カスタマーマーケティングとは、既存顧客に対して適切なアプローチを行い、LTVや顧客ロイヤルティの向上を目指すマーケティング施策のことをいいます。
この記事では、カスタマーマーケティングについての解説をはじめ、カスタマーサクセスとの違い・カスタマーマーケティングのメリットや施策について詳しく解説していきます。
カスタマーマーケティングとは
カスタマーマーケティングとは、すでに取引を行っている既存顧客に対して、適切なアプローチを行っていき、「LTV」や「顧客ロイヤリティ」等の向上を目指す施策や活動のことを指します。
一般的なマーケティングでは、商品・サービスを訴求する広告戦略や潜在顧客の掘り起こしを行い、新規顧客の獲得を目指していきます。
一方で、カスタマーマーケティングは既存顧客にアプローチを行い、顧客離れ防止の対策による継続的な収入の確保、アップセル・クロスセルによるLTVの最大化を目指していきます。
オフラインやオンラインに関係なく、カスタマーマーケティングの重要性が注目されています。
カスタマーマーケティングが重要な背景
カスタマーマーケティングが重要とされている背景について解説していきます。
LTVという概念の登場
LTVとは日本語で訳すと「顧客生涯価値」という意味です。
顧客が一生のうちに、自社製品やサービスをどれだけ購入・利用して頂けるのか、合計でどの程度の利益をもたらしてくれるのかを示す値になります。
LTVに欠かせないポイントは「その企業に対する愛着度」=つまり企業の根強いファンであるかということです。
現在では音楽・動画配信サービスが普及し、サブスクリプション市場が急速に拡大しました。
サブスクを代表するサービスは「Netflix」や「Spotify」などです。
サブスクリプションの波は一般向けのサービスだけでなく、BtoB(法人向け)ビジネスにも増加しています。
サブスクリプションは、顧客獲得が勿論重要ですが、「利用顧客」「既存顧客」の維持が重要となります。
サービスのセットで提案を行う「クロスセル」や上位モデルの契約を目指す「アップセル」もLTV向上には欠かせません。
解約防止や継続利用の促進等、既存顧客のマーケティングに力を入れる必要があるため、カスタマーマーケティングが重要視されるようになりました。
1:5の法則
1:5の法則とは、新規顧客の獲得コストは既存顧客を維持するコストの5倍掛かるという法則になります。
新規顧客の獲得には、広告費などのコストとさらに時間と労力も掛かってきます。
一方、企業のファンである既存顧客には少ないコストでクロスセルやアップセルに繋げることができる可能性が高くなります。
コストを抑えながらも、既存顧客に働きかけるカスタマーマーケティングは重要な戦略の一つになってきました。
カスタマーマーケティングとカスタマーサクセス
既存顧客へのアプローチの手法として、「カスタマーサクセス」が有名ですが、カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスは深いつながりがあります。
以下で詳しく解説していきます。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、顧客の成功と自社の収益の両方を目指すマーケティング活動の一つです。
顧客の要望を満たすだけのサポートではなく、能動的に顧客に働きかけることで、自社製品・サービスによる成功に導くことを目的にしています。
要約した場合の意味は以下の通りです。
①顧客に対する価値の提供
②企業の取組や役割・職種
カスタマーマーケティングは既存顧客に実施する全てのマーケティングを指しますが、カスタマーサクセスは顧客の成功を導くための行為のみを意味しています。
カスタマーサクセスの施策
カスタマーサクセスの代表的な手法として「タッチモデル」が有名です。
タッチモデルは、「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つに顧客を分類して最適なアプローチを実施する施策になります。
タッチモデル
タッチモデルには以下の3つの分類があります。
①ハイタッチ
「大口顧客」等、企業にとってメリットの大きい顧客に行うのが「ハイタッチ」になります。
1:1の対面による個別対応が中心となる施策です。
問題解決に向けた提案や目標・進捗状況の確認等、顧客ごとにカスタマイズを行い、コンサルティングのような対応を行っていきます。
②ロータッチ
次の位置にあたるアプローチ手法は「ロータッチ」になります。
具体例はセミナー・Web使用のウェビナー・勉強会・ワークショップなどが挙げられ、個別の対応ではなく、集団な対応を行います。
ロータッチは、ハイタッチよりもLTVが低い顧客層で、少ない人的リソースで効率的にアプローチを行います。
③テックタッチ
顧客数の多い層へは「テックタッチ」という手法で対応を行います。
主にツールなどのテクノロジーを使用してアプローチを行います。
チャットボット・FAQの設置・MAを活用した顧客の行動ベースのメールやSNS配信等、最低限の人的リソースで多くの顧客に対応していきます。
オンボーディング
オンボーディングは、顧客に製品・サービスの機能や活用方法を理解して頂いて、使いこなせるように導いていき、「定着」を促す手法になります。
製品・サービスの開始時の「使用の仕方が分からない」「一部の機能しか使いこなせない」といった不満や疑問を解決する施策を実施し、早期の解約を未然に防ぐことができます。
(施策例)
①セミナーの開催
②FAQページの作成・充実
③チュートリアルの作成
④導入時の支援やミーティング
カスタマーマーケティングのメリット
