今までは企業側が発信した情報を参考にして消費者が商品を購入していましたが、SNSや口コミサイトなどが普及したことにより、多くの消費者がネット上に発言されている生活者のリアルな声を参考にするようになりました。
今回の記事では、ソーシャルリスニングの重要性から、実施の方法、おすすめのツールまで詳しく説明していきます。
ソーシャルリスニングとは
ソーシャルリスニングとは、Twitter・インスタグラム・FacebookなどのSNSやブログ・掲示板・口コミサイトなどソーシャルメディア上で交わされているユーザーの会話内容を収集・分析を行い、ビジネスに反映させるマーケティング手法になります。
SNSでは幅広い内容が発信されているため、商品・サービス・広告宣伝・顧客対応などのさまざまな活動に活用できます。
ソーシャルリスニングを行う事で得られる事
ソーシャルリスニングを行うことで得られることは、SNSやブログ等で得られるユーザーの会話・レビューなどの情報です。
これらを分析していくことで、製品開発やリスク管理などのビジネス活動に活用することができます。
以前はユーザーの声を集める手法として、アンケート調査を実施している企業が多かったですが、アンケート調査で定められた「問い」に対する回答よりも、ソーシャルメディアで交わされているユーザーの自然な会話の方が本心を聞き出しやすいという特徴があります。
さらに会話の内容も時系列で知ることができますし、ユーザーが掲載している写真・画像から情報を得られる点も大きな特徴といえます。
ソーシャルリスニングが注目される背景
ソーシャルリスニングが注目される背景には、以下の2つの理由が挙げられます。
以下で詳しく説明していきます。
SNSの普及でユーザーが生の声を発信するように
インターネットが普及し、SNSも普及した現在ではユーザーが生の声を発信することが自然なこととなり、他のユーザーも企業が発信する内容以外にもSNS上での生の声を見ることのできる環境が整ってきました。
そのため、今までは企業の情報のみを参考にして商品を購入していた消費者も、他の消費者の口コミ等を参考にして商品を購入するようになりました。
結果として、企業側は消費者の生の声を参考にし、企業のマーケティング活動に活かす必要性が出てきました。
多くの消費者が口コミを参考するようになった
総務省の発表したアンケート結果によると、「買い物を行う際にレビュー・口コミをどの程度参考にするか?」という質問に対して、20~60代の全ての年齢で「かなり参考にする」と「まあ参考にする」という回答が全体の60%を超える結果になっています。
つまり、多くの消費者がSNSでのレビューや口コミサイトの内容などを参考にして商品を購入しているため、これらの生の声を収集・分析し、ビジネスに活かすことが重要となります。
(総務省|平成28年版 情報通信白書|情報資産(レビュー(口コミ)等) (soumu.go.jp) より引用)
また「レビューや口コミを参考にして製品を購入したことがあるか?」と質問したところ、全ての年代で8割以上の人が「何度もある」「何回かある」と答えていました。
ソーシャルリスニングを行う意義、メリット
ソーシャルリスニングを行う意義・メリットには、「顧客の声をマーケティングに活かせる」「販促の効果指標として使える」「潜在的なリスクの回避に使用できる」といった3つのメリットが挙げられます。
顧客の声をマーケティングに活かせる
製品名・カテゴリ名などの特定キーワードに対するレビューや口コミを収集することで、そのキーワードに対する消費者の動向が分かります。
「同一キーワード」での検索を定期的に行うことで、製品に対するニーズや業界の動き・消費者の投稿数が増減する時期などが読み取れますので、その情報をマーケティング活動に活かすことができます。
販促の効果指標として使える
例えば、新商品を販売した場合や大きなプロモーションを打ち出した時には、消費者のリアルな意見を知りたいと思いますが、ソーシャルリスニングを行えばそれらの情報をSNSからリアルタイムに収集することができます。
上記のような施策を打ち出した際には、ソーシャルメディアで関連発言も多くなりますので、消費者のリアルな意見を参考にしてください。
また、ソーシャルメディアでの消費者の発言を見ることで、自社・製品・サービスに対するブランドイメージも知ることができます。
その発言内容を分析し、自社が目指すブランドイメージに近づくように調整していきましょう。
潜在的なリスクの回避にも
実はソーシャルリスニングは潜在的なリスクの回避にも活用できます。
自社製品やサービスに関する批判・指摘内容、風評被害に繋がる恐れのある発言を確認してリスクを想定しておくことで、リスクが顕在化する前に対処することができます。
