場規模は年々増え続けており、2017年時点でもアメリカ・中国などでは5,300憶を越えています。
市場規模は、2027年には4兆8,561億にまで達すると予想されています。
インバウンドを越境ECが上回る
2014年に中国人が日本から越境ECにて購入した商品の合計額は6,064億円であり、同じ年のインバウンド購入額が4,020億円であることを考えますと、「インバウンド」の市場を越えているといえます。
今現在、コロナの猛威が日本だけでなく、世界情勢に大きな影響を与えており、「爆買い」と言われた中国人も日本に来れなくなっている現状があり、インバウンドの需要が大きく低迷していますが、越境ECであれば中国に居ても商品を購入できるため、需要を伸ばすことができる可能性があります。
越境ECが拡大している背景
世界中で越境ECの市場が伸びており、拡大しているのにはいくつかの理由があります。
スマートフォンの普及
最も大きな理由として考えられるのが、「スマートフォン」の普及です。
世界中でスマートフォンが普及したことで、多くの人がスマートフォンからインターネットを閲覧できるようになったため、いつでも・どこでも買い物ができるようになりました。
国内のECサイトだけでなく、海外のECサイトも閲覧して価格・機能性などを比較できるようになったため、ショッピングモールが近くにない人でも気軽に海外の商品を購入できるようになりました。
訪日外国人のリピート購入
コロナ禍になる前までは、訪日外国人の数がかなり伸びており、その約9割はアジア圏の国からの観光客でしたが、日本で家電製品・食料品・衣服・衛生用品などを購入して帰国した際に、品質の高さ・価格などで気に入ってもらうことができ、越境ECサイトを通じてリピートで購入して頂いている事例があります。
また、一度も日本に来たことがない人でも気軽に購入できるため、越境ECを利用して日本製の商品を購入して頂けることも多いです。
海外のEC利用が伸びてるから
2020年の世界のEC市場規模は440兆円であり、世界的に不況である中でもEC市場が伸びていることが分かりますが、越境ECも同じように市場が伸び続けています。
残念ながら日本のEC市場は19兆3,609億円であるため、世界の基準に比べると低い結果になっていますが、今後の発展に十分期待できます。
越境ECの事例
越境ECを取り入れて成功している企業も多数存在しています。
実際の成功事例を研究することで、自社が越境ECを導入する際の参考にすることができますので、必ずチェックしてください。
メーカーズシャツ鎌倉株式会社
メイドインジャパンの品質の高いシャツを低価格で提供しているメーカーズシャツ鎌倉株式会社も、越境ECを取り入れて成功した事例の一つです。
2012年にニューヨークに実店舗を出店して以降、ECサイトでの販売も始めました。
越境ECでも、スムーズな販売や管理を行うために国内のECサイトと在庫管理を一元化、
決済はドル建て決済・PayPalにも対応するなど、海外の顧客でも利用しやすいサービスを展開していきました。
その結果、顧客満足度が向上して、オンラインショップでの注文数や店舗への来客数が増加しました。
Tokyo Otaku Mode
Tokyo Otaku Modeとは、日本のゲーム・アニメ・漫画などのポップカルチャーを海外に届けるため、情報発信や販売を行っている企業です。
本社をアメリカのオレゴン州に置いており、越境ECの先駆けとも言われている企業です。
2013年にオンラインショップである「Tokyo Otaku Mode Shop」を開設し、日本のアニメ・ゲームのグッズを海外に販売しています。
物流作業の内製化・翻訳チームを外国人で編成・フェイスブックを利用した宣伝など、きめ細かい取り組みや対応を行い、支持を得ている企業になります。
越境ECのメリット、デメリット
成長を続ける越境ECですが、勿論メリットとデメリットの両方があります。
メリット・デメリットの両方をしっかりと理解することで、自社に導入する際に失敗することがなくなりますので、チェックしておきましょう。
越境ECのメリット
越境ECのメリットとして挙げられるのが、商圏を拡大できる点と店舗よりも運営がしやすい点です。
海外に商圏を拡大できる
日本は少子高齢化に伴い、人口が減少しているため、日本市場は少しずつ規模が小さくなってきていますが、中国では人口が増え続けていたり、世界の市場は大きくなってきています。
2019年の時点で世界の人口は77億人であり、2100年までには110億人に達することが予想されていますが、世界の人口が増え続けているため、ECサイトを利用して海外への販売を行えば商圏の幅を拡大することが可能となります。
実店舗よりも運営がしやすい
越境ECは実店舗よりも簡単に出店しやすく、運営もしやすいと言えます。
実店舗での運営をするためには、現地でテナントを契約するだけでなく、人を雇って社員教育もしないといけないですし、商品を日本から運び込む手間も必要となります。
越境ECでも出店には費用が掛かりますが、実店舗よりも手間とコストを抑えて運営を始めることができます。
越境ECのデメリット
越境ECのデメリットとして挙げられるのが、配送コストが高額である点と国ごとに対応が異なる点などです。
高額な配送コスト