カスタマーマーケティングのメリットは、「継続率の改善」「口コミの拡散性」「新規獲得の頭打ちを防げる」などが挙げられます。
継続率の改善
カスタマーマーケティングのメリットとして、顧客ロイヤリティの向上が挙げられます。
商品・サービスが良い印象であった場合、顧客ロイヤリティが向上し、そのまま契約を続けて頂ける可能性が高くなります。
また、顧客ロイヤリティが向上すれば、顧客単価も向上していきます。
利用したサービスで期待以上の成果が出る場合、ユーザーは同じクオリティを求めて同社の商材を試したくなるのが普通だと思います。
そうなれば、関連サービスや高額モデルへの契約に繋がる可能性があります。
口コミの拡散性
カスタマーマーケティングは、既存顧客を大切にするマーケティング手法ですが、結果として新規顧客の獲得にも繋がっていきます。
スマホが普及し、SNSの需要が増えている現在では、既存顧客の「口コミ」は重要な集客方法の一つとなっています。
既存顧客と信頼関係を築くことで、商品・サービスの良さやプラスの印象をSNSで発信して頂けるので、今現在取引のない潜在顧客または見込み顧客を誘引することが可能です。
この方法は広告費等のコストが掛かりませんので、SNSに企業のアカウントを作成し、既存顧客と積極的にコミュニケーションを取る企業も増えています。
新規獲得の頭打ちを防げる
既存顧客がSNSで自社の製品・サービスに関連する投稿を行ってくれることで、潜在顧客や見込み顧客の獲得に繋がると説明しましたが、そのような拡散性を利用すれば、「新規顧客の獲得」の頭打ちを防ぐことができます。
広告の宣伝よりも、実際の利用者の口コミの方がユーザーにとって重要な判断材料になるからです。
また拡散性の高いSNSの投稿だからこそ、広告以上の効果を期待することができます。
カスタマーマーケティングの施策
カスタマーマーケティングの施策は、「リテンションマーケティング」「コミュニティ化」「セミナーや勉強会の実施」「VOCの活用」などが挙げられます。
リテンションマーケティング
リテンションマーケティングは、顧客が自社製品・サービスへの興味を継続して頂けるように顧客を維持していくための施策になります。
継続的なアプローチ、顧客行動の分析に基づいた製品・サービス、マーケティングの改善を行います。
施策例は以下の通りです。
①パーソナライズされたリコメンドによる継続利用の案内
②アプリのプッシュ通知による継続利用の案内
③キャンペーン情報等の配信
④顧客行動の分析に基づいた製品・サービス、マーケティングの改善等
コミュニティ化
コミュニティ化の施策とは、オンラインコミュニティのようなユーザー同士が交流する場所を設ける施策です。
ユーザー同士がサービスの情報を共有することで、問題解決に繋がることもありますし、その際に出てきた意見が製品の改善や新しいアイデアに繋がる可能性があります。
オフラインのイベントでも、試作品のモニターに参加して頂いて、ユーザーは商品やサービスの愛着が増し、ファン化することも可能です。
施策例としては以下の通りです。
①オンラインコミュニティの運営
②オフラインイベントの開催
③新サービスの情報の発信等
④試作品のモニター
⑤製品への感想・意見交換
セミナーや勉強会の実施
セミナーや勉強会を開催することで、顧客のスキル習熟度の向上を目指す施策です。
「使用方法が分からない」「機能を使いこなせない」等の問題は早期離脱に繋がります。
そういった問題を未然に防ぐためにも、顧客に適したタイミングで適切なフォローを行っていく必要があります。
施策例は以下の通りです。
①セミナー・勉強会の開催
②チュートリアルの導入
③FAQの作成
④導入支援・ミーティング等
VOCの活用
VOCはVoice of the Customerの略語であり、日本語に訳すると「顧客の声」という意味の言葉になります。
コールセンター等に寄せられた商品やサービスに対するクレーム・意見等、またはアンケートの結果などのことを指します。
直接企業側に届いた意見だけでなく、SNSや個人ブログの書き込みもVOCに含まれています。
施策例は以下の通りです。
①アンケートの実施
②SNSの開設・運用
③新機能の開発等
④料金プランの追加など
カスタマーマーケティングの事例
カスタマーマーケティングの事例として、LINE公式アカウントでチャットボットを導入して施策を行っているアイペット損害保険株式会社の事例があります。
アイペット損害保険株式会社は、ペット専門の保険業を行っている企業になります。
ペットショップやWEBチャンネルからの新規顧客の獲得に力を入れていましたが、それ以外にも既存顧客の継続率を向上させるためにLINE公式アカウントでのコミュニケーションを進める施策を行いました。
その際に「hachidori」というチャットボットを導入されていますが、決め手としてはデフォルト機能が幅広いため、今後の活用イメージが持てたからです。
LINE上では保険料見積もり・おすすめ商品の診断・商品詳細遷移・資料請求などのコンテンツを搭載しています。
チャットボットは見積もり診断に使用しており、回答を進めていくと最終的に顧客に合った情報が返されるようになっています。
hachiroriで重宝している機能は、アイペットのLINE公式アカウントの友達でなくとも、電話番号をもとにご契約者様にLINEを送れる「通知メッセージ」です。
会社として、これまでSMSで行っていたご契約者様への重要連絡を徐々にLINEに移行しています。
SMSだと1通12~13円掛かるところ、LINEだと1通数円で送れるため、コスト面でのメリットも大きいです。
今後はhachidori導入目的である「既存ご契約様の継続率向上」のための施策を行っていく予定です。