根拠のない「〇〇だと思う」という発言があったとして、情報が拡散されていくうちに「〇〇が真実らしい」という信憑性の高い情報のように変化してしまうことがあります。
その誤解を招く表現が自社のブランドや自社製品に影響を及ぼすケースもありますので、そのような事態を招く前に事前に手を打つ必要があります。
炎上対策についてさらに詳しく知りたい方は、以下のURLの記事をご覧ください。
ソーシャルリスニングのデメリット
ソーシャルリスニングのデメリットには、「定量的な計測が難しい」「顧客の声が必ず正しいとは限らない」の2つのデメリットが挙げられます。
定量的な計測が難しい
ソーシャルリスニングを行う上で気を付けないといけないのは、それぞれのユーザーが自分の言い回しや言葉で意見を言っているため、定性的な評価は可能ですが定量的に計測することが難しいです。
そうならないためにも、事前に「目的」や「キーワード」を決めておき、適切な情報を収集できるようにしておいてください。
顧客の声が必ず正しいとは限らない
また消費者の声が全て正しいとは限らない点についても知っておきましょう。
場合によっては、消費者の意見に合わせすぎるとオリジナリティが失われてしまい、商品の価値が下がってしまう危険性があります。
ソーシャルリスニングでの分析結果を闇雲に取り入れるのではなく、しっかりと検討して反映していきましょう。
ソーシャルリスニングの実施方法
ソーシャルリスニングを実施する方法には、以下の2つの方法があります。
媒体の検索窓の利用
SNSやインターネットに設置されている無料の検索窓を利用する方法があります。
無料で利用でき、まずは自社内で小規模での実施を検討している際には効果的だといえます。
媒体の検索窓の利用時に使用できる無料ツールには以下のものがあります。
Google:Googleトレンド、Googleアラート
Yahoo!:Yahoo!リアルタイム検索
Twitter:TweetDeck、Keywordmap for SNS
Instagram:インサイト
有料ツールの利用
有料ツールを活用する場合には調査から分析は当然ですが、調査結果から導き出した施策の実施サポートと結果分析レポートまで実施できる種類のツールが多く存在します。
また、メディアを特定のものに特化したツールや多数のメディアを対象にしたものまで幅広くあります。
ソーシャルリスニングを成功させるためには「分析」が重要になりますが、自社で十分な分析を行えないと予想される場合には、有料ツールの使用も検討してください。
ソーシャルリスニングを成功させるポイント
ソーシャルリスニングを成功させるためのポイントをいくつかご紹介していきます。
実施目的の明確化
ソーシャルリスニングで「何」を知りたいのかをはっきりとさせ、「実施目的」を明確化することが重要です。
実施したキャンペーンの評判や業界のトレンド、製品・サービスに対する評判などがこれに該当します。
情報を集めるだけでは意味がなく、費用を掛けた割には効果が得られません。
効果を出していくためにも、「実施目的」を明確にした上で分析を行う必要があります。
実施内容の定義
次に実施内容を定義していきます。
実施内容とはサービス名・会社名・業界・競合名などのことであり、その情報を手に入れるために適切なキーワードを設定する必要があります。
基本的にキーワードを設定し、それに関する発言を拾うだけでは精密な分析は行うことができません。
SNS上では「どんな人物」が「どのような発現」をしたかによって意味や影響が異なってきます。
発言内容も詳しく設定しておくと効果的です。
具体例を説明しますと、「スマホについての発現」ではなく、「スマホの料金に関する発言」の方がしっかりと焦点を絞って検索ができます。
結果として分析の精度が向上します。
集めたデータを次のアクションまで落とし込む
SNSや口コミサイトで得た情報を分析していき、企業のマーケティング活動に落とし込んでいきます。
集めた発言内容を「ポジティブ」「ネガティブ」「ニュートラル」に分けていき、どういった点に対してポジティブであるのか等を深掘りしていきましょう。
ソーシャルリスニングについては、数値のデータをベースにしている定量、背景や原因を示す定性の2つの分析を行う方が良いでしょう。
数値分析
収集した情報を数値の観点から分析を行います。
数値分析では投稿数・リーチ数・ポジティブなどの3つの分類の数値を明確にします。
数値を拝見すれば、調査内容に関するユーザーの大まかな動向を知ることができます。
次に投稿した内容がどれほどのユーザーに見て頂けているのかを確認します。
投稿数が多いにも関わらず、拡散されていなければ影響力はないと言っても過言ではありません。
また、各投稿を行ったアカウントのフォロワー数も確認します。
