近年、ECにおいて「ユニファイドコマース」という新しいマーケティング手法が注目されています。
これまでの主流であったオムニチャネルやOMOとはどのような違いがあるのでしょうか。
今回の記事では、新しいユニファイドコマースの考え方について、オムニチャネルやOMOとの違い、成功事例や導入方法をご紹介していきます。
ユニファイドコマースとは
ユニファイドコマース(UnifiedCommerce)とは「統一された商取引」という意味であり、「顧客一人ひとりのニーズに合わせたサービスや購入体験を提供する」というマーケティング手法のことを指します。
簡潔に言うと、ユニファイドコマースとは、次の2つの要素で構成されていると考えると良いでしょう。
①多様化するチャネルで得られた顧客データを統一する
②一人ひとりのニーズをより正確に分析して最適なアプローチ且つ顧客にとってのより良い購入体験を提供する
ユニファイドコマースを活用した施策事例について具体的に挙げるとすると、次のような事例が挙げられます。
ユニファイドコマースの施策事例
〈アパレル店〉
実店舗とECサイトの両方で得られた、購入履歴や来店日、試着した商品の情報、問い合わせ内容、接客したスタッフの情報を統合して顧客のデータベースを作成し、接客する際の商品案内やDMなどでのおすすめ商品の紹介、おすすめコーディネートの発信などのアプローチに反映する。
〈日用雑貨店〉
店舗でボディソープを購入した顧客に対して、使い切るタイミングでECサイトや定期購入の案内、別の香りや効能のある商品をメルマガで配信する。
〈靴屋〉
革靴を購入した顧客に対して、購入した商品のメンテナンス方法を紹介するコンテンツを提供し、ECサイトで購入できるメンテナンスグッズの紹介と合わせたサンクスメールを配信する。
ユニファイドコマースが注目される背景
ユニファイドコマースを構成する要素に、多様化するチャネルを統一するとあります。
現在、人々の生活も変容し、インターネットやSNSが普及していくと共に、オンライン・オフライン含めた顧客との接点(チャネル)も多様化しています。
主なチャネルとしては、サイトや実店舗、メール、SNS、カタログ、イベント等が挙げられます。
これらのチャネルを複数用いる事業者が増え、結果、事業者間の競争が激しくなり、ユーザーに自社の商品を購入してもらうためには、一歩踏み込んだアプローチをする必要性が出てきました。
ユニファイドコマースが注目されるようになったのは、こういったチャネルの多様化からの事業間競争が激しくなった事が要因として挙げられるでしょう。
ユニファイドコマースと類似手法の違い
これまでの主流であった、オムニチャネルやOMOとユニファイドコマースとでは、どういったところが異なるのでしょうか。
ここでは、ユニファイドコマースと類似手法であるオムニチャネル、OMOとの違いについて説明していきます。
オムニチャネルとの違い
オムニチャネルとは、実店舗やECサイトなどの様々な販売チャネルを連携させることで、顧客が好きなタイミングと購入方法を選択でき、顧客にとって利便性の高い購入環境をつくるマーケティング手法です。
ユニファイドコマースとオムニチャネルでは、様々なチャネルのデータを統合するところまでは同じです。
この2つの大きな違いは、ユニファイドコマースではデータの統合後、さらに踏み込んで、顧客一人ひとりに合わせた最適なアプローチをするところまでが含まれるという点が挙げられます。
OMOとの違い
画像引用元:マクドナルド モバイルオーダー | McDonald’s Japan
OMOとは、「Online Merges with Offline」の略であり、「オンラインとオフラインの融合」という意味を持ちます。
本来であればオンラインのみ、オフラインのみで提供されていたサービスを、「ユーザーの利便性」を高める目的として、オンライン・オフラインを区別せず用いられるマーケティング手法となります。
例を挙げると次のようなサービスがあります。
- UberEatsや出前館などの宅配サービス
- 無人スーパー、無人コンビニ
- アプリ予約でシェアカー
ユニファイドコマースとOMOでは、ユーザーがオンライン・オフラインに関わらず、モノやサービスに対して得られる経験や体験を主軸とする点では共通した考え方を持っています。
この2つの大きな違いは、OMOではユーザーの利便性や売上向上を重視していますが、ユニファイドコマースでは顧客体験を充実させることを重視している点が挙げられます。
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ユニファイドコマースを取り入れて実現できること
ユニファイドコマースという考え方が生まれる前から、顧客のセグメント化や、セグメント毎の施策は実施されていました。
実際にリスティング広告やディスプレイ広告を打ち出す際には、年齢や性別、居住地域などでセグメント化し、最適なアプローチを試みますよね。
ですが、ここでセグメント化した顧客情報はあくまで予測されるものであり、不特定多数へ効果的かどうかわからないアプローチしたところで、実際の顧客の流入に繋がっているかどうかの検証ができません。