国内に配送するよりも海外へ配送する方がコストが高くなってしまうことは、予想できる範囲のことであると思います。
海外の顧客にとってこの配送コストの高さがネックとなっている場合が多く、輸送までの時間や手間が掛かる分、紛失のリスクも国内の輸送よりも確率が高くなります。
国ごとに異なる対応が必要
国ごとに法律や規制、輸送の状況・支払い方法などが違ってくるため、越境ECで参入するためには、それらの対応が必要となってきます。
また、ECサイト内の商品情報を全て多言語化しないと商品が売れないですし、税関が通るかの問題もあるため、日本から商品を輸出するだけでもかなりの手間が掛かります。
越境ECを始める前に知っておくべき注意点
越境ECを始めるためには、いくつかの注意点に留意する必要があります。
ニーズがあるか、海外向けか
国内で人気の製品であっても海外では需要がない場合もあるため、越境ECを展開する国や地域で、自社の製品やサービスにニーズがあるのかを確認しておく必要があります。
出店後の販売計画を建てる
越境ECでは、必ず思わぬトラブルが発生すると考えておく必要があり、トラブルの度にPDCAを回していき、販売計画を改善しないといけないため、事前に出店後の販売計画をしっかりと考えておく必要があります。
事前にしっかりと考えておくことで、トラブル時にも対応しやすくなります。
配送料や手数料が国内よりも高い
越境ECの場合、配送料や手数料が国内よりも高くなるため、顧客の負担が大きくなり、価格でのアピールが困難になります。
また、為替レートの変動により価格に大きな差が出てしまうケースもあり、その差によっては購入率に影響が出てしまうことを知っておく必要があります。
関税などの規制が多い
国境を超える取引には商品やサービスに対して関税が掛かるだけでなく、関税法で輸入が禁止されている場合であったり、現地の関税ごとに規制があるため、それらをしっかりと把握しておく必要があります。
輸出入の許可リストは、各国の税関のホームページに記載されています。
越境ECを始めるステップ
現地での調査や販売計画を立てた後は、越境ECを始めるためのステップの確認です。
どういった手順で始めていけばいいのか、詳しく解説していきます。
商品の準備
何よりも最初にするべきことは「商品の準備」です。
国内での販売だけでなく、越境ECでの販売にも対応できる十分な在庫が必要になりますし、現地の法律での商品の扱いについても確認しておく必要があります。
ターゲットの決定
販売していくべきターゲットについて、国・収入・年齢・性別・家族構成・趣味まで細かく設定しておく必要があります。
ターゲットを明確にしないまま販売計画を進めてしまうと、消費者の目に留まることがなくなり、良い結果を出すことが難しくなります。
また、国によっては購入に至るまでのプロセスも異なってくるため、現地の状況や情報を調べておくと良いでしょう。
法律や規制の確認
先程から少し触れていましたが、国や地域によって法律や規制の内容が異なるため、出店前に必ず確認しておく必要があります。
特に中国などでは頻繁に法律や規制が改正されるため、現在の状況をしっかりと確かめておきましょう。
出店方法の検討
越境ECで出店する場合には、主に5つの方法があるため、どういった出店方法をしていくべきなのかを検討しておく必要があります。
日本で独自の越境ECサイトを構築する
自社で越境ECに対応したECサイトを作成する方法であり、越境ECに特化したプラットフォームを使用することで世界のローカルな決済方法に対応できるため、自社のECサイトの知名度を上げていくことができます。
ただし、現地のニーズの把握が難しい点・現地の言語に詳しいスタッフが居ないと対応が難しい点などのデメリットがあります。
現地法人を設立する
現地に法人を設立して、自社で越境ECを構築していく方法であり、特徴としては越境ECの規模が大きくなり、本格的なビジネス展開が可能となります。
現地で法人を設立するためには、初期コストが掛かってしまうため、ハードルが高いというデメリットもあります。
現地のモールに出店する
現地のモールに出店する方法であり、最も出店するまでに手間が掛からない方法であるため、ビジネスの規模があまり大きくない場合に向いている方法といえます。
自社ECサイトや日本国内のモールで対応する
自社ECサイトや日本国内のモールで対応する方法であり、この場合ですと、越境ECの可能性やビジネスの規模の調査が目的の場合が多いです。
越境ECに出店してしまえば、ある程度のコストが掛かってしまうため、本格的に出店するために探りを入れたいのであれば、自社ECサイトなどでの個別対応から始めてみるのも一つの手です。
現地のECサイトに出店する
日本ではなく、現地のプラットフォームを利用してECサイトを作成して出店する方法もあります。
進出予定の国において、ある程度自社製品の認知が浸透していれば可能ですが、これから認知度を上げていきたい企業には向いていません。
また、ECサイトの運営を自社でコントロールできる体制が確立されていないと難しいといえます。
EC運営に合わせて確認したいこと
EC運用に合わせてSNSの運用は出来ていますでしょうか?
ECにおいて、SNSの活用は必須です。
LINEやInstagramをECに活用した事例を下記にてまとめていますので、併せてぜひご覧ください。