それを調べることで指定キーワードを含んでいる投稿がどの程度のユーザーに届いているのかが明確になります。
最後に投稿内容がポジティブ・ネガティブ・ニュートラルのどれに該当するかも確認します。
自社製品のキーワードが含まれた発言が、どの程度の割合でポジティブやネガティブに分かれているのかを確認できます。
時系列の推移・競合との比較を行うことで、さらに詳しく背景を知ることができます。
アカウント分析
次の段階として投稿アカウント軸で確認します。
影響力のあるアカウント・よく使用されているキーワードの抽出を行い、定性的な視点から傾向値を明確にします。
フォロワー数が大勢いるアカウント・反応の多いアカウントを見つけ、それらの傾向を確認していくことで、拡散されやすいキャンペーンに繋がるケースがあります。
影響力の強いアカウントの動向を把握することで、ターゲットを絞った施策を考えやすくなります。
ツールの種類によりますが、キーワードの抽出が可能なツールも存在します。
その場合、自社製品の名称を含む投稿の頻出キーワードがどのようなものかによっては、購入動機または購入場所を洗い出せることがあります。
ネガティブキーワードについても、自社の弱点・改善点を知るきっかけに繋がります。
セグメント分析
数値分析やアカウント分析で明確にした情報をさらにセグメントに分けていきます。
事例を挙げますと、「どこの情報を見て投稿したのか」「投稿者の関心度の高さ」等により分けていくことで、消費者の動向が分かりやすくなります。
関心度を「商品ページを見た」「お気に入りに登録した」「購入した」の3つに分類し、それぞれを「ポジティブ」「ネガティブ」に分類します。
キャンペーン・広告施策を打ち出した後の反応を確認して、「購入した」×「ポジティブ」の投稿が多い場合には、施策が成功したといっても良いでしょう。
ツール選びを間違えない
ソーシャルリスニングのツールには主に3つの種類があります。
以下でそれぞれのツールのポイントについて説明していきます。
キーワード収集や分析効率化が可能なツール
最もメジャーで知られているのが、キーワード収集や分析効率化が強みのツールになります。
キーワード入力だけで口コミ件数・属性等を分析できるツールであるため、初めて活用しようと考えている企業に向いています。
様々な分析方法が使用できるツール
言語処理エンジンを活用して複雑な分析を行うことができるツールになります。
多角的に情報を分析することが可能であり、使用方法によってはマーケティング活動に大きな影響を与えることができます。
海外市場への参入を考えている企業にとっては、多言語対応が可能であるかも確認しておく必要があります。
SNS運用に向いているツール
情報の収集や分析以外にも、SNSアカウントの予約投稿・承認フローの管理等、アカウントの運営に役立つ機能が搭載されているツールになります。
SNSに分析した情報を活かしたいケースでは、この種類のツールが向いています。
おすすめのソーシャルリスニングツール
おすすめのツールには「Keywordmap for SNS」「Googleトレンド」「Yahoo!リアルタイム検索」の3つが挙げられます。
Keywordmap for SNS
Keywordmap for SNSはTwitterの運用や分析が行えるツールになります。
投稿管理・アカウント分析・フォロワー分析・ソーシャルリスニング・ハッシュタグ調査など多くの機能が搭載されています。
投稿に含まれるキーワードを除外したり、感情別のフィルタや類似投稿の削除といった「絞り込み機能」が搭載されていますので、さまざまな角度から分析を行い、ユーザーのニーズを明確にすることができます。
Googleトレンド
Googleトレンドとは、検索キーワード・トピックの検索数の推移などをグラフで確認することのできる無料ツールです。
検索キーワードの検索回数の増減、期間の指定をして調査できますので、過去~未来の市場調査を行うことができます。
Googleトレンドのメニューには以下の4つの種類があります。
①調べる②急上昇ワード③検索で振り返る④登録
特定の国や地域を指定してのソーシャルリスニングも可能であり、特定キーワード・トピックに関する情報をメールで受け取ることができます。
Yahoo!リアルタイム検索
Yahoo!リアルタイム検索は、Twitter・Facebook・Instagramの投稿の中から特定キーワードで一括検索できるツールです。
トップには急上昇ワード・トレンド・人気ツイート・閲覧されているテレビ・電車遅延情報などがあります。
またキーワードのツイート数の推移を24時間、7日間、30日間の種類で確認できます。
その他にも、ユーザーの感情の推移をグラフで表示してくれます。