それではユニファイドコマースを取り入れて実現できることはどのようなことでしょうか。
主に次のようなことが挙げられます。
- 高度な One to oneマーケティング
- データの統合やセグメント作成が容易
- 顧客満足度の向上による売上・利益の最大化
それでは詳しく見ていきましょう。
高度なOne to oneマーケティング
まず、One to oneマーケティングとは、顧客一人ひとりのニーズに合った最適なアプローチから、売上や見込み客を増やしていくという施策のことを指します。
オンラインではサイトやアプリの購入履歴や会員登録情報、オフラインではPOSレジから顧客情報を得ることができます。
こういった自社の持つ様々なチャネルから統合した顧客データに基づいた、より正確な情報から、一人ひとりに合った施策を打ち出します。
正確な情報に基づいているため、より顧客の興味を惹きやすく、流入率を上げることができます。
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データの統合やセグメント作成が容易に
様々なチャネルを活用していれば、多方面からのクオリティの高い顧客データを集めることができます。
クオリティの高いデータが多ければ多いほど、集約や分析を円滑に行えるBIやCRMの導入が必要となるでしょう。
こういったシステムを導入することで、データの統合やセグメントの作成が容易になり、最適な施策も打ち出しやすくなります。
顧客満足度の向上による売上・利益の最大化
ユニファイドコマースを導入し、統合されたデータを活用すれば、顧客の購入履歴や問い合わせ内容を元に、顧客の興味
を引く商品をレコメンドし、ECサイトへ誘導することができます。
興味のある商品をおすすめしてもらうと、顧客としても嬉しく満足度に貢献します。
さらには、「実物を見たい」「サイトで貯めたポイントを店舗で利用したい」「ECサイトで使用しているクレジットカードで決済したい」などの横断的で良質な購買体験が提供できれば、顧客がファン化し、リピート利用や売上に貢献することができます。
ユニファイドコマースの成功事例
それでは、ここからはユニファイドコマースを活用し成功している事例をご紹介していきます。
zoff
画像引用元:Zoff Virtual Counter
国内外問わず300店舗以上展開しているメガネブランドのzoff。
店舗とECサイトの顧客データを統合することにより、サイト上で度数やレンズの種類、購入した商品を画像で確認できるなど、ユーザーの利便性とクオリティの高い情報を提供できるようになりました。
また、顔写真をアップすることで気になるメガネをバーチャル試着できる「Zoff Virtual Counter」により、ECサイト上で気軽にメガネを購入できるようになりました。
カインズ
画像引用元:カインズアプリ – ホームセンター通販のカインズ
全国200店舗以上を展開するホームセンターカインズ。
「お店が広くて商品の場所が分からない」「欲しい商品の在庫がない」などの問題を解決する戦略として、「CAINZアプリ」をリリースしました。
このアプリでは、コンシェルジュ的役割として、売り場の案内や在庫数の確認、アプリでの事前注文から専用駐車場での受け渡しサービスなども利用できます。
また、アプリを通して購入や行動履歴が分析できるため、統合したデータに基づいたキャンペーン施策を実施し、売上向上につながりました。
アプリ会員数も約50万人から約150万人にまで増加させることに成功しています。
ナノ・ユニバース
画像引用元:試着も、組み合わせも。 来店予約サービス | ナノ · ユニバース公式 …
全国で64店舗を展開しているファッションブランドのナノ・ユニバース。
店舗とECの一体化した体験の提供を目指し、顧客の趣味嗜好データを統合した「ユニファイドコマース戦略」を推進しています。
こちらでは、ECサイトでの購入履歴からのおすすめ商品の表示はもちろんのこと、ECやSNSでコーディネートを掲載し、チャットやメッセージでアドバイスをするオンライン接客、ECで見かけたら気になる商品を店舗で試着・購入できる試着予約、来店時の接客を依頼する接客予約などの横断的且つ顧客の良質な購買体験につながる施策を多数打ち出しています。
ユニファイドコマースの導入にはまずはデータ基盤の構築
ここまで、ユニファイドコマースについて、他の戦略との違いや成功事例をご紹介してきました。
ユニファイドコマースに必要なのは、複数あるチャネルのデータの統合と、統合されたデータに基づいた顧客一人ひとりへの最適なアプローチです。
ユニファイドコマースを成功させるためには、データ基盤の構築が必要不可欠です。
ECサイトや実店舗のデータ統合がスムーズにできるかどうか、顧客のセグメント化は細かくできるかどうかなど、柔軟な機能を備えているシステムを導入すると良いでしょう。
また、スムーズなデータ統合のために、以下のようなことをしておくことをお薦めします。
- ポイントの統合
- 顧客データの一元化
- 在庫情報の一元管理
- 店舗受け取り
- コールセンターなどの接客履歴の蓄積
全て、アプローチするのに欠かせない情報です。
ユニファイドコマース取り組むべく、全社的に認識を共通化させておくことも大切です。